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第12話 スポーツ


 先手必勝という言葉を聞いたことがある。


 その言葉の通り、僕はまず口から思い切り炎を吹く。

 その大きさはこの大きいドラゴンを丸ごと包めるくらいの炎だ。


 ドラゴンは何もせずにそれに当たる。

 数秒後炎が無くなった時、傷一つないドラゴンがその中から現れた。


 やはりあのくらいの炎だとその鱗は破れないみたいだ。


 そう思っていると、今度はあのドラゴンが口を開いた。

 そして、すぐに岩が飛び出た。


 僕の身体よりふた回りほどデカイ岩。

 途轍もなく速く向かってくる――が、僕は旋回をするようにして避ける。


 前にやられた時より距離も遠いし、あの速さであの大きさならもう余裕を持って避けられる。


 今僕は黒い雲が晴れているところ、島の上の空を飛んでいるが、ドラゴンは黒い雲の上を飛んでいる。

 そしてこっちに来ようとしない。


 いや、多分来ようとしないんじゃなくて来れないんだろう。

 今まで半年ほど島に住んでいて、このドラゴンが下から見えたことはなかった。


 つまり、この島の上をドラゴンは飛べないのだ。

 だから黒い雲の上に行かなければ、ドラゴンから攻撃は岩を吐くぐらいしか受けないだろう。


 しかし、僕はそれを分かっていながらも、島の上から離れ雲の上に行く。


 正々堂々と、ということではない。

 このドラゴンには全力を出して欲しい。

 そして、それを僕が完膚なきまで叩き潰したいのだ。


 ふふふ、やっぱり前世の時には考えられないことを考えているあたり、性格も変わったんだろうな。


 そんなことを思っていると、ドラゴンがこっちに向かって飛んでくる。

 先程まであった距離は、すぐに無くなる。


 目の前にはドラゴンの凶暴な顔。

 僕を睨んでくる目は血走っていて、僕のことを殺そうとしているのがわかる。


 前見たときは僕なんてそこら辺の石ころを見ているかのような目だったのに。

 僕のことを敵として見てるということだろう。


 それがわかるとなぜか嬉しくなってしまう。

 前世の時は伝説の生き物であったドラゴンに、敵として認められている。


 とても高揚する。

 もう気持ちが抑えきれない。


 ドラゴン、殺し合おう。

 もちろん、死ぬのは嫌だから僕が勝つけどね。



 翼で浮いているため、手足が自由なドラゴンは僕を吹き飛ばそうと腕を振るってくる。

 それをギリギリで躱す。


 躱して少し距離をとってから、僕は翼を炎に変える。

 そして炎を勢いよく飛ばす。


 先程口から出た炎よりとても小さい。

 しかし、これは貫通力に特化させた技だ。速さもあって、デカイ身体を持ったドラゴンは躱せないだろう。


 そしてその勢いのままドラゴンの右肩のあたりに突き刺さった。


「グオオオオッ!」


 痛みからか、雄叫びをあげるドラゴン。

 当たった箇所を見ると、鱗が少し焦げているのが見える。


 だけど本当に少しだ。

 あの箇所にずっと攻撃すれば肉まで届くかもしれないけど、それは出来ないだろう。


 ドラゴンは遠くにいる僕にまた口を開けて岩を飛ばそうとしてくる。


 その攻撃はこの距離だったらもう当たらな――っ!


 そう思った瞬間、目の前には数十個の岩が現れた。

 先程の岩より大分小さいが、僕の身体の半分くらいの大きさだ。


 くっ――! 数が多すぎる!


 必死になって避けようとしたが、流石に避けきれずに当たってしまう。

 しかし、僕の身体はこういう攻撃は炎になって通り抜ける。


 だからダメージはないが、当たる時に炎の身体になると意識的になる時より生命力の消費が激しい。

 僕は速く飛ぶのにも、攻撃するのにも生命力使うので攻撃は当たりたくないのだが、今回は避けきるのが難しかった。


 あの攻撃をずっとされると、さすがに生命力が尽きてしまう。

 その前に決着をつけないと。


 もう一度炎の翼にして、先程と同じく炎を飛ばす。

 今度はあの血走った目を狙って。


 炎の軌道がわかったのか、ドラゴンは避けようと顔を逸らす。

 しかし、顔の目の前で炎は爆発を起こした。


 狙い通りだ。

 爆発の煙であいつは僕を見失う。


 そして僕は煙が消える前に高速で移動する。


 煙が晴れた時には僕はドラゴンの前にはいない。

 僕はドラゴンの下、腹の下にいる。


 ドラゴンの腹、そこも鱗で覆われているが、背中や翼に比べたら薄い。


 そこへ向けて、炎の槍を先程より大きくして飛ばす。

 自分を見失っているドラゴンは何も身構えることができずにそれを食らう。


「グオオオオッ!!」


 雄叫びを上げて痛がっている。

 腹も結構えぐれていて、血が出ている。


 ドラゴンの弱点は腹だ。そこを狙い撃ちにしていけば、殺せる。


 今の攻撃で僕を見つけたドラゴンはまたこちらに数十の岩を放ってくる。

 さっきは間を縫うように避けたが、今度は岩が届いてないところまで高速で飛んで避ける。

 何個か食らってしまったが、前の攻撃と比べたら食らった数は少ない。


 さて、スピードは僕の方が上だ。

 あの図体で僕より速かったらちょっとヤバかったけど、さすがにそれはなかった。


 スピードで撹乱して狙いをつけさせないようにしながら、腹に攻撃を当てる。

 言葉にすれば簡単だけど、やるのは難しい。


 だけど、楽しい。

 前世では僕はスポーツというものができなかった。

 テレビで見て色々詳しくなったけど、やったことない。


 だから、今この戦いは僕にとっては前世で出来なかったスポーツみたいなものだ。


 命を懸けたスポーツ。

 それが殺し合い。


 なんて心が踊るものだろう。

 前世では皆こんなに楽しいことをしていたのか、そりゃあハマるに決まっている。


 僕もハマりそうだ、スポーツ(殺し合い)に。



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