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第24話 いつもの光景


 夕飯が食べ終わり、僕はシエルと一緒にお風呂に入った。


 最初は風呂に入ることをためらっていたが、シエルに強制連行されて一緒に入った。

 心は男と思うけど、やっぱり人間の女の子の裸を見ても特に何も感じなかった。


 思ったことは、「あー、カリナさんより小さいんだなぁ」くらい。

 いや、カリナさんが一般的な女性より大きいだけで、シエルは普通だと思うけど。

 姉妹でもこれだけ身体的差が生まれるのか、とは思った。


 世界は残酷だ……違うか、こんなことで悟るほどのことではないか。


 そういえば僕はこっちに来てからしっかりと身体を洗ったことがなかったかも。

 多分そこまで臭くはなかった……と思う。

 シエルだって身体を洗う前から僕を肩のところに置いてたし、臭かったら言ってたよね。

 いや、もしかしたら我慢させちゃってたのかもしれない……。


 今度からしっかり身体を洗おう、うん。


 その後、風呂から上がって一緒に寝ることになった。

 シエルに抱きつかれてそのままベッドに連れていかれて、抱き枕という仕事をしながら寝た。


 最初は眠れないかもと思っていたが、そこまで強く抱きつかれなかったし、逆に暖かくて結構気持ちよく、すぐに寝れた。



 そして翌朝。

 僕はシエルが起きる前に目が覚めた。

 しかし、まだ抱きつかれているので全く動けない。

 いや、動けることは動けるのだが、可愛い寝顔を見ると下手に動いて起こすのも忍びなかった。


 そのまま一時間ほど、抱き枕の仕事をこなしているとシエルは起きた。


「んぅ、ふぁあ……おはよう、キョースケ」


 僕を離してから立ち上がり、伸びをした。

 パジャマの裾が少し上がって、おへそが見える。


「キョー」

「ふふふ、相変わらず可愛い声だね」


 ……あまり嬉しくないけど、まあいいや。


 部屋を出てリビングに行く。

 すると、そこには服やら食器、食べカスなど散らかっていた。


 昨日の夕ご飯とかは、シエルが寝る前に片付けたはずだけど。


「はぁ、お姉ちゃんは全く……」


 ああ、カリナさんか。

 昨日片付けたのに今これだけ汚くなってるってことは、起きてからやったってことか。


「むっ、お姉ちゃん飲んでから仕事に行ったな」


 テーブルに置いてある空の瓶を片付けながら、シエルはそう呟いた。


 ていうか凄いな、仕事に行く前にお酒飲む人とかいるんだ。

 前世でそういう人に会ったことはないけど、両親の仕事仲間にはそういう人は稀にいたらしい。


 冒険者ギルドの一番上の人がお酒の匂いを漂わせながら仕事をしてもいいのか。


「私達もご飯食べたら行こっか」

「キョー」


 その後、シエルが作ってくれた朝ご飯を食べ、僕達は家を出た。

 もちろん、僕は定位置となったシエルの肩に乗って。


 ギルドに着き、中に入るとすでに人がいっぱいいた。

 何だか壁の前に人だかりが出来ていて、壁に貼ってある紙を眺めている。


「あれは依頼書が壁に貼ってあるんだよ。あれを見て冒険者は自分の力量に合った依頼を選ぶの」


 僕が疑問に思っていたことを、シエルが説明してくれた。

 そうなんだ、じゃあ僕達もあそこに行かないといけないのかな。


「それはまた後で。今は……お姉ちゃんに説教しないとね」


 お、おお……怖い。

 昨日、カリナさんがギルドの壁を壊されて怒ってたくらいに怖い。

 さすが姉妹だ。


 ギルドに入って正面のカウンターに歩いて行く。


「すいません。『お姉ちゃん』を呼んでくれますか?」

「はい、少々お待ちください」


 シエルが笑顔でカウンターにいた受付の女性にそう言うと、要件を知っていたかのように後ろのドアへと消えていく。


「キョー?」

「ん? うん、そうだよ。私がギルド長の妹ってのはギルドの人は知ってるよ」


 あ、やっぱりそうなんだ。


「シエルちゃん……? 『ギルド長』の私に何か用かな?」


 カウンターの奥から、恐る恐るといった風にカリナさんが出てくる。

 なぜか『ギルド長』という言葉を強調している。


「『ギルド長』には用はないけど……『お姉ちゃん』には用があるかな」

「ご、ごめんなさい! 今日は遅く起きちゃったから片付けし忘れたの!」

「じゃああのお酒は?」

「あ、あれは……」

「遅く起きて急いでいたはずなのに、お酒を飲む時間はあったんだね」


 僕はなんだか怖くなって、シエルの肩から離れた。


 どこか着地するところを探していると、昨日顔を覚えた人物が見えたのでそこまで飛ぶ。

 そしてその人の肩に着地する。


「うおっ!? な、なんだお前か……ビックリさせんなよ」


 昨日戦ったオルヴォさんはとても驚いたが、僕だとわかると安堵したようにため息をつく。


「どうした、なんで俺のところに来たんだ。お前の契約者は?」

「キョー」

「ん? あっちか」


 僕が翼を使ってシエルとカリナさんがいる方を差す。


「あー、いつもの光景だな。ギルド長が妹に怒られているっていうのはな」


 オルヴォさんも知っていたのか。

 ギルド長であるカリナさんがピンチに陥っているのに、他のギルドで働いている人は見もしないから、いつもやっていることなんだろうとは思っていたけど。


「まあお前があそこにいたら気まずいとは思うけど、すぐに慣れると思うぞ。俺のところに来なくても大丈夫になるはずだ」


 そんなしょっちゅうやってるんだね。


 その後、十分ほどシエルがカリナさんを怒っている光景は続いた。



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