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着物談義・・・


はいからさんが分かる人は同年代かしら?

智也君は私の左手をそっと宝物のように撫でてきたの。


「清香ちゃん、僕に君を守る権利をくれないか。清香ちゃんが頷いてれたら、僕は君の婚約者として隣に立てるんだ」


その言葉に驚きました。目尻から落ちそうになっていた涙が引っ込むほどです。


「あの、智也君。婚約者って」


智也君がしまったという顔をしたのよ。そして、一度上を向いて溜め息を吐き出すと言ったの。


「清香ちゃん、叔父さん達の所に戻ろうか」


そのまま、智也君に手を引かれて立ち上がったの。引っ張られるよに歩いていきます。そうしたら智也君が前を向いたまま小声で話しだしたのね。


「清香ちゃん、ごめんね。騙しうちみたいにしたけど、実は今日のこれはお見合いなんだ」

「うそ・・・本当に」

「うん。でも、僕が清香ちゃんを好きなことは本当だし、出来れば僕のお嫁さんになって貰いたいと思っているんだ」


その言葉に私の頬はまた赤く染まりました。


「それとさ、四月から僕も清香ちゃんと同じ学校に通えるんだ」

「うちの学校に転校してくるのですか」

「そうだよ。だから清香ちゃんの隣に立つ、堂々とした理由が欲しいんだ」


智也君の言葉に目が丸くなります。


「でも、婚約だなんて・・・」

「清香ちゃん。もう一つごめん。実は清香ちゃんが髪を切ることになった事情も知っているんだよ」

「そ、そんな」

「だから、君を守るためにも同じところに居ることにしたんだ」

「わ、私のため?」


そう言ったら智也君の歩みが止まったわ。私のことを振り返ると、真剣な眼差しで私のことを見つめたの。


「大切な女性を傷つけられて黙っていられるわけないだろう」


大切な女性・・・智也君の中で私はちゃんと女性だったのですね。


「智也君、私も智也君のことが好きです」


私の言葉に智也君は私の両手を掴んできた。


「本当に?」

「はい。私でよければよろしくお願いします」


そう言って軽く頭を下げたの。顔を上げて彼の顔を見たら、とても嬉しい顔をしていたわ。そして私の両手を持ち上げると、人差し指の指先に軽く口づけを落としたの。


「ありがとう、清香ちゃん。これからよろしくお願いします」


智也君はとても嬉しそうに笑ったわ。私の右手と自分の左手を繋ぎ直すと今度は並んで歩き出したのよ。


食事をした部屋に戻ると、達也さんと絵菜ちゃんが満面の笑顔で待っていたの。


「智也、清香ちゃんから、ちゃんと了承は得たんだな」

「うん、叔父さん」

「わかった」


そういうと達也さんは携帯を取り出してどこかに電話を掛けていた。相手が出る前に離れてしまったので、誰と話していたのか分からなかった。


「清香ちゃん、智也君、おめでとう。私ね、前々から二人はお似合いだと思っていたのよ。お付き合いすることになってくれてうれしいわ」


絵菜ちゃんは私達が繋いだ手に、自分の手を重ねながらそう言ってくれた。


「ありがとう、絵菜ちゃん」

「ありがとうございます。清香ちゃんのことは必ず守りますから、安心してください」

「もちろん信頼してるわよ、智也君」


達也さんが戻ってきて、帰ることになったの。帰りの車の中で達也さんに揶揄われるかと思ったけど、そんなことはなかったの。それよりも、また着物談義でした。


今度はなぜか私に着せたい着物の話になったのよ。まずは達也さんが私に訊いてきたわ。


「清香ちゃん、他に持っている着物は何があるんだい」

「この着物と一緒に祖母から頂いたのは、小紋と紬です」

「色や柄は?」

「小紋は薄紅うすべに色で撫子だったかしら?白い花が描かれていたの」

「紬は?まさか大島紬かい」

「いえ、結城紬です。藍色で麻の葉の模様です」

「それはまた渋いね」

「渋いですか?」


軽く首を捻りました。


「まあ、定番といえば定番だろう。絵菜、清香ちゃんに着せるのならどんなものを着せたいかな」

「えっ、清香ちゃんに?そうね、私は支子くちなし色にお花の柄がいいかな」

「智也は?」

「僕は一重梅ひとえうめ扇面せんめんかな。そういう叔父さんはどうなの」

「俺は紫の矢絣模様に臙脂の袴を合わせて欲しいかな」


それって・・・。隣に座った智也君の顔を見たら目が合いました。


「「ショートブーツではいからさん!」」


智也君と声がピタリと重なりました。顔を見合わせて二人でふふっと笑ったの。


「あー、それはいいわね。私も清香ちゃんのはいからさんをみた~い」


絵菜ちゃんが楽しそうに声をあげたのね。


「じゃあ、今度うちに来る。貸衣装もしているからいろいろな着物を見せられるよ」

「本当ですか。では、是非にお邪魔させてください」


そのまま達也さん達のマンションに行くのかと思ったら、車は駅前に向かったの。駐車場に車を止めると、街の散策に移ったのよ。店頭の展示物を見ながらゆっくりと歩いて行きます。


心なしかみんなに見られている気がします。・・・いえ、見られています。着物を着た智也君はかっこいいですから!改めて見ると着物を着ているからか、智也君は大人ぽっく見えます。隣にいる私は・・・中学生が背伸びして着物を着ているでしょうか。


つい、自分の胸元に目がいきます。タオルで少し膨らみがある様にしたけど、本当はツルっぺたです。うちの家系は成長期が遅いと聞いていますが、もう少し女性らしくボン、キュッ、ボンになりたいです。母も祖母も高2まで背が低く、二次性徴もそれからだと言ってましたもの。


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