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第33話 会議


「ふぁぁ……」


 カリナ・クルームは大きな欠伸をした。


「ギルド長、会議中なんですから慎んでください」


 今現在、ギルドの会議室で話し合いが行われている。

 十人ほどのギルドの役人やスイセンの街の重役達が集まって、話し合いを行う。

 定期的にするこの会議は、全く議題が上がらないこともあれば、多くの議題が上がることもある。


 最近の会議は、まずあの話題で始まる。


「ごめんなさいね。昨日は寝不足で……」


 昨日の夜のことを思い出すと身震いをしてしまうカリナは、あまり思い出さないようにするために喋り出す。


「話を続けるわ。あの森に生息している魔物が活発化していることについて、昨日も報告があったわ」


 そう、あの話題ということは、この街の近くにある森の魔物についてだった。


「確か、A級冒険者のオルヴォからの報告か」

「ええ、あの人が言うからには間違いない。しかも昨日は、ガルーダが出たと報告されたわ」


 カリナの言葉に会議室にいる人達は驚愕する。


「ガルーダだと!? A級の魔物だぞ!」

「あの森にはそんな危険な魔物いなかったはずだ!」

「すぐに討伐命令を出さないと!」


 A級の魔物。

 同じA級というランクの冒険者が五人ほどでギリギリ倒せる魔物だ。

 余裕を持って倒すなら、B級の冒険者もあと五人ほど必要なぐらい危険な魔物である。


「安心して、もう倒したという報告も上がっているわ」

「はっ……?」


 カリナの言葉に、騒いでいた役人達の動きが止まる。


「もう、倒しただと? A級の魔物を、A級の冒険者一人でか?」

「いいえ、違うわ。シエル・クルームの連れている魔獣によって倒されたのよ」

「なっ!? あの魔物がか!? しかし、あれはギルド長、あなたの見解では……!」

「ええ、私はあの魔物をガルーダの子供だと推測したわ」


 あの魔物、キョースケをカリナはガルーダの子供だと判断した。

 その理由はいくつかある。


 まず、炎を扱うということ。

 ガルーダは炎を扱うということをカリナは知っていた。


 次に、姿形が似通っていること。

 ガルーダより小さいので、子供だと判断したのはそれが理由だ。


 そして、シエルがキョースケと契約したことによって大幅に能力が上がったこと。

 契約すると弱い方は強い方の能力を貰うので、大幅に強くなる。

 ガルーダの子供といってもA級の魔物だ。

 シエルと比べた時に、ガルーダの子供だったらそっちの方が強いということは不思議ではない。


 そんな理由があったから、カリナはキョースケのことをガルーダの子供だと判断したのだ。


 しかし、今回の出来事によってそれは覆された。


「さすがに子供のガルーダが、普通のガルーダを倒すことはできないわ」


 キョースケだけでガルーダを倒した。

 それによって、キョースケの正体がとうとうわからなくなった。


「A級の魔物を一体で倒した? そんなの……!」

「S級の魔物、ということか……!?」

「そんなバカな! A級の魔物でさえ契約や魔獣登録を行った記録が今までないんだぞ! それがS級の魔物と契約できるなんてありえない!?」


 今まで、いろんな街の冒険者ギルドで確認した魔獣登録の最高ランクが、B級の魔物までだ。

 契約をした魔物なんて、B級の魔物すらいない。


 それがいきなりS級という規格外のランクの魔物と魔獣登録、ましてや契約までしたというのは、信じられるわけがなかった。


「ギルド長、あなたの妹さんは何か特別な力を持っていたりするのですか?」

「いいえ、そんな力は身内の贔屓目で見てもなかったわ。魔法の才能が人より少しあるくらい」


 シエル・クルームに何か力があるかと疑うが、そうではないとカリナは否定する。


「おそらく、あのキョースケと名がついた魔物が特別な何かを持っているのよ」

「ガルーダを一体で倒した力もそうですが、こちらの言葉を全て理解しているなんて信じられません」

「ええ、一緒に暮らしているけど、完璧に言葉を理解して行動しているわ」


 一度そこで話が途切れる。

 全員が、キョースケという魔物について考えこむ。


「やはり、あの魔物も黒雲の影響を受けているのでしょうか?」

「そうじゃないと、説明できないだろ」

「しかし、黒雲の影響を受けた魔物は例外なく凶暴化もしている。あの魔物は全く凶暴化していないぞ」

「以前ギルド内で暴れたと聞いたが?」

「あれは正当防衛で、先に冒険者達に攻撃されたから仕返しただけと聞いているぞ」


 そんな話の中、カリナはパンパンと手を叩いて自分の方に注目させる。


「落ち着いて。キョースケのことも考えるべきかもしれないけど、今は先にやるべきことがある。あの森についてよ」


 役人達がハッとして冷静になったことを確認し、カリナは話し続ける。


「あの森の調査をしないといけないわね。至急、S級冒険者の招集をかけて」

「かしこまりました」


 カリナはそう言うと、少しため息をつく。

 そしてまだ、会議は続いた。


 最近の会議は、全く議題が尽きないのだ。



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