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第30話 キョーちゃん


 僕とシエルはオルヴォさんに連れられて家まで案内された。


 オルヴォさんの家はなんというか、普通だった。

 シエルとカリナさんの家は三階建てだったけど、目の前にある家は平屋。

 だけど周りの家より少し大きいかも。


「ゆっくりしていってくれ」


 そう言いながらオルヴォさんは家のドアを開けた。


「ただいまー! 今帰ったぞー!」


 大きな声で家全体に響く声でそう言うと、奥の方でバタバタと音が聞こえてきた。


 そして玄関に現れたのは、女の子。


「おかえりお父さんー!」

「ただいま、リアナ」


 肩くらいの長さの金髪を後ろで縛ってポニーテールにしていて、とても元気な女の子って感じだ。

 笑顔でオルヴォさんに抱きついたその子は、腹の辺りに頭をグリグリする。


 オルヴォさんも幸せそうな笑顔で娘さんの頭を撫でる。

 そして女の子が顔を上げると、顔を見合わせて二人して笑い出す。


「あのね! 今日、お夕飯私も手伝ったんだよ!」

「おっ、そうなのか! 偉いぞ!」

「えへへ……!」


 僕から見るととても乱暴そうに撫でられているけど、女の子は嬉しそうにしている。


 すると、女の子がようやく僕達の存在に気づいた。

 僕とシエルの方を見て、目を丸くする。


「っ!」


 そしてすぐに、オルヴォさんの影に隠れて僕達の方から見えなくなってしまった。


「ん? どうしたリアナ」

「お父さん、あの人、誰……?」


 小さな声、だけどこっちにも届いてしまう声でその子はオルヴォさんに聞いた。


「ああ、そうだな、紹介してなかったな」


 こちらを向いて娘さんに説明しようとした時。


「あなた、リアナ。まだ玄関にいるの?」


 また奥の方から人が現れた。


 長髪でとても綺麗な金色の髪。それを娘さんのように後ろで縛っているけど、受ける印象は全然違く、とても優しそうな女性だ。

 顔も女の子と似ていて、娘さんはお母さん似なのだろう。


「ただいま、ティアナ」

「おかえりなさい、あなた。そちらの方は?」


 ティアナと呼ばれた女性も僕達を見てそう言った。

 オルヴォさんが紹介しようとこっちを見たが、先にシエルが声をあげた。


「初めてまして! 私、シエルって言います!」

「あら、どうも。ティアナよ、よろしくね」


 優しい笑顔を浮かべるティアナさん。

 結構若く見えるけど、何歳なんだろう?

 オルヴォさんはどう見ても三十歳はいってると思うけど、ティアナさんはいっているように見えない。


「あら、鳥を飼っているの? 綺麗な鳥さんね」

「鳥さん!?」


 ディアナさんの言葉にすぐに反応したのは、娘さんのリアナちゃんだった。


 オルヴォさんの身体から顔を出して、僕の方を見る。

 さっきこっちを見たけど、シエルしか目に入らなかったのかな?


「あー、まあ玄関じゃなんだ。リビングまで行こう」

「そうね、そうしましょうか」


 色々と説明する前に、中に入ることになった。


 中に通される間、リアナちゃんの方から熱烈な視線を浴び続けていた。

 やっぱり鳥が好きなのかな?

 僕も鳥だけど、鳥好きだよ!


 リビングでテーブルに座り、シエルの正面にティアナさん、その横にオルヴォさん。

 僕はもちろんシエルの肩に乗っていて、僕達の横にはリアナちゃんが座っている

 そしてオルヴォさんが奥さんに経緯を説明する。


「あら、そうなの。わざわざありがとうね、シエルさん」

「いえ、大丈夫です! オルヴォさんには助けてもらいましたので、このくらい! ね、キョースケ」

「キョー」

「あら、キョースケちゃん、可愛い鳴き声ね」


 僕の鳴き声を聞いて笑顔でそう言ったティアナさん。

 うん、まあ、面白いとか笑われるよりはマシかな。


「わぁぁ……!」


 そして横に座っているリアナちゃんは鳴き声を聞いて、なんか嬉しそうに声をあげる。


「リアナ、ちゃんとご挨拶しなさいね」

「う、うん……!」


 少し声を震わせて、こっちにまで緊張が伝わってくるような感じだ。

 椅子から立ち上がるが、座っているシエルとそれで同じくらいの高さになっている。


「リ、リアナです! 八歳です! 将来の夢はお料理屋さんです! よろしくお願いします!」


 そう言って頭を下げる。

 下げた勢いでポニーテールがリアナちゃんの顔にペチンと当たっていた。


「よろしくね、私はシエルだよ」

「シエル、おねえちゃん?」

「っ! か、かわいい……!」


 シエルが頰に手を当てて悶えている。

 うん、確かに可愛かった。

 上目遣いで「おねえちゃん?」はちょっと反則的な攻撃だった。

 シエルは抱きしめたいのか、腕や手をリアナちゃんに回そうか回さまいか、みたいな動きをしている。


「キョー」

「あ、ご、ごめんねキョースケ」


 早く僕の紹介をしてくれ、と言うように鳴き声を上げた。


「リアナちゃん、この鳥さんはキョースケっていう名前だよ」

「キョースケ……キョーちゃん!」


 お、おお、すぐにあだ名を作ってくれた。

 男だから「キョー君」とかの方がいい気がするけど、まあいいかな。


「キョー」


 よろしくね、と言うように鳴き声を上げた。


「わぁ、わぁ……! 可愛いよぉ!」


 目をキラキラ輝かせながら、満面の笑みで僕を見つめるリアナちゃん。


「撫でる?」

「いいの!?」


 シエルの言葉にすぐに反応する。


「いい? キョースケ」

「キョー」

「もちろんだって」

「わぁ、ありがとうキョーちゃん!」


 僕はシエルの肩から降りて、地面に立つ。

 さすがに僕の方が小さいので、リアナちゃんは膝立ちになる。


 膝立ちになったリアナちゃんの目の前に立つと、おそるおそる僕の頭に手を伸ばしてくる。

 無抵抗でそれを受け入れ、リアナちゃんの手が頭に乗り、優しく撫でられる。


 前に鳥を飼っていたからか、普通に気持ちいい。


「柔らかい……ふわふわ」


 今度は翼などを撫でてくる。さっきより優しい手つきで、羽の毛並みに沿って撫でられるから気持ちいい。

 そして優しく抱きかかえられる。


「えへへ、気持ちいい、ユリちゃんより……ううぅ、ユリちゃん……!」


 ユリちゃん……前に飼っていて死んじゃった鳥の名前なのかな。


 リアナちゃんは僕をさっきより強く抱きしめながら、ユリちゃんと呟き続け泣いてしまった。


 僕は何も言わず、動かず。

 ただ抱きしめられていた。



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― 新着の感想 ―
[一言] 面白くて読み始めました。 >肩くらいの長さの金髪を後ろで縛ってポニーテール これは長さ的に難しいんじゃないかなぁと思ったり。頭を下げたら顔にあたるほどの大きさならなおさら、結構長いといけな…
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