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第120話 一人では

あとがきを書いているので、ぜひ読んでください!



 ヘレナはもう、立っているのがやっとであった。


 本来ならアリシアのように、人間だったらすぐに動けなくなるほどの毒なのだ。


 ヘレナが動けている理由は、体内に入った毒をどうにか分解しているから。

 全ては分解出来ていないが、その分は体内の魔力操作で毒が全身に回らないようにしている。


 それまでしてなお、立っているのがやっとという状態である。


「あははっ、ヘレナちゃん、ふらついてるよ?」


 余裕の笑みで、ユリウスは歩きながらヘレナに近づいてくる。


 ユリウスもその場にいるだけで、毒を含んだ地面に触れているだけで毒を喰らっているはず。

 それなのにまるで痛くも痒くもないというように、一歩一歩進む。


 いくら回復魔法を身体にかけているとはいえ、毒の苦しみが一瞬でなくなっている訳ではない。


 それなのに笑みを浮かべ、淡々と歩いている。

 やはりユリウスは、異端な存在であった。


「ほら、首掴んじゃうよ?」


 ヘレナのすぐ側に立ったユリウスは、首めがけて手を伸ばしてくる。

 しかしその手は、ヘレナの風魔法で弾かれる。


「あはっ、そうだよね、そうこなくっちゃ!」


 とても愉悦な顔をして、ヘレナの目の前で何度も何度も手の平を伸ばして掴もうとする。

 しかしそれが全て、途中で弾かれる。


 ヘレナは全く動いていない。

 一歩でも歩いたら倒れてしまう可能性があるからだ。


 だから動かないまま魔法を発動し、その場に立ったまま全ての攻撃を弾く。


「はぁ、はぁ……」


 腕を上げる力も出ない。

 魔法を使って流れるのは何年振りになるか、汗も滝のように流れている。


 頭一つ分上にあるユリウスの目を下から睨みながら、相手の動きを注意深く見て魔法を発動させていく。


「あはっ、そんな情熱的に僕を見ないでくれよ、惚れちゃった?」

「……殺します」


 なんとか隙を突いて、喉元を風魔法で切りつけたい。


 しかしそれがとても難しい。

 ユリウスは身体強化魔法で、防御力も上がっている。


 なので首を切るのであれば、それ相応の魔力を使わなければいけない。


 だが今は身体の中で毒を分解している魔法、毒の巡りを遅らせる魔力操作、そして絶え間なく襲ってくるユリウスの攻撃。

 それらを全て同時に行なっているので、首を切る魔力が明らかに足りない。


 そして常人とは比べ物にならないくらいの魔力を持っているヘレナだが、その魔力も底が見え始めた。


 どれだけ魔力操作で効率よく使っていても、魔力にも限りがある。

 あと数分、今の状態が続いたら……毒で死ぬか、ユリウスに掴まれて死ぬかのどちらかだ。


「顔色悪いけど、大丈夫? そろそろ死ぬ?」

「……まだ、死にません」


 何度も何度も攻撃を仕掛けているユリウスは、ヘレナの変化に気づいている。


「少しだけ反応速度遅くなった? あともうちょっとで届いちゃうよ」

「……黙りなさい」


 本当に少しだけだが、ユリウスの腕を弾く速度が遅くなった。

 ヘレナが疲れて、対応しきれなくなっている証拠である。


 もう身体は動かせないので、逃げることも出来ない。

 逃げようとしてもユリウスは追ってくるだろうし、他の人に被害が及ぶ可能性が高い。


 だからここでヘレナが倒す、殺さないといけない。


 しかしもう、ヘレナ一人の力ではユリウスを殺すことは出来ない――。


「……あれ?」


 ユリウスが、驚いた声を上げた。


 ヘレナに伸ばしていた右手が……消えていた。


 肘の辺りから先がなくなっており、右腕だけではなく左腕も同じように消えている。


 いや、消えているわけじゃない、切られていた。


 いつの間に切られたのか?

 目の前にいるヘレナがいつ、どうやって切ったのか?


 ずっと風魔法を発動していたのを見ていたが、自分の腕が切られるような魔法ではなかったはず。


 そう考えた瞬間に、ユリウスは気づいた。

 さっき途中で自分に襲いかかろうとして間合いに入ってきて、毒で倒れた者がいたことを。


 そしてそれを助けた女が、風魔法を使っていたことを。


 パッと遠くをユリウスが見ると、青色の髪をした女が、こちらに向けて両手を出している。

 明らかに、こちらに向けて魔法を発動させた後であった。


 あの女が、自分の腕を切ったということに気づいた。


 ――ヘレナ一人では、ユリウスを殺すことは出来ない。


 ずっと自身を守るためにユリウスの腕を払いのけていた風魔法。

 しかしユリウスの腕はシエルの風魔法によって、切り飛ばされた。


 十メートル以上も離れた場所から、動いている人の腕を狙って切りとばす風魔法の精度。


 王都に来た頃のシエルじゃ、絶対に出来なかった。

 この数日間、ちゃんとヘレナの特訓を受けて身につけた力。



「感謝します、シエル様――」



 そしてヘレナは、今まで避けるのに使っていた魔力を全て込めて、ユリウスの喉元めがけて魔法を放った。


 

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