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第29話 浮気?


 A級の魔物のガルーダが出たので、僕達はスイセンに戻った。


 オルヴォさんが言うには、あの森で少しでもおかしい事が起こったらギルドに報告するという義務みたいなものがあるようだ。


 スイセンとあの森は結構近いので、あの森で異変があったら街に被害が来る可能性がある。

 だから頻繁に森の様子を見ていかないといけないらしい。


「最近、あの森の魔物が活発に動き過ぎている。そろそろ冒険者を大勢連れて魔物を大討伐しないとちょっとヤバイだろうな」


 帰る途中にオルヴォさんがそんなことを言っていた。


 黒雲が出てきてから五年、何ヶ月に一回程度で大討伐というものをやっているようだ。

 その頻度がだんだんと多くなっているから、やっぱり黒雲の影響が強く出ているということだろう。


「しかし、キョースケは一体何の魔物なんだろうな。姿形はレッドバードに似ているが、さっき倒したガルーダはレッドバードの上位種だ。さすがに黒雲の影響が出ていると言っても、上位種を倒せるほど強くはなれねえだろ」

「そうですよね、それにガルーダも黒雲の影響を受けてるわけですし」

「ああ、あいつも本来はあんな大きな炎は吐かなかった。せいぜい人の頭程度だったのだがな。それ以上の炎を喰らって、さらに大きくして攻撃するなんて意味がわからん」


 これは……ついに褒められた?

 いや、どうだろう。『意味がわからん』ってことは、また勘違いだったり気味悪がったりされてるのかな?


「キョー?」

「今のは褒め言葉だと思うよ、キョースケ」

「キョ!?」

「ああ、褒め言葉だぞ」


 本当に!?

 いや、もうさっき気味悪がられたのと今回褒められたのと、違いが全くわからないけど。

 ようやく褒められた!


「キョー!」

「ふふふ、良かったね」

「こう見るとただ変な鳴き声をするレッドバードなんだがな……本当によくわからんな」


 嬉しくてシエルの肩の上で翼を広げて喜んだ。


 そんな会話をしながらスイセンに戻り、冒険者ギルドに向かった。

 朝に出かけたけど、今は日が沈み始めているから夕方くらい。

 結構長い時間魔物を狩っていたようだ。



 ギルドのカウンターで魔物の討伐証明部位を提出する。

 僕にはまだいまいちわからないけど、シエルの反応から見て結構な稼ぎになったらしい。


「はいよ、これがそっちの取り分だ」


 オルヴォさんが金が入った布袋をシエルに渡す。


「えっ? いやこれ、今回の報酬の半分以上ありますよ?」

「そっちは一人と一匹だ、俺一人より分け前が上なのは当たり前だろ?」

「そんな、悪いですよ! 元々はオルヴォさんの依頼なんですから!」

「いいんだよ、こいつの強さを見れただけで俺は満足だ」


 オルヴォさんは笑いながらそう言った。

 やっぱりとても良い人だなぁ。すごいかっこいい。


「あ、ありがとうございます、オルヴォさん!」

「キョー」


 シエルは深く頭を下げる。

 頭を下げたシエルの背中に乗り、一緒になってお礼を言う。

 バッとシエルが体勢を戻すと同時に、飛んで肩に乗る。


「ああ、良いってことよ。その代わり、ちょっと頼みたい事があるんだが」

「なんでしょうか?」


 オルヴォさんは周りをコソコソと見渡しながら、シエルと僕に囁くように耳打ちをしてくる。


「ちょっと俺の家に来てくれないか?」

「……えっ?」


 その言葉を聞いて、シエルはすぐにオルヴォさんから距離を取った。


「ちょっと、ごめんなさい。尊敬したのが間違いだとわかったので、私の半径二メートルに入らないでもらえますか?」

「待て待て待て! 嬢ちゃんは勘違いしている!」


 シエルは隠すように腕を身体に回している。

 さっきまで憧れたような目でオルヴォさんを見ていたけど、今はなんか、ゴミを見る目をしている。


 僕にはよくわからないけど、オルヴォさんはなんで家に来て欲しいって言ったんだろう?


「先に言っとくが、俺は既婚者だ!」

「既婚者なのに、ですか? 私の半径五メートルに入らないでもらえますか?」

「だから違う!」


 その後、シエルは五メートルしっかり離れながら話を聞いた。


 オルヴォさんは娘さんがいて、その子が前にペットを飼っていたのだ。

 それが鳥だったんだけど、つい最近で寿命が来て死んでしまった。

 だからその子のために、僕を連れて行って元気を出して欲しいということらしい。


「そういうことだったんですか。それなら良いですよ。ね、キョースケ」

「キョー」


 もちろん、良いに決まっている。

 娘さんのために僕達に頼み込んでくるオルヴォさんはさらに好印象になったしね。


「本当か!? はぁ、良かったぜ。ありがとうな」

「はい、早速行きましょう」

「ああ、夕飯は家で食べて行ってくれ。妻に用意させるから」

「ありがとうございます。というか、あんなまぎらわしいこと言わないでくださいよ」

「うっ、いや、それはすまんかった……」


 さっきは結構距離を取っていたけど、今はオルヴォさんの隣を普通に歩くシエル。


 まあ、奥さんがいるのに他の女の人を呼ぶのは浮気だもんね。

 変な勘違いをするのは当然かもしれない。



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