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第121話 解毒魔法



「はぁ、はぁ……」


 ヘレナはその場に座り込むのを、なんとか力を振り絞って耐えた。

 地面には毒の水がまだ染み込んでいる。


 たとえ戦いに勝ったとしても、毒で死んでは意味がない。


 風魔法を使って自分の身体を浮かし、遠くにいるシエルの元に行く。


「シエル様……ありがとう、ございました」

「いや、そんな、ちょっと攻撃を放っただけですから……」

「いえ、その援護のお陰で……殺すことが、出来ましたから」


 その言葉を聞いて、恐る恐るシエルはヘレナの後ろに目線をやる。


 さっきまで戦っていた場所に、ユリウスの首が落ちていた。

 少し離れた場所に、頭をなくした身体が倒れ伏している。


 顔は反対側を向いていて、シエルからは後頭部しか見えない。


「……シエル様は、人が人を殺すところを見たのは、初めてでしょうか?」

「っ! は、はい……」


 ヘレナはシエルの横に降りて、立っているのが辛くなったので座り込む。

 なかなかキツイ戦いを強いられていたので、顔色が悪い。


「すいませんが、あの者は殺すしか、手がなかったのです……軍に遺体を引き渡す際、私が殺さざるを得なかった、理由の説明を任せてもよろしいですか?」

「は、はい、それは大丈夫です! ヘレナさん、大丈夫ですか? 顔色が……!」


 シエルも座り込み、ヘレナの肩を掴んで支える。

 華奢で身長が子供ぐらいしかないヘレナの肩は、とても薄くて頼りげないものである。


 それにもかかわらず、あんな激しい戦いをして生き残った。


「大丈夫、です……身体の毒を、分解しないといけませんので……」

「わ、私がしましょうか?」

「いえ、私は大丈夫ですが……アリシア様は、どうなりましたか? 少しでしたが、毒を喰らっていたはずですが……」


 ヘレナが見渡すと、地面に横になって寝ているアリシアの姿があった。

 アリシアの解毒しないといけないと思い近づくが、すでに解毒が済んでいて安定した呼吸をしながら寝ている。


「あの、私が魔法で解毒してみたんですけど……」

「……本当ですか?」

「は、はい、一応アリシアの身体の中を調べて、毒っぽいものを全て分解したんですけど……まだ残っていますか?」

「いえ……完璧です。私から見ても、毒は残っていないでしょう」


 その言葉を聞いてシエルは、ほっと一息つく。

 しっかり毒を分解したつもりだったが、残っていたらどうしようと思っていたところだ。


 ヘレナはまさかシエルに解毒魔法の才能があったことに驚いた。

 回復魔法よりかは難しくないが、それでも困難な魔法である。


 それを教えてもいないのに、ぶっつけ本番で出来るほどの才能。


 ユリウスという男の毒のお陰で、というと皮肉だが、それで才能を見つけることが出来た。


「シエル様、申し訳ありませんが、私の身体の毒も分解してもらえませんか?」

「はい! わかりました!」


 シエルは頼られたことで嬉しそうに、魔法を使用し始める。


 ヘレナはその解毒魔法を受けながら、少しだけ感心する。


 普通の解毒魔法を持っている医者の人でも、その魔法効率は悪い。

 身体の中にどういう毒があるか、どこに毒があるか、どれほどの強さの毒か、それを把握出来ないからだ。


 把握出来ないため、一回一回試しながら解毒魔法の強さを上げていくか、最初から全力でやるかのどちらかしかない。

 しかしどちらも無駄な魔力を使ってしまうのは明らかだ。


 だがシエルの場合、しっかりヘレナに教えられた通りに相手の身体の魔力などを感じ取り、毒の分析を行えている。

 そしてそれを治すためだけの魔力を使っているので、とても効率が良い。


「シエル様は解毒魔法の才能があるようです」

「ほ、本当ですか!?」

「はい。これからその才能も伸ばしましょうか」

「よろしくお願いします!」


 シエルは少しでも才能があるのは嬉しかった。


 とても多くなった魔力は、キョースケから譲り受けたものだったから。

 魔法の威力は上がったが、それはキョースケのお陰だった。


 キョースケに頼らずに、自分の力が強くなれるというのは嬉しい。



「――あはっ、じゃあもう少し、僕の毒に付き合ってもらおうかな」



 そんな声が、二人の後ろから聞こえた。


 勢いよく振り返ると、切れたはずの首が繋がってそこに立っているユリウスの姿があった。


「な、なんで……!? 首が、切れてたんじゃ……!」


 シエルは声を震わせながらそう言う。


 確かにヘレナの風魔法はユリウスの首を捉え、確実に切り裂いていた。

 先程までユリウスの首と身体があった場所には、どう見ても致死量ぐらいの血が流れている。


「どういうことでしょう。首と胴体が離れて、生きている人間など……っ!!」


 ヘレナは立ち上がり、ユリウスのことを見据えていたが、何かに気づいたように言葉を止めた。


「まさか、貴方は……! いえ、だけど……!」

「あはっ、何かに気づいたの?」


 ヘレナは一度空を見上げ、ユリウスの顔を睨む。


「まさか貴方は……魔人(マビト)なのですか?」




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