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第137話 毒の水放出?



 昨日僕と戦って、負けそうになってすぐに逃げたユリウス。


 そいつが目の前でニヤニヤとしながら、こちらを見ていた。


「……アナタ、誰よ? 冒険者、じゃなさそうね」


 ルフィナさんが先程シエルに浮かべた優しそうな笑みを消して、警戒しながら問いかける。


 いつ抜いたのか、すでに剣を片手に持っていた。


「ルフィナさん、気をつけてください……! そいつが、毒の魔法を使ってました……!」


 シエルがルフィナさんの後ろで、気力を振り絞って立ち上がりながらそう言った。

 言い方は悪いが、本当に震える子鹿のようだ。


「シエルちゃん、無理しちゃダメっす! もうシエルちゃん、気絶寸前まで魔力使ってるんすから!」


 アリシアがシエルの身体を支えるようにしながら言う。


 まさかそれほどシエルの魔力が尽きているとは。

 ヘレナさんの訓練で魔力量が増えているはずなのに。


 やはり七十人に解毒魔法をするのは、それほど大変なことだったのだろう。


「キョー」


 シエル、休んでいて。

 無理して倒れたら、元も子もないよ。


「キョースケ、でも……!」

「無理はダメよ、シエルちゃん。若いのにそんな無理してたら、老後が大変よ。後はアタシに任せなさい」


 ルフィナさんは後ろにいるシエルを見ずに、安心させるように声だけ優しくして言う。

 目だけは鋭く、ユリウスを真っ直ぐに捉えている。


「あはっ、そんな会話しても無駄だよ。だって……全員、死んでもらうんだからさ」


 ユリウスはそう言った瞬間、右手を僕達の方に向けてくる。

 若干斜め上を向いていて、まるで空に何かを発射しようとしているみたいだ。


「防げるかな?」


 ユリウスは嫌みたらしくニヤッと笑って、手の平からとんでもない水の量を噴き出した。

 象が水浴びをするみたいに、僕達の方へ大量の水が飛んでくる。


 おそらくあれは、全て毒の水だ。

 少しでも浴びたら、倒れて動けなくなってしまうほどの毒。


 それが後ろですでに倒れている冒険者の全員に届くほど、水の量と勢いがある。


 あの水が、冒険者の一人にでもかかったらダメだ。

 シエルはすでに気絶する寸前なのだから、これ以上解毒魔法を使わせてはいけない。


「キョー!」


 僕はすぐにルフィナさんの肩から飛び、上空で全力で炎を広げる。


 翼を大きくし、火力を上げ、一気に毒の水に向けて炎を放つ。

 大量の水は僕の炎とぶつかり、どんどん蒸発していく。


 昨日もユリウスはこのような攻撃をしたが、それ以上の水の量だ。


 くっ! さすがにこれほどの水の量を蒸発させ続けるのはキツイ……!


 ものすごい高温を保たないといけないので、魔力を結構使う。

 それにさっきまでアンデッドを燃やすために炎を使っていたので、なおさら厳しい。


 だけどシエルのために、冒険者達にこれ以上毒を浴びせるわけには……!


「キョースケ! もう炎出さないで!」


 シエルが地上でそう叫んでいるのが聞こえた。


 なんで?

 この毒の水を蒸発させないと、毒の被害が……。


「その水に、毒は含まれてない!」


 えっ!?

 毒含まれてないの!?


「あーあ、バレちゃった……まあいいか」


 シエルの言葉を受けてか、すぐにユリウスは水を放出するのをやめた。


 僕も炎を出すのをやめ、飛んでいるのも辛くなってきたので、アリシアの肩に降りる。

 今はシエルの肩にいくのは、辛そうなのでやめておいた。


 しかし、まさかあの水の中に毒が含まれてないとは……!


 ユリウスが昨日、あんなに毒を含んだ水の攻撃をしてきたから、水を出してきたらそれに毒が含んでいると思ってしまった。

 その先入観を、利用されてしまった。


 お陰で想像以上の炎、魔力を使って……結構しんどい。


「あはっ、上手くいったみたいだね。僕もさすがに、あれだけの水の中に毒を含ませるのは難しいからね」


 ユリウスはニヤニヤしながらそう言うのを見て、すごいイライラした。


 くそ……まんまと思惑通りに動いてしまった。


 もう僕も、これ以上炎を出すのは結構キツくなってきたぞ。


 だけどあいつ、あんな作戦使うような奴だったのか?

 もっと単調で、ただただ突っ込んでくるみたいな戦い方をする奴だと思っていたけど……。


 それに、アンデッドは多分あいつが出現させたわけじゃない。


 だけどあいつの毒の水が、アンデッドの体内にあったってことは、もう一人仲間がいるってことじゃないのか?


 わからないけど、その可能性が高いはずだ。


「……あれ、さっきの変な男は?」


 ユリウスが僕達のほうを見て、不思議そうに言った。


 変な男?

 あっ、ルフィナさんのことか?


 そういえば、ルフィナさんの姿が見えない。

 さっきまでアリシアとシエルの目の前にいたはずなのに。



「ふふっ、アタシはここよ」



 その声は、ユリウスの背後から聞こえた。


 すぐさま振り返ろうとしたユリウスだったが――。


「油断大敵ね。バァーイ」


 剣の動きが僕の目でも見えないような速さで振るわれて……ユリウスの身体は、バラバラになった。





他作品ですが、

「願いを叶えようと悪魔を召喚したけど、可愛かったので結婚を願いました 〜悪魔の新妻〜」

が今日から連載開始です!


コミックアーススターで連載しているので、ぜひご覧ください!

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