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第110話 友達?



 馬車に揺られて二時間ほど経ち、フォセカ王国に帰ってきた。


 門にいた兵士達がこの豪華な馬車を見て、とても安心しているのがわかる。


「ご無事で良かったです、ラウラ様」

「クラーケンは倒せましたが、港に甚大な被害があります。復旧のための準備をお願いします」

「わかりました。それだけすごい戦いだったのですね」

「いえ、だいたいは陛下がクラーケンとの戦いと関係なくやりました」

「そ、そうなのですか……では、馬車のドアが壊れているのは……」

「もちろん陛下が」

「なるほど」


 門に着いたときに外でそんな会話をしているのを、ナディア女王は汗をダラダラ流しながら聞いていた。



 馬車を降りて、最初に案内された建物に向かう。

 歩いてではなく、転移ができる道具でひとっ飛び。


 すぐに建物に着き、中に入る……と思いきや、ナディア女王だけ入らずにまた違うところに歩き出す。


「陛下、どこに行くのですか?」


 ラウラさんが勝手に行動したナディア女王を諌めるように言った。


「えっ、王宮よ? だってそこにしか完治薬ないもの」

「っ! 陛下、いくら完治薬とレシピを渡すといっても、他国の者を王宮に入れるのは……」

「別にいいでしょ、友達なんだから」

「……はぁ、わかりました」

「っていうことよ、二人とも、それにキョースケもついてきなさい!」


 率先して歩いて行くナディア女王の後ろをついていく。


 僕のことを抱えたまま歩いているアイリさんが、疑問に思ったことを一言。


「……誰と誰が、友達なの?」

「えぇ!? そこ!? 私とアイリ、それにマリーだけど!?」

「あっ、そうなんだ、知らなかった」

「私も今初めて知ったわ」

「なんでよ! あんだけ一緒に戦ったんだから、友達でしょ!? 仲間でしょ!?」


 先に歩いていたのに、止まって後ろを向いて縋るように話すナディア女王。


「私、女王だから友達いないの! いいじゃん、友達になってよー!」

「友達って、言ってなれるものじゃないと思うけど」

「そうなの!? 『友達になろうよ!』って言って『いいよ!』って相手が言えば、友達じゃないの!?」

「どこ情報なのそれ」

「王宮にあった本よ」

「……ヘレナさんが書いた本じゃないわよね?」

「違うわよ」

「良かったわ、あの人がそんなこと書かないわよね」


 僕も一瞬ヘレナさんが書いたのか疑っちゃった……。

 ごめんなさい、ヘレナさん。


「と、友達だよね、そうだよね……?」


 ナディア女王はとても不安そうな顔で、アイリさんとマリーさんの顔を交互に見る。


「逆にエルフの国の女王と、種族が違う私たちが友達になっていいの?」

「いいんだよ、別に……多分」

「ラウラさん、どうなの?」

「……公な場で控えるのであればいいのではないでしょうか?」

「だって! だから友達になろう!」


 アイリさんとマリーさんがお互いに顔を見合わせた。

 どうするか一瞬悩んようだけど、すぐに答える。


「私は別にいいけど」

「ありがとうアイリ! なんか冷めてる気がするけど、それでも嬉しい! マリーは!?」

「そ、そこまで言われちゃしょうがないわね! 友達になってやってもいいわよ!」

「私女王なのにすごい上から! だけどそれが友達っぽくていいね! よろしくね、マリー!」

「え、ええ、友達なんだから、私も呼び捨てで呼ぶわよ、ナディア」

「もちろん!」


 とても嬉しそうにマリーさんの手を取って跳ねるナディア女王。

 満更でもなさそうなマリーさんと、少し微笑みを浮かべてそれを見るアイリさん。


 そういえばマリーさんも、友達はアリシアしかいないって言ってたなぁ。

 だからマリーさんも案外心の中では喜んでいるのかも。



 あれ……そういえば僕、友達いない……?



 シエルとは友達に近いけど、一応相棒だ。

 それに友達というよりも、家族だと僕は思っている。


 アイリさんとは……おそらく、ペットみたいな感じだろう。

 他にもアリシア、マリーさん、ヘレナさんとか、仲良い人はいるけど、友達というわけではないかもしれない。


 やっぱり鳥と人間っていうのが、大きな隔たりがあると思う。

 契約しているシエル、それになぜかヘレナさんだけが僕の言葉が通じるけど、他の人とは喋れない。


 ま、まさか僕は、友達がいないなんて……!?


 い、いいんだ、僕はシエルと友達以上だし、相棒で家族だから……。


 ナディア女王、マリーさん、友達出来て良かったね。

 なんて言える立場でもなかった。


 前世の頃から友達いなかったから、僕は前世も今世もずっと友達がいない……。


 そう思うとなんか落ち込んできた。


「? どうしたの、キョースケ」

「キョ、キョー!」


 アイリさんの腕の中で、身振り手振りで話しかけてみる。


 僕友達がいないんだけど、アイリさんがなってくれる?


「……ごめん、なんて言いたいかわからない」

「……キョー」


 だよね、知ってた。

 やっぱり言葉が通じないのは辛い……。


 僕にもいつか、友達が出来るかな。

 出来るといいなぁ。




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