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第31話 お夕飯


 リアナちゃんは泣き疲れたのか、僕を抱きしめたまま寝てしまった。


 結構元気に見えたけど、やっぱり飼っていたペットが死んで悲しかったんだろうなぁ。


 僕は起こさないようにゆっくりとその抱擁から抜け出す。


「ありがとな、キョースケ」


 オルヴォさんは小さな声で僕にそう言って、リアナちゃんを横抱きにして持ち上げ、ソファに寝かせる。


「もう少ししたら夕飯だから、それまで寝かせよう」


 テーブルの席に座りながらオルヴォさんはそう言った。

 僕もシエルの肩に乗っかる。


「お疲れ様、キョースケ」

「ありがとね、キョースケちゃん。リアナも楽しがっていたわ」

「キョー」


 ティアナさんにお礼を言われたが、僕の方こそ撫でられるのとか気持ちよかったし楽しかった。


 リアナちゃんが夕飯を手伝っていたが、まだその準備は終わっていないらしい。

 というか、本当は終わっていたんだけど、僕達が来て料理を増やさないといけなくなってしまったのだ。


「あなた、そういうのはしっかり連絡してくれないと困るわ」

「うっ、その……悪いな」

「いつもあなたはその場で思いついて行動するんだから。それに付き合うこっちの身にもなりなさい」

「……ごめんなさい」


 ティアナさんはため息をつきながら呆れるように小言を言った。

 さっきまでお父さん、って感じで頼もしかったオルヴォさんの背中が丸まっていく。


「私達の分は大丈夫ですよ。大変だと思うので……」

「いいのよ、リアナも一緒に食べたいと思うし。それに私もあなた達に料理を振る舞いたいから。ね、だから待ってて」

「ティアナさん……ありがとうございます!」

「キョー!」

「うふふ、すぐに作っちゃうからね」

「ティアナの料理は美味いぞ!」

「あなたは出来上がるまでそこで正座ね」

「……はい」


 料理ができるまで、シエルは席についてティアナさんとおしゃべり。

 僕はシエルの肩で時々振られる話に応え、リアナちゃんはソファでお眠り。

 オルヴォさんは固い床で正座をしていた。



 そして二十分程で料理は完成した。

 ティアナさんはシエルと喋りながら料理を作っていたけど、とても手際が良かった。


「あなた、リアナを起こして」

「おう……立っていい?」

「ええ、いいわよ」


 ほっと安堵して、オルヴォさんは立ち上がった。

 足が痺れているのか、ちょっと痛がりながら、ソファに近づきリアナちゃんの身体を揺らす。


「リアナー、ご飯だぞー」

「んっ……みゅにゃ?」


 なんか可愛らしい声を出して、目を薄く開けた。

 上体を起こして手の甲で目を擦る。


「ご飯……?」

「そうだぞ。今日はシエルお姉ちゃんとキョーちゃんも一緒に食べてくれるぞ」


 お、おお……。

 オルヴォさんに「キョーちゃん」と呼ばれると、鳥肌が立つな。

 僕は鳥なんだから、比喩とかじゃなくて本当に鳥肌が立ってしまう。


「シエル、おねえちゃんと、キョーちゃん……っ! キョーちゃん!」


 リアナちゃんは僕の名前を呼ぶと一気に覚醒して、目を見開いた。


「一緒に食べるの!?」

「ああ、食べるぞ。だから準備しような」

「はーい!」


 ソファから降りて、トコトコと歩き料理場のティアナさんの元まで行く。


「はい、しっかり持ってね」

「うん!」


 お皿を渡されて両手で持って、テーブルに運んでくる。

 ちょっと見てて心配になるけど、いつも手伝っているみたいだ。


 シエルも手伝おうと立ち上がろうとしたけど、ティアナさんに止められた。


「お客さんなんだから、気をつかわないでいいのよ。座ってて」

「そうだぞ、俺が招待したんだからしっかりもてなされろよ」

「あとは全部あなたが運んでね」

「……はい」


 ほとんどのお皿をオルヴォさんが運び、夕食の準備が終わった。


 そして食べ始める。


 僕の分も用意されている。

 最初は鳥用のご飯をわざわざ用意してくれようとしたのだが、人と同じ料理を食べれると伝えた。


 だけど箸とかはさすがに持てないので、シエルにあーんしてもらって食べている状態だ。


 うん、美味い。

 オルヴォさんが自慢したくなるのも頷ける。


「美味しいです!」

「そう? 良かったわ」

「私も料理してるんですけど、こんな美味しくできません」

「このくらい教えてあげるわ」

「本当ですか? ぜひお願いします!」


 シエルも気に入っているみたいだ。


 すると、リアナちゃんがシエルの服を少し引っ張る。


「ん? どうしたのリアナちゃん?」

「私もキョーちゃんにご飯あげたい! いい?」

「もちろんいいよ。ね、キョースケ」

「キョー」


 もちろん、と返事をしてシエルの肩から飛ぶ。

 さすがに肩には乗れないから、テーブルとリアナちゃんの間、太もものあたりに降り立つ。

 ここだったらあーんもしてもらいやすいだろう。


 リアナちゃんは器用に箸を使って、ご飯を僕の口元に持ってくる。


「キョーちゃん、あーん」


 僕はその声に従って、口を開けて食べる。


「どう? 今のお料理、私が作ったの!」


 そうなんだ。

 うん、さすがにティアナさんの料理と比べると一歩劣るかもしれないけど、それでも十分に美味い。

 八歳の女の子が作ったとは思えない。


「キョー!」

「美味しいって、リアナちゃん」

「ほんとう!? やった!」


 リアナちゃんはその後も、とても嬉しそうな笑みを浮かべて、僕に料理を食べさせ続けてくれた。



 そして夕飯を食べ終わり、そろそろ帰ることになった。


「お邪魔しました。ご飯本当に美味しかったです!」

「こちらこそありがとね。またいつでも来てね、歓迎するわ」

「シエルおねえちゃんとキョーちゃん、もう行っちゃうの?」


 シエルとティアナさんが話す横で、リアナちゃんが悲しそうにそう言った。


 それに気づいて、シエルはしゃがんで目線を合わせる。


「また来るからね。もちろん、キョースケも一緒にね」

「っ! うん! 約束だよ!」

「うん、約束」

「キョー」


 僕も約束をするように返事をした。

 リアナちゃんはとてもいい笑顔で僕達に手を降って、「じゃあねー!」と言ってくれた。


 僕達も笑顔で手を降って家を出た。


 あ、オルヴォさんがなぜ玄関先にいなかったかというと、ティアナさんに皿洗いを命令されていたからだ。



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