第152話 生き返り？
――意識が、浮上してくる。
ずっとずっと、長い夢を見ていたかのように……。
久しぶりに目を覚ますように、僕は重たい目をゆっくりと開いていく。
その時に、何か違和感を抱く。
何かいつもと違う感覚がする。
それが何かはわからないけど、慣れていたものが突如違うものになったかのような。
僕は目を開けて数秒、何も焦点が合わないかのようにぼーっとしていた。
ここは、どこだろう……。
確か僕は……あれ、なんだ。
思い出せない。
『――〇〇！ 〇〇！！ 死なないで！ お願いだから！ 頑張って！！』
『〇〇！ 一緒に海に行くんだろ！ 山に行くんだろ！！』
あっ……母さん、父さん！
そうだ、僕は……病気で、死んじゃったんだ。
あれ、じゃあなんで僕は、今普通に起きているんだろう。
もしかしてここは、天国なのかな？
地獄じゃないよね？ 僕は特に何も悪いことしてないよ。
……病院生活に嫌気をさして、抜け出したことが数度ぐらい。
そのくらいで地獄に行く訳ないよね？
だけどなんだか、寝ているところが温かい。
とても肌触りが良くて、すごく気持ちがいい。
病院の布団では絶対にない。
というか、布団なのか？
顔を横に向けて寝転がっているところを確認すると、羽毛のような真っ白なものが敷き詰まっていた。
そこに僕は寝ているようだった。
……なんだか、見覚えがある。
わからないけど、初めて見た気がしない。
僕は生まれてからずっと病院生活だったのに、この羽毛を見たことがある。
なんでだろう、わかんないや。
僕は久しぶりに身体を起こすかのように、すごいゆっくりと上体を起こした。
そして周りを見ると、なんだかここは洞窟のようだった。
周りを茶色の壁、ゴツゴツとした岩肌が囲んでいる。
なんだかそれも見たことがある気がして……なんだろう。
一番気になるのは、僕の後ろに立っている鳥の像だった。
とても立派で、こんなもの病院でずっと暮らしていた僕は見たこともないはず。
だけど……。
「なんか、見覚えがあるなぁ……ん？」
なんだろう、今の声もすごい違和感を感じた。
もう少しこの場所を見ようと思い、立ち上がって歩く。
洞窟の中は正面、後ろ、横、どこを見ても出口が見当たらない。
だが……。
「やっぱり、あった」
上を見た時に、洞窟の天井に唯一穴みたいなものが空いてるのが見える。
あそこからここを出れるようだ。
……いや、待って。
無理でしょ。
あそこまでどうやって行くっていうの？
穴の下に行って上を覗くけど、全く外が見えない。
それに高さも結構あるから、僕じゃ絶対にこんな岩肌を登っていけない。
鳥みたいに飛べるんだったらともかく……。
……なんか今考えたことも、すごい違和感を感じた。
さっきから違和感を感じることが多いなぁ。
というよりも、本当にここはどこなんだろう？
わからないけど、なんで僕はこんなにも落ち着いてるんだろう。
なんだかここがすごい安心する場所みたいで、慌てる必要がない気がする。
それにあの天井の穴も、訳わからないけどあそこから脱出できると思うし。
根拠も理由もないけど。
そして今は脱出できるかとかじゃなくて、自分が何者かというのに困惑している。
僕は確かに死んだはず。
だけどなんで今、こうして生きてるだろう？
あと、少し気になるのは……。
「僕の髪って、こんなに赤かったっけ？」
時々見える髪の毛が、すごい真っ赤なんだ。
僕は日本人でもともと黒髪だ。
髪を染めたことなんて一度もない。
だけどなんでこんなに、髪が真っ赤なのだろうか。
いつの間にか僕はこんな洞窟に連れてこられて、髪を染められたのか？
うーん、よくわからないなぁ……。
それに、頭の中に時々流れてくる光景や、声……。
『――……ースケっ！』
誰かが、僕を呼んでいる声。
誰かわからないけど、すごい聞き覚えがある声。
女性の声だと思うんだけど、誰なんだろうか。
