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第11話 ドラゴン


 僕が強くなることを決意して、何ヶ月経っただろう。


 おそらく、いや確実に生まれてから飛んで外に出るまでの期間より長い時間を過ごしたと思う。

 あれが一ヶ月とするなら、多分半年ぐらいは経ったかもしれない。


 比較の対象がないからわからないけど、結構強くなったと思う。


 この期間で一番驚いたことというか、学んだことは僕が炎の鳥だということ。


 強くなろうと決めてすぐに森の中で飛ぶ練習をした。

 森にはとても大きい木がいっぱい生い茂っていたから、その間を潜り抜けるように飛べば練習になると思ったからだ。


 その間を潜り抜ける練習はとても難しく、風も読めなくてほとんど生命力で飛んでいた。

 だけどこれじゃダメだと思って、激突する覚悟でやったらすぐに木にぶつかりそうになった。


 ぶつかる! と思ってまた目を瞑って……痛みが来ないので目を開けると、普通に飛んでいた。

 確かに当たったはずなのに、また通り抜けるように当たらずに済んでしまった。


 ドラゴンが出した岩も当たらなかったから何かこれには理由があると思い、今度は目を瞑らずに木にぶつかってみた。

 とても怖かったけど、やった甲斐はあった。


 結果として、僕の身体は炎になって木を通り抜けてしまったのだ。


 この身体は何かに当たりそうになったら炎になってしまうみたい。

 だから前にドラゴンの岩が当たんなかったのも、当たった瞬間に炎の身体になって避けたんだろう。


 このことを知ると、僕は色々実験をした。

 いつもは普通に実体があるんだけど、危険が迫ったら無意識に炎の身体になるみたいだ。

 だから今度は意図的に炎の身体になれるかとか、炎を口じゃなくて身体から出せるかとか。


 実験した結果、だいたいできるということがわかった。

 身体も部分的に炎のように変身できたり、その炎を飛ばして攻撃することもできるようになった。


 で、この炎の身体はやっぱり生命力に関係するらしい。

 最近は生命力の量もとても増えていて、速く飛ぶときはいつも使っている。

 生命力を一度ほとんど無くしたことがあるんだけど、その時は炎の身体になれなかった。


 僕が炎を出すとき、炎の身体になるときに生命力を使う。

 これが全部なくなったら、多分死ぬ。


 だから生命力を増やすことに一番力を入れた。


 そしてこれから、また外に行こう。

 今は洞窟の中にいて、像の前にいる。


 今度はすぐ帰って来ないと思う。

 じゃあね、元気でね。


 別れの挨拶をしてから、天井の穴に向かう。


 初めて出たときとは比べ物にならないくらい速く上がって行き、左手に見えてくる大きな穴もすぐに出る。


 外に出ると今もなお、この島の上以外の空は黒い雲で覆われている。

 長いことここで練習してきたけど、一度も黒い雲がなくなって晴れたのを見たことがない。

 なぜこの島の上だけ晴れているのかもわからない。


 とりあえず、一度島の周りを飛んでみる。

 この島は僕以外に生物がいなかった。どれだけ森の中を飛んでも、虫の一匹もいない。

 島の中だけでなく、この島には生物が近づかないのかもしれない。

 あんな大きいドラゴンが上にいたのに、この島には近づいてこないのだ。


 僕が食べることを必要としない魔物で良かった、これだけ何もいなかったら食べ物がなくて死んでいたかも。


 よし、上へ行こう。

 この島の上だけは綺麗な空。


 そこに向かって勢いよく飛んでいく。


 本当ならそこへ行かなくてもいい。

 というか、黒い雲の下を飛べば安全に他の島に行けるだろう。


 だけどなぜだろう、僕は上に行きたいのだ。


 黒い雲が周りに浮かんでいる中、綺麗な空へ飛ぶ。

 そして雲を見下ろせるくらいのところまで上がった。


 そこからだと綺麗な青空が見える。

 下は黒い雲で海が全く見えないが、空は綺麗なので良い気持ちだ。


 だけど――すぐに奴が現れた。


 右を向くと、黒いドラゴンがいた。

 おそらくあの時の奴だろう。

 前よりも遠くにいるが、遠くにいる居るからこその大きさが際立って見える。


 訓練をする前は、ドラゴンから逃げるために鍛えようと思っていた。


 だけど今は、ドラゴンを倒すためにここまできた。


 多分、僕は鳥になってから考え方が変わったのかもしれない。

 前世の時だったらこんな相手に立ち向かおうとは思わなかっただろう。


 だけど今、僕はこのドラゴンに勝ちたいと思っている。

 好戦的な性格になっていると実感する。


 これだけの相手を前にして、僕はとても興奮している。


 約半年前はドラゴンを相手に絶望しかなかったけど、今の僕ならやれるとなぜか思えてくる。


 さあ、ドラゴン。


 僕と戦ってくれ、お前は僕が倒す。



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