第132話 緊急依頼?
諸事情により、今話から2日に1話ペースで更新していきます。
よろしくお願いします。
「いやー、不甲斐ないっす」
アリシアが朝一番に、屋敷に帰ってきてそう言った。
どうやらもう体調はすっかり治っていて、すぐに退院して帰ってきたらしい。
「シエルちゃん、ごめんなさいっす……」
「だ、大丈夫だよアリシア!」
「A級冒険者なのに、あたしはすぐにやられて……すっごい足手纏いになったっす」
アリシアの目の前にシエルが作った朝食が並んでいるが、それに一切手を付けずに落ち込んでいる。
いつも口いっぱいに物を詰めて食べているアリシア。
それだけ落ち込んでいるのだろう。
「仕方ないよ、足元に毒が広がってるなんて普通わからないから」
「うぅ……! だけどシエルちゃんはやられずに、ヘレナちゃんと戦えたんすよね?」
「やられなかったけど、戦えたわけじゃないから……」
「だけどやられなかっただけマシっすよ……あたしなんてやられて、その後ずっと気絶して足引っ張って……」
……なんか二人とも、すごい朝からネガティブな思考になっている。
僕だけ朝食を食べ終わって、喋れないから手持ち無沙汰だ。
「……もっと強くなんないとっすね」
「うん、そうだね。今日も私、ヘレナさんいなかったけど朝練したんだ」
「さすがっすね、シエルちゃん。明日からあたしも少しやるっすかね……」
「そういえば、ヘレナさんはまだ起きてなかった?」
アリシアと一緒の病室にヘレナさんも寝ていたはずだ。
「まだ起きてなかったっすね。ぐっすり眠ってたっす」
「そっか……やっぱりギリギリまで魔力を使ってたから、回復には時間がかかるのかも」
確かにヘレナさんは、顔が青ざめるくらいまで魔力を使っていた。
おそらく魔力を全て使い切ると、死んでしまう。
ヘレナさんはそれをギリギリまで使ってしまったようだ。
無事に回復することを祈るしかない。
朝ご飯を食べ終え、僕達はギルドに向かう。
昨日はあんなことがあったけど、いつも通りギルドで依頼を受けることに。
「あっ、というかキョースケ、帰ってきてたんすね!」
「キョ!?」
それ気づくの今!?
ちょっと遅すぎじゃない!?
朝食べる時もずっといたけど!
「無事に黒雲病の完治薬は貰ってきたんすか?」
「キョー!」
「それなら良かったっすね。じゃあエリオ君はもう治ったんすか?」
「薬を飲んだけど、完治するのは二日後みたい」
「そうなんすね」
そんなことを話しながら僕達は冒険者ギルドへと向かった。
ギルドに着くと、いつもよりも冒険者の数が多く、異様な雰囲気に包まれていることがわかった。
職員の人が慌ただしく動いており、冒険者もB級やA級などの高位の冒険者が多く集まっている。
どう見ても、何かがあったようにしか見えない。
「……なんかあったんすかね」
「多分、そうだろうね……どうしたんだろう」
いつもなら依頼が貼ってある掲示板を見に行くのだが、この状況は気になる。
忙しくしている職員に話を聞こうとした、その時……。
「皆様、お集まりいただきありがとうございます」
一人の男性が、冒険者全員が見える位置に立って話し始めた。
前に見たことがあるその男性は、王都の冒険者ギルドの長だったはずだ。
「未曽有の事態です。王都の正門から東に一キロ、その辺りに大量のアンデッドが出現しました。その数は一千を超えているようです」
ギルド長の言葉に、冒険者達がざわつき始める。
「原因はわかっておりません。王都の周りにはアンデッドが湧きやすい場所は多少ありますが、ここまでの数は今までなかったはずです」
……自然発生ではないかもしれない、ということ。
つまり、人為的にアンデッドを出現させた可能性が高いのかもしれない。
「……キョースケ、スイセンの街でもアンデッドが湧いたよね」
「キョー」
そうだね、アイリさんと初めて一緒に依頼した時だね。
あの時もあそこの森はアンデッドが湧くような場所じゃなかったのに、いっぱい強いアンデッドがいた。
「……もしかしたら、あのユリウスって男が」
「キョー」
それはないと思うよ。
ユリウスがアンデッドを出現させる能力があったら、昨日の戦いの中でやってたと思う。
「あっ、そっか」
だからユリウスとは違う誰かが、スイセンの街でやったように王都でもアンデッドを出現させたということかも。
「……そうだね、多分そうだ」
僕達だけがそれを知っているから、後でギルド長にでも言っておこう。
ここでみんなに言っても、混乱を招くだけかもしれないから。
「うん、わかった」
僕とシエルはそう話して、ギルド長の話の続きを聞く。
「現在、国の軍隊も動いておりますが、冒険者の方が自由に動くことが出来ます。なので皆様には、この街に向かって来ているアンデッドの撃退を、緊急依頼としてお願いします」
ここにいる冒険者は、総勢百人以上。
しかもB級やA級冒険者が多い。
だが多分、みんな思っていることは……。
「なあ、S級冒険者はいないのか?」
ノウゼン王国にいるS級冒険者は、三人と聞いている。
アイリさん、マリーさん、それにもう一人。
「S級冒険者は、全員他の依頼で……」
ギルド長がそう言っていた時――。
「ごめんなさい、遅れたわ」
一人の人物が、冒険者ギルドに入ってきた。
まだブックマーク、評価してない方がいたら、ぜひよろしくお願いします。
とても励みになって、作者の書くスピードが猛上昇します。