第158話 獣人?
盗賊を簡単に壊滅させた女性、イメルダさん。
頭頂部から耳が生えていて、狐の耳の形。
イメルダさんは、獣人のようだ。
顔立ちはとても綺麗で、美人な雰囲気。
狐の耳や髪の毛の色は、いわゆる狐色と呼ばれる色だ。
ところどころ赤っぽい毛も混じっている。
身長は僕と同じぐらいで、一七〇ほど。
スタイルはとてもよく、くびれがとても綺麗で胸も程よく大きい。
服も動きやすいのか、身体のラインが出るようなとしたものだ。
下はホットパンツみたいな、とても短いズボン。
そして腰のあたりから尻尾も生えている。
多分外にいた時は、服の中にしまっていたはずだ。
さっきまではローブのような服を着ていて、それを脱いで初めてその尻尾が見えた。
とてもふわふわしていて、触ったら気持ちよさそうだ。
ふふっ、ふわふわなもの好きな『あの人』だったら、とても喜びそうだなぁ……。
……あれ? 『あの人』って誰だ?
僕は今、誰のことを思い浮かべた?
……わからない、誰だろう。
だけどやっぱり、記憶が失う前に会ったことがある人だと思う。
一番会いたい人……ではないんだけど、その人にも会いたい気持ちはある。
さっきはイメルダさんに名前を聞かれた時は、自分の名前が答えられなくて一瞬焦った。
正直に記憶が失っていることをイメルダさんに話したら、信じてくれた。
優しい人だ……盗賊達には、容赦の欠片もなかったけど。
まああれは当然のことか。
……うーん、やっぱり日本にいた頃と、価値観も変わってるなぁ。
どうしようもない悪人だったら殺されてもしょうがない、なんて前世の僕じゃ考えなかっただろうし。
「嫌いな食べ物ある?」
「えっ、あ、ないです! ……多分」
「ふふっ、多分なのね。わかったわ」
イメルダさんは上品に笑って、そのまま料理をし続ける。
僕は後ろのテーブルのところで、大人しく座っていた。
前世では病院食は残さず食べてたけど、病院食に出てこないものは食べたことない。
もしかしたらその中に嫌いなものがあるかもしれない。
だけど服をもらえるだけでもすごく嬉しかったのに、まさか食事までご馳走してもらえるとは……。
裸でイメルダさんの目の前に出た時は「終わった」と思ったが。
なんでここまでやってくれるのだろうか?
最初はあんな戦闘を見た後だから、イメルダさんがこんな優しいなんて思わなかったけど……。
「出来たわ。これ、運んで」
「あっ、はい! わかりました!」
イメルダさんがこちらを振り返りながら、お皿を渡してくる。
それを受け取って、テーブルまで運ぶ。
それを数度繰り返し、僕とイメルダさんの分のご飯、時間的には夕食か。
夕食が目の前に並べられる。
肉のステーキに、サラダ、パンなど、普通のご飯だ。
「特に嫌いなものはないわね?」
「はい、ないです。というか、本当にいいんですか? 服まで貸してもらって、ご飯をご馳走になるなんて……」
「いいわよ。それにそこまで作っておいて、今さら残すって言われた方が最悪ね」
「わ、わかりました。じゃあ、いただきます!」
こっちの世界に来て、記憶を失ってから初めての食事。
すごい美味しそうだ。
僕は迷わずにステーキから手をつける。
一口大に切って、大きく口を開けて頬張る。
んんっ……!
「美味しい……!」
何のお肉かわからないけど、前世ではこんな大きいステーキなんて食べたことない!
すごい柔らかくて、噛めば噛むほど肉汁が口の中に広がる。
めちゃくちゃ美味しい!
僕は無我夢中になって、ご飯を食べていく。
「……ふふっ」
目の前で一緒に食べてるイメルダさんが、綺麗な笑みを浮かべているのには、食べ終わってから気づくことになった。
「ご馳走様でした!」
「はい、お粗末様」
数十分後、美味しい美味しい夕食を食べ終わった。
とても大きなステーキだったので食べ切れるか最初は不安だったけど、全然余裕だった。
お腹にはまだまだ余裕があるし、むしろもっと食べたいくらいだ。
前世では小食だったのだが、今世の僕はいっぱい食べられるみたい。
食事がこんなに楽しいものだったなんて、初めて知った。
……いや、記憶を失っているだけで、食事が楽しいことは知っていた気がする。
今世の僕は大事な人と、楽しく食事をしていたみたいだ。
「イメルダさん、とても美味しかったです!」
「それだけ夢中に食べてくれれば、私も作った甲斐があったわ」
テーブルに肘をついて、素敵な笑顔でそう言うイメルダさん。
なんか気恥ずかしい……。
イメルダさんの僕を見る目が、幼い子供を見るような感じがする。
「キョースケって年齢はいくつ?」
「えっ?」
「だから、年齢。あっ、ごめん、記憶喪失だったわね」
「いえ、大丈夫です。えっと……多分、十五くらいだと思います」
前世の年齢がそのくらいだったから、今世もそのくらいということにしておこう。
もしかしたら違うかもしれないけど。
「っ! ……そう、なんだ」
僕が年齢を言うと、イメルダさんは少し驚いた顔をして……一瞬だけ、悲しい顔をした。
どういうことだろう?
何か僕の年齢に、思うところがあったのだろうか?
「もう夜も遅くなったけど、キョースケは今日の寝床はあるの?」
「えっ、あっ……ないです」
「ふふっ、やっぱりね。いいわ、泊まっていきなさい」
「いいんですか?」
「ええ。布団を敷くから」
本当にイメルダさんにはお世話になりっぱなしだ……。
なんでこんなにお世話をしてくれるだろうか?
服とご飯をもらって、それに泊めてもらえるなんて。
いつかイメルダさんに、絶対に恩返ししないといけない。
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