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第2話 始まり


 少しずつ、意識が浮き上がってくるのを感じる。


 そろそろ目覚めるというのが自分でもわかる。

 だが、目覚めたくないような心地よい何かに包まれている。


 なんだ、これ……ふわふわしていて、とても安らぐ。


 病院のベッドなんて比べ物にならない。病院のはなんかいろいろな理由があって固く作られているらしい。


 そうだ、僕はいつも病院のベッドで寝ていたはずなのに、なんでこんなにも柔らかいところで寝ているんだろう?

 病院の庭のようなところで寝た時もこんな心地よさを感じた気がするけど、今寝てるところはもっと気持ちいいな。


 庭で昼寝しちゃったのかな?


 確か、僕は……っ!


 眠る前のことを思い出して、一気に意識が覚醒する。


 そうだった、僕は体調が急変して治療室に運ばれていたはず。

 あの時は絶対に死んだと思ったけど、今起きられるということは生きていたのかな?


 なぜか開けにくい目をなんとか開けて、周りを確認しようと思った。

 まず目に入ったのは、多分天井。上向きに寝ているから、おそらく天井だと思う。

 なぜおそらくかと言うと、今まで見たこともないような色や形だから。


 茶色で、ゴツゴツしていて、所々灰色っぽいところもある。

 どこだろう、ここ。病院の中でも外でもない気がする。


 上体を起こそうと思ったけど、なかなか上手く起き上がれない。


 あれ、どうしてだろう、なんか上体だけを起き上がらせるのが難しいな。


 そう思って立ち上がろうとすると、簡単にできた。

 立ち上がる方がいつもなら苦労するのに、なんでいきなりこんな簡単に?


 わからないけど、とにかく周りを見渡した。


 右を見ても左を見ても、壁。

 天井と同じように茶色いゴツゴツ。

 よーく見てわかったけど、あれは岩肌と呼ぶべきものなのだろう。

 ここは多分、洞窟と呼ぶべきところかもしれない。


 完全に囲まれていて、出口が見当たらない。

 後ろを見ると、よくわからない像があった。


 一メートルくらいの台座の上に、これは……鳥、かな?

 何を素材にしているかわからないけど、銀色に輝いている鳥の像があった。

 鳥は大きく翼を広げた姿で祀られている。


 一瞬その像に見惚れてしまったが、すぐにハッとなる。


 待って、この像がカッコいいのはわかるけど見惚れている場合じゃない。後でしっかりじっくり見よう。

 だけど、今のこの状況は何?


 僕は病院にいて、治療室に運ばれていた。そこまでは覚えている。

 それで多分死んだろうなー、と思って目を瞑ったけど、目を覚ませた。

 だけど目を覚まして周りを見渡したら洞窟って、どういうこと?



 あと、ちょっと気になることが……。


 僕が周りを見渡した時、いや今でも見えるものがある。

 なんか鼻の下、具体的には口の辺りから生えているものがある。


 黄色くて、尖っていて、いわゆる鳥の嘴っぽいもの。

 どこを向いても口の辺りにずっとある。


 それに、僕は立ち上がっているのになぜか視線が低い、というかいつもより地面が近い。


 そして視線を下げると、さっきまで寝ていたところ、白くフワフワとしたものが地面に広がっている。ここで寝ていたからとても気持ちよかったのだろう。


 その上に立っている僕の脚が見える。

 それは人間の脚ではなく、鳥の脚。

 爪が前に三本、後ろに一本。鳥の脚として一番よく見られる形だ。


 僕は自分の右脚を上げて、左脚を上げる。脚の指を動かす。

 そうすると、鳥の脚が動く。


 ……まさか。


 僕は自分の体を見下ろすようにして眺める。

 身体の側面には、真っ赤な羽があった。


 もしかして、もしかしなくても……!



 僕は、鳥になってる!?



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