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第15話 大陸へ


「キョー、キョー」


 僕の鳴き声が青い空……ではなく、黒い空に響き渡る。


 あの島を出て数時間、結構な速さで飛んでいるけどまだ他の島の姿が見えてこない。


 そしてこれだけ飛んでも、黒い雲が晴れることはない。

 やっぱりこの雲には何か理由があるんだろう。


 あの中に入ろうと思えば入れるんだけど、行きたくない。空を飛びたいけど、アレの中には入りたくない。

 泳ぎたくても、見てわかる泥水に入ろうとは誰も思わないだろう。いや、僕はプールとか海に行ったことないけど。


 あと、前から時々鳥が飛んでくる。

 僕とは姿形が全然違うので、種類が違うとは思う。


 僕とは違う鳥だけどなんだか嬉しくなって、後ろとか横とかに行って一緒に飛んでみた。

 この世界に来て僕以外の生物は、あの黒いドラゴン以外見たことがなかったし、他の鳥と一緒になって飛ぶというのも憧れていた。


 だけど、毎回僕が近づくと鳥達は逃げようとしてしまう。

 まあ僕の方が速いから、追いかけられるんだけど。


 さすがにずっと追いかけるのは可哀想だから、ちょっと一緒に飛んだらやめるけど。


 やっぱり一緒の鳥の種類とかじゃないと仲間意識とかが無いのかな?


 人間に置き換えると、道歩いていたら知らない人がいきなりすぐ隣に来て、逃げても隣にずっとついてくるって感じなのか。

 ……超怖いじゃん。ごめんね、鳥さん達。もうやらないから許して。


 それでも一緒になって飛びたいという気持ちは無くならない。

 いつか僕と同じ種類の鳥とも会えるかな? 会えるといいなぁ。



 ん? あれは……!?



 水平線に、うっすらと影が出てくる。

 今まではただただ何もない景色が続いていたら、もはや前に進んでいるかもわからなかった。

 だけどようやく見えてきた。


 近づいていくと、その影ははっきりと見えてくる。

 目の前にはどこまでも続いている大陸があった。


 僕がいた島とは全く違い、高く飛んでいて鳥の目を以てしても一番遠くを見ても地面など、地平線が見える。


 ここは島じゃなくて、おそらく大陸だろう。

 これだけ広ければ、僕の他に生物は絶対にいると思う。


 動物、魔物、あとは人間もいればいいな。


 前世で読んだ本とかで推測するなら、こういう異世界だと多分人間の街とかがあると思う。

 そこに行って情報を手に入れたいな。


 なんでこんな黒い雲に覆われているか。

 僕が一番知りたいことはこれだ。


 この大陸、終わりが見えない地平線だけどその空にも全く晴れていない黒い雲に覆われている。

 もしかしたら海の上だけ黒い雲が覆われていると思ったけど、違ったみたい。


 僕がいた島の空は晴れていたから、こういう大陸とかも覆われてないと思ってたけど。


 人間の街とかがあって陽の光を浴びられないって、結構辛いことだと思う。

 あれ……もしかしたら、黒い雲が覆われているところには人間とかが住んでないとか?


 そ、それだったらめんどくさいな。

 これだけ大きな大陸に人間一人も住んでなかったら、そのあとはどこへ行けばいいのかわからない。


 とりあえず、この大陸を見て回ろう。


 この大陸に着いてからもそのまま真っ直ぐと飛び続ける。

 大陸に入るとすぐに森があって、結構先まで森が続いていた。

 方向感覚はなぜかわかるので、ずっと同じ方向に飛ぶことができる。


 なんか前世の頃、人間は道しるべとかが無いと同じ場所を円を描くようにぐるぐる回ってしまうって聞いたことがある。

 まあ、僕は鳥だからそうはなくてよかった。



 それからしばらく飛び続けると、森を抜けて平原になる。


 あ、というか森の中に生物がいるかとか確認していなかった。

 だけど人間はいなそうだったかな。動物はいたかもしれないけど。


 もう一回戻ってしっかり見て回ろうかな? だけど空から見ても木々が生い茂っていてわからないんだよね。


 それに、あれ、多分街だよね?

 それに下にいる点々とした奴ら、あれって魔物だよね?


 草原の先、少し行った所に大きな街が見つかった。

 そして草原には上から眺めてわかるが、色んな所に生き物がいる。

 森だと木が生い茂っていたから見えなかったけど、草原だとしっかり見える。


 とりあえずあの街に行ってから森を調べても遅くない。


 あんなデカイ街だったら絶対に人間はいるだろう。

 そこで色んなことを聞けたらいいんだけど。


 そう思いながら前に飛んでいると、下の方に魔物とは明らかに違う生き物が見えた。


 ん? あれは、人かな? 服着てるよね、あれ。

 そのまま飛んで近づいていくと、その点々の詳細が見えてくる。


 あれは、女の子だ。

 服装とか髪型を見た限り、おそらく女の子。

 その子が何かを抱えて走っている。


 女の子を追いかけるように、三匹ほどの魔物が後ろを走っている。

 四足歩行の魔物で、結構足が速くてそろそろ女の子に追いつきそうだ。


 ……って!

 あれって完全に女の子が襲われてるよね!?


 助けに行かないと!


 今までは風を受けて飛んでいたが、すぐに生命力も使って今僕が出せる最高速度で降下していく。


 魔物が僕の炎の射程範囲に入った瞬間、女の子が転んでしまった。


 すぐに燃え盛る炎を翼から出し、ドラゴンに攻撃していた時と同じぐらいの威力で射出する。


 三匹の魔物が女の子に飛びかかったとした瞬間、炎の槍が直撃した。

 そして、魔物三匹が一気に消し飛んだ。


 ドラゴンと戦っていた時と同じだったから、炎の大きさが少し大きかったんだろう。

 炎の槍は三匹の魔物の身体のほとんどを消し飛ばし、後には燃えている肉片しか残っていない。


 ああ、やっぱりあのドラゴンは強かったんだね。

 今の炎でもあのドラゴンなら血が少し出るくらいの傷しか負わなかったよ。


 女の子は肉片となった魔物を見て呆然としている。

 そして目の前に僕が降り立つ。


 ビクッと肩を震わせて、僕を見てくる。

 怯えた目をしているので、安心させようと声をかける。


「キョー、キョー」


 ……あ、僕、喋れなかった。


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