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第36話 S級冒険者


 僕たちはスイセンの街に戻り、ギルドに向かった。


 戻る間も何体かの魔物に遭遇したが、全部シエルの魔法で倒した。

 結構魔法の手加減の仕方がわかったようで、討伐証明の部位を残せるように倒せるようになっていた。


 そしてギルドに戻り、依頼の分の証明部位とそれ以外の魔物の証明部位を出した。

 こういう依頼を受けて依頼された以上の魔物を倒すと、達成報酬に上乗せしてお金がもらえる。


 だからこの街に戻る際に遭遇した魔物も倒して、しっかりと証明部位を取ってきたのだ。


 僕たちは依頼分の魔物以外に結構倒してきたので、報酬はほぼ二倍となった。

 僕はどれだけすごいのかわからないけど、シエルはこんなに上がるとは思ってなかったようで、驚いた様子だった。


「おお、嬢ちゃんとキョースケじゃねえか」

「あ、オルヴォさん!」

「キョー」


 報酬をもらって帰ろうとしたら、同じく依頼を終えたのか帰ろうとしていたオルヴォさんに会った。


「俺は今日は軽い依頼をしたんだが、お前らは魔物討伐か。それにグレイウルフはC級だし、キョースケがいるとしても二人じゃ結構大変だったんじゃねえか?」


 むむっ、舐められたものだ。

 あんな狼程度、僕一人、いや僕一匹で何十体も相手できるのに。


 まあ今日はほとんど僕が相手をしてないけど。


「いえ、結構簡単でしたよ。私一人でも大丈夫なくらいでした」

「へー、そりゃすごいな。そうだよな、キョースケの影に隠れてたけど、嬢ちゃんも強かったもんな」

「ありがとうございます!」

「嬢ちゃんはD級だったか。もうすでにB級以上の実力は持っているだろうな」

「ほ、本当ですか!?」


 オルヴォさんの言葉にシエルが過剰に反応する。

 あの黒雲の依頼がA級以上からなので、やはり気にしているのか少し急いているようだ。


 シエルの反応に少し戸惑いつつもオルヴォさんは言葉を続ける。


「お、おお、まあ昨日一緒に戦った感じだとな」

「やった……! ありがとうございます!」


 A級冒険者のオルヴォさんに実力を認められるのはやっぱり嬉しいようだ。


「まあキョースケもいるから大丈夫だろうけど、あんまり生き急ぐなよ。嬢ちゃんはまだ若いんだからな」

「はい、わかりました」

「キョースケも、見守ってやるんだぞ」

「キョー」


 もちろん。

 シエルは僕が絶対守るよ。


 僕と契約してないからなんて言ってるのかわからないと思うけど、僕の返事を聞いてオルヴォさんは満足そうに頷いた。


 僕たちがそう話していると、なんだかギルド内がざわつき始めた。


 なんだろうと思って周りを見渡すと、冒険者の皆が受付カウンターにいる人を見ている。


「っ! まさかあいつは……!」


 オルヴォさんもその人を見て、驚いた様子でそう呟いた。


「オルヴォさん、あの人どなたなんですか?」


 シエルはわからなかったようで、オルヴォさんに小声でそう問いかけた。

 僕も全く知らないから、オルヴォさんの言葉に耳を傾ける。


「あいつは、S級冒険者だ」

「S級!?」


 S級ってことは、冒険者ギルドで一番上のランクってことだよね?

 これだけ注目されているってことは、やっぱりすごい人なんだ。


「そんな人、王都みたいなところにしかいないんじゃ……?」

「ああ、S級は人員が少ないからな。『ノウゼン王国』の王都に三人いるって聞いていたが、その内の一人だな」


 このスイセンの街は、ノウゼン王国の中でも結構大きな街とシエルに前に聞いた。

 その大きな街でも誰一人いなかったS級冒険者が、どうしてこんなところに?


 あ、あのS級冒険者を対応する人が変わって、カリナさんになった。

 やっぱりギルド長が対応するぐらいだから、すごい人なんだろうなぁ。


 話し声は全く聞こえないが、しばらく話すとカリナさんが一礼して一度中へ入っていった。

 そして残ったS級冒険者は、ギルドの中を見渡す。


 周りにいる冒険者達はなぜか目が合わないようしているのか、すぐに逸らしていく。

 そしてその人が、こちらを見た。


 後ろ姿でわかっていたが、やはり女性だった。

 なんかS級冒険者と聞くと、めちゃくちゃマッチョの男だとなんとなく思っていたから、とても意外だ。


 髪はとても長く腰ぐらいまであって、綺麗な金髪だ。

 そして目は碧眼で綺麗だけど、つり上がっていてちょっと気が強そうで怖い感じがある。


 S級冒険者がこんな美人だなんて思わなかった。

 今まで僕が生きてきた中で一番の美人かもしれない。

 まあ、シエルの方が可愛いけど。


 そんな美人なS級冒険者が、僕の方を見た。

 シエルの肩に乗っているんだけど、彼女はシエルじゃなくて僕を見ていると思う。


 そして僕を見て目を見開いている。

 やっぱり僕が魔物だから驚いているのかな?


 そのS級冒険者が、僕とシエルに近づいてきた。


 とても強く速い足取りで近づいてきていて、目も見開いているので圧力がすごくて怖い。


 なぜいきなり近づいてくるのだろうか?

 まさか、僕が初めて冒険者ギルドに来たように戦おうとしているのだろうか?


 あのときは無事に済んだけど、今回は相手がS級冒険者だ。

 力量はわからないけど、この冒険者ギルドの中で一番強いのは確かだと思う。


 ここで戦ったら、どうなるだろうか?

 まず絶対に、このギルドの建物が壊れる。

 全壊はしないと思うが、前も壁を壊してしまってカリナさんに怒られてしまったのだ。


 だから今回は戦うとしても、ギルドが壊れないように外でやりたい。

 だけど僕とS級冒険者のこの女性が戦ったら、他の建物や住民に被害がいってしまうかもしれない。


 ここで戦うのはお互いに不利益にしかならない。


 それでもなお、怖い顔をしながらこちらに近づいてくるS級冒険者の女性。


 肩に乗っているからわかるが、シエルもちょっと震えている。


 そしてシエルの前に立ち、僕を睨んでくる。


「あ、あの、この子は私の魔獣で、契約をしていて……」


 シエルも前と同じように戦い始めるのかと思ったのか、そう説明する。


 その言葉を聞くと、その女性の目線が僕からシエルへと変わった。


「……本当?」 


 透き通ったような綺麗で聞きやすい声が、その人の口から放たれた。


「は、はい、本当です」

「つまり、君のペット?」

「ぺ、ペットというよりは、相棒みたいな感じで」


 シエルから相棒と言われてちょっと嬉しいが、今はそれどころじゃないか。


 女性がシエルの言葉を聞いて顔を近づけて、とても威圧的なことをしている。

 もしかして、嘘か本当か見抜こうとしているのかな?


 シエルは震えながらも真っ直ぐと女性の目を見続ける。


「じゃあ、触っていい?」

「……えっ?」

「キョ?」


 なんか気が抜けるようなことを言われて、僕とシエルの口から声が漏れた。


「っ! かわいい……!」


 目の前にいるS級冒険者の女性は、顔を少し赤くして小さな声でそう呟いたのが聞こえた。



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