第23話 食事
ちょっとタイトル変えました、よろしくお願いします。
その後、僕とシエルの魔獣登録を済ました。
着ける首輪だが、色が選べた。
目の前に何種類の色か並べられて、僕はすぐさま水色の首輪を選んだ。
僕の身体の色は赤だから水色だったら目立つ。一番の理由は空の色に似ているからだけど。
あの騒ぎでギルド内はまだ少し混乱していたけど、カリナさんが色々指示をしてすぐに平常になったようだ。
ギルド長というのは本当はもっとベテランの人がなるものらしい。
だけどカリナさんは二十代前半、しかも女性というのは前代未聞とのこと。
綺麗で仕事ができるなんて、本当に凄い。
「シエルちゃーん、ご飯まだー?」
「もうちょっと待っててお姉ちゃん、あと服を散らかさないで」
……こんなのを見なければ、もっと尊敬できたのになぁ。
今僕は、シエルとカリナさんの家に来ている。
魔獣登録、それにシエルと契約をした僕はそのまま家でお世話になることになった。
僕もここまで来てどこに住めばいいかとか迷っていたから、これはとてもありがたい。
それで、カリナさんはまだギルドで仕事があったので、先にシエルと共に家に行った。
周りの家と比べると、結構豪華な家だった。
他の家は最高でも二階、ほとんどの家が一階だけの平屋だったのだが、シエルとカリナさんの家は三階まであった。
家の中に入り、シエルは夕食を作って、僕はその間に一人で家の中を飛んで回る。
だいたいの家の構造を覚えてリビングに戻ってきた時に、カリナさんが仕事から帰ってきた。
そこからはなんか、シエルが言うにはいつも通りの流れで。
帰ってきてドアを閉めた瞬間に仕事着を全部脱ぎ捨てて、下着だけの状態になる。
リビングに入るとソファに飛び込んで、買ってきたであろうお酒を寝転びながら飲み始めた。
そしてお酒を飲みながら、シエルの料理を待っている状態。
……昼間のギルドでの仕事っぷりが嘘のようだ。
しっかり仕事とプライベートを分けられている、という意味では良いのかもしれないけど、あんなビシビシ働いていた人がこんな格好をするなんて知りたくなかった。
なんか幻想をぶち壊された気分。
「んー? あー、そういえばキョースケ君いたんだね。なに? なんか言いたいことあるの?」
「キョー!」
ありません、と言うように首を振る。
やっぱり仕事は大変だと思うし、色々ストレスが溜まるのだろう。
家の中でぐらい、はっちゃけても良いと思う。
「お姉ちゃん、一応キョースケは男の子だよ?」
「魔物に裸見られてもなんとも思わないわよ」
シエルがため息をつきながら注意するが、気にせずにお酒を飲み続けるカリナさん。
そういえば、初めて女の人の下着姿を見たけど、特に何も思わないな。
前世の頃、一度病院の中で女性が着替えているところを目撃してしまうという事件があった。
あの時は顔を真っ赤にして謝った覚えがある。
女性の着替えシーンを一瞬見ただけでドキドキしたものだけど、今は裸に近い格好をしているのに何も思わない。
これは魔物になったからかな?
人間の女性には興奮しなくなった?
じゃあ僕は何を見て、というか感じて興奮とかするんだろう?
あー、だけど人間にはないけど普通の動物には発情期ってのがあるのか。
その時期だったら興奮するのかもしれない。
……なんで僕はこんなことを真面目に考えてるんだろう。
「お姉ちゃーん、ご飯できたよー」
「待ってましたー!」
ソファに寝転がっていたカリナさんは、飛び上がるようにして立ち上がりテーブルに着いた。
「おっ、今日はお肉か! 美味しそうー!」
「喉に詰まらせないようにゆっくり食べてね」
「わかってるわよ。いただきまーす」
カリナさんは料理を食べ始め、「美味しい〜」と言いながら酒もあおる。
「くぁ〜! やっぱり仕事終わりには酒とシエルちゃんの料理ね!」
「ありがと。キョースケにも用意したけど、食べられる?」
テーブルは三人席で、シエルとカリナさんは対面に座っている。
シエルの横に空席があり、そこに僕用の料理を置いてくれた。
「とりあえず焼いたお肉を用意したけど」
僕はその空席に飛んで行き着地。
目の前にとても美味しそうなお肉が置かれていた。
とても大きいお肉が一切れ。多分、ステーキという料理だった気がする。
前世の頃はずっと病院食を食べていた。
よく病院食はマズイと言われていたらしいが、僕はそうは思わなかった。
というか、僕はずっと病院食を食べてきたから他の料理を比べることはあまりできなかった。
時々両親が持ってきてくれたオヤツを食べたことはあるけど、確かに病院食は味は薄いかもしれない。
そしてこっちに来て、僕は一度も食事をしていない。
だから僕は初めて、ここで食事をすることになる。
多分、僕は食事をしなくても生きていける身体なのだろう。
だけど、料理を目の前にして「食べたい」と思えるということは、食べられないということではない。
あくまで、食べる必要がないというだけ。
皿に盛り付けられたお肉を、嘴で突いてみる。
そして口を開け、一口。
――っ! これは……!
美味しすぎる。
濃い、とても味が濃い。
病院食でこんな味付けが濃いものはなかった。
しかし、嫌な濃さではない。
最高に、とても美味しく食べられる丁度良い濃さ。
さっきの一口ではすぐに口の中から消えてしまった。
もっと、食べたい。
僕はまだほとんど残っているステーキにかじりつく。
そして大きなお肉を、全て口の中に入れる。
大きなお肉から溢れる肉汁。とても美味しい。
そしてそのまま飲み込む。
「すごい、あんなに大きなお肉をほとんど丸呑み……」
隣でシエルが目を丸くして驚いている。
僕もまさか、丸呑みできるとは思わなかった。
「もっと食べる?」
「キョー!」
あるなら食べたい! と言った意味で鳴くと、しっかりとシエルは聞き取ってくれて了承してくれる。
それから僕は、あと三切れの大きなお肉を丸呑みした。
「一応魔物だから、やっぱり食欲は旺盛かもしれないわね」
「そうなんだ。食費がかさむかも……」
あ、そうか、当たり前だけどこれだけど大きいお肉は値段高いよね。
僕は食欲はあまり湧かないけど、満腹にもならない。
いくらでも食べられそうだけど、これ以上食べないようにしよう。
「大丈夫よ、私はギルド長よ? こんぐらいの食費なんて余裕よ」
「本当? ありがとう、お姉ちゃん!」
おー、さすがギルド長! やっぱり他より大きな家に住むくらいだから、お金はあるんだね!
「キョー!」
「ふふふ、キョースケも喜んでる」
「どういたしまして、その代わりシエルちゃんのことをよろしくね」
「キョー!」
もちろん! と言った意味で返事をする。
僕の言葉がわからないカリナさんだけど、今の返事はなんとなくわかったようで優しく微笑む。
カリナさんはとても妹思いで、優しい人なんだなぁ。
「っていうことで、もうちょっとお酒飲んでいいでしょシエルちゃん?」
「それとこれとは話が別。明日もお仕事でしょ?」
「そんなー、あと一杯だけー!」
……凄い人で、良い人なんだけどなぁ。
残念な人っていうのも、変わりないみたい。
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