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第107話 伝説の生き物?


 三人が戦っているのを、僕とラウラさんは港でお留守番して遠くから眺めている。


 時々こちらまで戦いの余波で水などが飛んでくるが、港に被害が及ぶようなものではないので無視。


 だけど黒い墨が混ざっていた水は、とりあえず僕の炎で蒸発させといた。

 なんかわからないけど、嫌な感じだからね。


 本当に時々しかやることがないので、ラウラさんと二人きりで過ごすことになっている。


 ラウラさんの腕の中にずっと、動かないでいる僕。

 黒い墨が飛んできたときは動くけど、腕の中で対応できるからずっとそこにいる。


「ありがとうございます」

「キョー」


 どういたしまして、という意味を込めて鳴く。

 特に言葉の意味がわからなくても通じるだろう。


「……」

「……」


 ……き、気まずい。


 何も話すことがない。

 いや、僕から何か話しても意味が通じないから話せないんだけど。


 ラウラさんは僕を撫でるということは、全くしていない。


 腕の中にいると言ったが、少し語弊がある。

 彼女が手を前で重ねているのだが、その上に僕が乗っている感じだ。


 服の部分に足を置いているから食い込んではないと思うけど、この体勢は初めて。

 だけど意外と安定している。


「……キョースケ様」

「っ! キョー」


 突然話しかけられて驚いたが、意味は通じないけど返事をする。


「貴方様はクラーケン以上の伝説の生き物なのに、人間と同じくらいの知能を持っていらっしゃいますね」

「キョ!?」


 えっ! も、もともと人間だってことがバレてる?

 いや、同じくらいの知能を持っているってだけで、バレてないかな?


 それと、僕が伝説の生き物?

 えっ、僕の種族を知ってるの!?


「それにマリー様から先程話を伺いましたが、人族の女性と契約をしているようですね。貴方様ほどの者がなぜとは思いますが……何か考えがあるのでしょう」


 シエルと契約をしたことが、なんか深い考えがあったかのように思われているようだ。

 いや、ただ名前を付けられたら契約するって知らずに、流れで契約しちゃっただけなんだけど……。


「貴方様がいるということは、やはり空を覆う黒雲はそういうことなのでしょうね……力になれるかわかりませんが、全力を尽くしましょう。貴方様は、世界を救う者なのですから」


 えっ、何? 本当によくわからない。


 僕と黒雲が何か関係あるの?

 世界を救うって何?


 色々と聞きたいことがあるのに、意味が通じないから聞けない!

 シエル、それかヘレナさんがここにいれば聞けるのに……!


「貴方様の行く末に、幸があらんことを」


 なんかいい感じに話終わりにしたっぽいけど、僕は謎しか残ってないけど!?

 くっ、ここまで人の言葉を話せないことがもどかしいと感じたのは、鳥になってからは初めてだ!



 どうにか聞けないかと思っていたが……突如、海の方で大きな水飛沫が上がった。


「……どうやらまた、アイリ様とナディア女王が合体魔法を撃ったようです」


 あそこにとんでもない爆弾が落ちたのではないか、というほどの大きな水飛沫だ。

 先程ほどではないが、またこちらまで水が飛んできている。


「キョースケ様、お願いします。私だけではさすがに無理です」

「キョー」


 とりあえず飛んでくる水で、港に被害を出さないようにしよう。


 今回は水に紛れて、大きな物体。

 おそらくクラーケンの足のようなものも飛んできている。


 ラウラさんの腕から上に飛び、空中で炎で大きな翼を作った。

 おそらく体感だと、全長十メートル以上の炎の翼。


 迫ってくる水に、炎の翼を仰ぐようにして全力で炎を出していく。

 同時に熱風も出すので、水を全て蒸発は出来なくとも、その熱風で港まで水が飛んでこないように出来た。


 結構魔力を使って大変だったけど、今回は被害を出さずに済んだ。

 クラーケンの足は狙って燃やしたから、黒焦げになって港近くに落ちている。


 無事に港を守り切ったので、ラウラさんの腕にまた降りる。


「さすがですね。ありがとうございます」

「キョー」


 ラウラさんは軽く頭を下げたので、僕も「どういたしまして」というように頭を下げる。


「どうやらあちらは今の魔法で終わったようですね」


 ラウラさんの言葉通り、三人がこちらに戻ってきている。


 アイリさんがマリーさんを抱えているが、怪我でもしたのだろうか?

 そのままこちらまで飛んできて、陸地に着地した。


「へ、へへへ……アイリに、抱きしめられてる……」

「? 何か言った?」

「い、いえ、何も……アイリ、助けてくれてありがとう」


 マリーさんは名残惜しそうにアイリさんから離れた。


「ねえねえ! 今のキョースケの炎めっちゃカッコよかった!! なにあれ!? 炎の翼とかカッコよすぎない!?」


 ナディア女王は興奮した様子で帰ってきて早々、僕に詰め寄ってきた。


 お、おお、カッコいいって言われるのはすごい嬉しいけど、ちょっと顔が近い。

 ラウラさんの腕のところに立ってるから、後ろに下がれないし。


 そう思っていると、ガツンと音がしてナディア女王のキラキラした顔が僕の前から消えた。

 見るとラウラさんがまたナディア女王の頭に拳骨を落としたようだ。


「いたぁぁぁ!」

「キョースケ様が困っているでしょう。やめなさい」

「ご、ごめんなさい……あっ、そうだ、クラーケン倒したからお小遣いから港の修理代出すの無しだよね!」


 ラウラさんに縋るようにそう言ったナディア女王。


「私はそんな約束しておりませんが」

「嘘!? 約束したじゃん!

「私は『考えておきます』と言っただけなので。そして考えた結果、ダメです」

「えぇ!? お、鬼! 最低だよ! 嘘つき!」

「書類仕事をもっとしたいようですね」

「うぇぇ……ひどいよぉぉぉ……!」


 最終的にナディア女王の泣き落としにより、港の修理代はお小遣いからではなくなったみたいだ。


 クラーケンを倒したことよりも喜んだナディア女王だった。



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