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第136話 アンデッド殲滅



 冒険者達が後ろに下がったことによって、ようやく僕の本気を出せるようになった。

 さっきまでは本当に少ししか火力を出せなかったからね。


 冒険者達には悪いけど、いない方が僕の力は出せる。

 いや、僕がまだ未熟だから、繊細な操作が出来ないんだ。


 もっと頑張って練習しとかないと。


「ふふっ、いいわね! とっても素敵、美しいわ!」


 ……ルフィナさんは戦う時、すごい喋るようだ。


 さっきもアンデッドに囲まれて焦ってた時、「ちょっとちょっと!」とすごい大声で言っていた。


 喋りながら戦えるって、すごい器用だな。


 僕は炎を吐くときに叫ぶと、結構出やすくなるから叫ぶときあるけど。

 だけど「キョー!」って叫んじゃうから、なんかダサいんだよね……。


 そんなことを思いながら、ルフィナさんが行動不能にしたアンデッドを焼き尽くしていく。


「炎の中で舞う、アタシ! でっかい鏡はないのかしら!? 絶対に美しいのに!」


 ……想像以上にうるさい。

 こんな草原に鏡なんてあるわけないでしょ。


 美しいか美しくないかで言えば、美しいと思う。

 ルフィナさんは男性ながら顔立ちは整っているし、舞うように戦っているのはカッコいい。


 ただ、うるさい。

 声もうるさいけど、なんか動きもうるさいし、顔もうるさい。


 うるさくなければ、美しいと思うんだけど……。


「今度アタシ、炎が出る剣でも買おうかしら! 氷も捨てがたいわね!」


 ……うるさいから、美しくない。



 そんなことをしている間にも、アンデッドの数はだいぶ少なくなってきた。

 千体以上いたのだが、あと百体ぐらいしか残っていない。


 最初の方に冒険者達は後ろに下がったので、ほとんどを僕とルフィナさんで倒した。


 冒険者の中でも魔法を使える人はいたが、倒れた冒険者達の手当てをずっとしている。

 だからアンデッドを燃やすのは、ずっと僕の役目。


 さすがに無限に炎を出せるわけじゃないから、疲れてきた……。

 僕も炎を出すときは魔力を使っているので、ずっと出していたら疲れる。


 だけどまだ大丈夫……なはずだ。

 訓練の時の「疲れたけど、まだいけるだろう」くらいの、魔力の減り方だ。


 それにあともうちょっとでアンデッドも殲滅出来る。


 ここが踏ん張りどころだ。

 頑張れ、僕!


「お鳥さん! 炎弱くなってきたわよ! もっとちょうだい! もっとアタシを昂ぶらせて!」


 ……すごいやる気が削がれた気がする。


 いや、うん、頑張ります。



 そして、僕達がアンデッドの大群と戦い始めて、二十分が経過しただろうか。

 僕が最後に炎を放ち、全てのアンデッドの殲滅が完了した。


「ふふっ、熱くなっちゃったわ」


 ルフィナさんは袖を捲って、額に流れる汗を拭っていた。

 緑の草が生えていた場所は、僕がアンデッドを燃やし尽くしたので全く緑が見えなくなった。


 その場所からルフィナさんは振り返り、僕の方に近づいてくる。


「お鳥さん、大手柄よ。アナタ、とっても強いわね」


 ルフィナさんはとてもいい笑顔で、口元に指を二本当て、ウインクと共に「チュッ」と鳴らした。

 ……いわゆる、投げキッスだろう。


 顔が良いから無駄に様になっているのが、なんかムカつく。


 僕はルフィナさんの肩に降りて、一緒に倒れている冒険者を手当てしているシエルやアリシアの元に向かう。


「みんな、終わったわよぉ。毒にやられたのはどれくらいいるのかしら?」

「あっ、ルフィナさん、お疲れっす。毒にやられたのは多分七十人くらいっす」

「あら、大変ね……大丈夫かしら?」

「シエルちゃんのお陰で、全員解毒してるっす」


 その言葉にルフィナさんは目を見開いて、側に座っていたシエルを見る。


「本当!? すごいじゃない! とってもお手柄ね!」

「は、はい、ありがとうございます……」


 とても疲れている様子のシエル。


 七十人も毒にかかっていたのだ。

 それら全員に解毒魔法をかけるのは、かなり大変だっただろう。


「ふふっ、今回の影の立役者はアナタね。頑張ったわ」


 ルフィナさんはしゃがんで、シエルの頭を撫でる。


 男性なのだが、お姉さんのような雰囲気がある。

 包容感があって、優しいお姉さんだ。


「あ、ありがとうございます……」


 シエルは頬を赤くして、照れながらお礼を言った。


 ルフィナさんはシエルを微笑ましそうに見てから、立ち上がって冒険者達を見渡す。


「さすがに残りの人数で、倒れている冒険者を運ぶのは無理ね。街から人を呼ばないと」


 確かに動ける人は三十人ぐらいしかいないので、その倍以上の人を運ぶのはキツイだろう。


「アリシアちゃん、街に応援を呼びに行ってくれる?」



「――あはっ、ダメだね。応援なんて呼ばせないよ」



 その声は、聞き覚えがあった。

 昨日の夜に、なぜだか見た瞬間から嫌いな、男の声だ。


 ルフィナさんと共にすぐさま声のした方向を見ると、やはりあの男……ユリウスがいた。



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