表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/160

第124話 同意見



 僕が黒雲病の完治薬を受け取り、フォセカ王国から飛び立ってから二時間ほど経った。


 もうそろそろ日も沈んでくる頃だろうか。

黒雲のせいで、あまりわからないが。


 足に完治薬が縛ってあるので、落ちないように行きよりも遅い速度で飛行している。


 だけど、そろそろノウゼン王国の王都に着くと思う。



 着いたら、まずどうしようか……。


 シエルに会いに行くか、それともすぐに完治薬をエリオ君に届けに行くか。


 本当ならシエルに会いに行って、謝ってからエリオ君に会いに行くのが一番良いんだろうけど……。


 シエル、怒ってそうで怖い……。


 前にシエルのお姉さんの、カリナさんに怒っているところを何度も見たから。

 怒ったら怖いというのがもうすでにわかっている。


 多分怒ってるよね……何も言わずに、フォセカ王国に行っちゃったの。


 うーん……うん、やっぱりエリオ君にまず完治薬を渡しに行こうかな。


 もう日が沈みそうな時間だけど、エリオ君のことを考えると時間なんて気にしてられない。


 なにしろ、エリオ君の寿命はあと一ヶ月ぐらいなのだ。


 絶対に、すぐに届けないといけないだろう。


 ……決して、シエルに会うのが怖いから、先にエリオ君に完治薬を届けるというわけじゃない。


 優先順位をしっかりと確認した上で、エリオ君に先に会いに行った方がいいと判断しただけ。


 シエルに怒られるのを後回しにしよう、と思ったわけじゃないぞ、うん。



 そしてようやく、フォセカ王国からの長旅を終え、ノウゼン王国の王都に帰ってこれた。


 長旅といっても、実際は半日くらいで帰ってきてるんだよな……。


 なんかあまりにも濃厚な出来事がいっぱいあったから、長く感じるけど。


 一番はビックリしたのはやっぱり、ヘレナさんが王族だったってことかな。

 だからあれだけ博識で、すごい強い人なんだと納得出来た部分はあった。


 王都の上空を飛び回り、とりあえず最初はシエルを探す。


 ……さっき思い直したけど、シエルと一緒にエリオ君に会わないと、僕が持ってきた完治薬の説明が出来ない。


 いきなり鳥である僕が、よくわからない透明な薬を持っていっても、飲むわけないよね。


 はぁ、シエルに会うのが怖い……。



 とりあえず、まだ早い時間だけどアイリさんの屋敷に行こうかな。


 シエル、アリシアの二人だったら、まだ依頼で帰ってきてないかもしれないけど、闇雲に街を見て回ってもしょうがないからね。

 アイリさんの屋敷にいなかったら、冒険者ギルドの上空で待機してようかな。


 そう思いながらアイリさんの屋敷の方へ、僕は飛んで行く。


 すると、屋敷に着く前の、周りの更地に誰かいるのが見えた。


 僕は視力がいいから、それが誰かはすぐにわかる。

 あれはヘレナさんに、シエル。


 それに……黒い服を着た、男の人?



「――っ!!」



 なぜだかわからない。


 全く説明が出来ないけど、あの男が……敵だということを、本能的に理解した。


 その瞬間、僕は上空から本気の速度でその黒い男に向かってかける。


 男が目の前にいるヘレナさんに、右腕を伸ばした。

 頭を掴もうとしている。


 シエルが必死になって叫ぶ。

 ヘレナさんも何か身体に異常があるのか、避けられないみたいだ。


 僕は咄嗟に、翼から炎の槍をそのものに向かって放った。


「えっ――くっ、がぁぁぁぁ!!」


 男の身体は炎の槍に貫かれ、全身が炎に包まれた。


 勢いのまま後ろへと吹っ飛び、炎を消そうとしているのかゴロゴロと転がっている。


 呆然としているシエルの肩に、僕は降り立った。


 その瞬間、シエルの目から涙が溢れ、安心したように固くなった表情を綻ばせる。


「キョースケ……!」

「キョー!」


 ただいま、シエル。



 状況から見ると、やはりあの男は敵のようだ。


 よくわからないけど、シエルとヘレナさんは地面に足をつけないためか浮かんでいて、気絶しているアリシアも浮かんでいる。


 そしてヘレナさんが、僕の予想以上に疲れている。

 顔色が悪く、肩で息をしていて、今にも倒れそうだ。


「キョ、キョー」


 ヘレナさん、大丈夫ですか?


「はぁ、はぁ……はい、大丈夫です。キョースケ様、お陰で助かりました」


 やはりヘレナさんには言葉が通じるようで、普通に返事をしてくれる。


 しかし、あのヘレナさんがここまで消耗する相手ということか……。


 僕はようやく身体に纏っている炎を消し終え、立ち上がった黒い男を見る。


「効いた……すごい効いた、こんな痛いの初めてだった」


 とても嬉しそうに、気持ち悪い声でそう言う男。


 なぜこの男が、こんなにも気に食わないのかわからない。


 シエルやヘレナさん、アリシアが襲われていたから、というのもあると思うが、それだけじゃない。


 たとえ三人が襲われてなくても、むしろ友好的に話していたとしても、僕はこの男を敵と判断していただろう。


 それほど、本能的にこの男が嫌いだ。


「君が、赤い鳥……! つまり、僕が殺す相手なんだね……!!」


 僕のことを狂気に満ちた目で睨みながら、口角を上げる男。


「なんでだろうなぁ……君のことが、憎くて憎くて仕方ない……! 前に違う奴に炎で焼かれた時も、こんなに憎しみは覚えなかったのに……!」


 憎いと言っているのに、なぜ僕のことを見ながら笑うのだろうか。


「あはっ、僕は君が嫌いみたいだ……!」


 そこだけは、同意見だ。





4/27に、コミカライズが開始します!

電撃マオウにて連載が開始するので、よかったらご覧ください!

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[良い点] 凛々しいキョースケ! [気になる点] ホントに凛々しいのか? [一言] 薬、落とさないでね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ