Intercept / 02
Intercept / 02
「……ただし、このアイディアじゃ不足があるね」
先ほどよりしばらく、窓の外はもうすっかり夜の風景な、俺の家にて。
キティは、俺の座椅子を独占しつつそんなことを宣った。
「このアイディアじゃ、騎士団には敵わない」
それはつまり、俺が彼女に求めた借りの精算である。
彼女に「ここに残れ」とは言えない。言った瞬間に、俺と彼女の関係はもっと居心地の悪いものに変わる。ならばこそ今、俺たちは最も鮮烈な形で、別れる必要があった。
そのアテが「これ」である。
つまりは、「なんでもいいからとりあえずあいつらに一泡吹かせたい」それが彼女に求めたことだ。それにあたり俺は、ざっくりケイルを殴り飛ばすまでの算段を立ててみて、それをキティに一蹴されて今に至る。
「いやしかし、なんだよ、面白いこと言うんだね」
座椅子の上で、キティは笑う。
それから、仕方なくで事務椅子の方に座っている俺へ振り向き、すこし見上げる格好で、
「君がそんな、熱い男だとは思わなかった」
「――……そうかね、割と熱いよ?」
本当に、マジで。
結構これでも、色々腹に据えかねるようなことばかりの人生だったんだぜ?
「まあいいよ。――それより、聖剣が残ってるなら話が早いじゃん」
討伐対象を見誤ったという事情は、既にデイジーから聞いていた。他方キティも、未だ聖剣が残っているのを見て合点が行ったということらしい。
天の柱の何某という魔道具の省エネ気質と同様に、聖剣の方も残っていて当然か。みたいなことを言っていたようだったが、俺としてはモノが消えてなくなる方が普通に違和感がある。
などと思考が明後日を向き始めたが、しかし、
「『ソレ』があるならなんとかなる」
というキティの言葉に、俺は居住まいを正す。
「聖剣は持ち主を強化する、って言うのはこないだの話にもあったけど、デイジー曰くドレスコードだっけ」
良い例えだよ、とキティは、
「つまり、神様のドレスコードだ。ヒトからしたら一流なのは当然だろ?」
そんな冗談を言ってのける。
「……、……」
「つまりね、聖剣を持った時点で、人が出来る身体操作の大抵が出来るようになる。神からの祝福って言うのは、そういうもんだ」
露骨なチートが出来て最低限度、大抵はそこからプラスアルファで固有の性質もあるってのが基本だね。と続ける。
「ただし、これは一般的な魔法で詰められる差だ」
彼女の、その言葉は、
「チートの質ではこっちに分があるさ、当然ね。向こうに神さまと知り合いな奴なんていないからね」
――舞台役者の大一番のように流暢に流れ出して、
「ただ、まあ。――騎士団を相手取るとすれば、チートの質以外の全ては向こうのが格上だ」
そして最短の文脈で以って、
彼女は、核心を告げる。
「君が勝てるとしたら、それは二つ。騎士団がジャイアントキリング専門であることと、そして『君の持つ手札』の使い方だ」
つまり、と一拍を置いて、彼女は短く、こう言った。
「――手札としてさ。私も、たまには本気を出しておこうかな?」




