昼時の王子
部屋の荷物を整理して時計を見ると、ちょうど11時だった。
あー・・・ご飯作んなきゃ。
私、意外と料理とか出来るよ。
結構得意よ。
何を作ろうか・・・。
ま、ここは二人に聞くしかないよね。
ていうか、さっきから2時間たってるけど何の連絡もないよ?
随分楽な仕事だなぁ・・・。
そんな考えが甘いことは後になって気付く。
コンコンッ
「陽斗ー。入るよー。」
『・・・・・なんだよ。』
ソファの上で不機嫌そうにこっちを見てる。
この態度は何なんだろうね。
『お昼何食べたい?』
「は?」
は?って・・・・は?
何で質問し返されちゃってるわけ?
何かおかしなこと言いました?
『・・・お昼。何食べたい?』
「・・・何で俺に聞くんだよ。」
『いや、この後暁斗にも聞きに行くけど。』
「・・・聞かれたこと無いんだけど・・・てか、うちの冷蔵庫に何入ってるか知らんし。」
何この子・・・世話係が何食べたいか聞きに来るのっておかしいの?
『聞かれたこと・・・無いの?』
「・・・ま、いいや。何作れんの?」
『足りないものは買いに行くし。基本何でも作れる・・・かな?』
暫しの沈黙・・・。
「ふーん。じゃ、ハンバーグ。」
・・・・・・・・。
は、はんばーぐ?
あの子供に大人気の?
お子様ランチに大抵入ってる・・・あのハンバーグ?
「わ、笑ってんじゃねぇよ!」
『ご、ごめん・・・だって・・・意外すぎるって!』
「・・・死ね・・・・・・・・もういい。」
『うそうそ。ちゃんと作るから。』
「・・・最初からそう言えばいいんだよ。」
・・・なんだ。
めんどくさいけど、意外と可愛いとこあるよ。
結構そういう子いじるの楽しいし。
じゃ、次は暁斗さんのとこ行きますかー。
コンコンッ
「・・・なに・・・」
部屋に入って一目で見つけられなくても、もう驚かない。
『今度はどこにいるのかなー。』
さっきのことにはいないからー・・・ここか?
そう思って机と壁の間を見たら・・・・いた。
広いから結構見つけやすい。
でも、広くてモノがデカい分物陰もデカい。
「・・・せーかい。何?何か用?」
『うん。ご飯、何が食べたい?』
「何?作んのめんどいの?俺外は行かないよ。」
『いや・・・作んのよ。』
そう言うと、また何かビックリしたような顔をされた。
「・・・聞いてくる奴初めてだよ。」
『それさっき聞いた・・・っていうか、あなた達の今までの世話係さんたちは、どんだけ適当な人だったん?』
「・・・・知らね。俺らが選んだわけじゃねぇし。」
ほー。
あー。でも食べたくないもの出されても嫌だろうな。
特にこういう性格の人たちは。
前の人たちもきっと、買い出しとか面倒だったんだろうね。
なんせ、ここの冷蔵庫空だし。
この人たちに聞きに行くのも辛いだろうし。
・・・・、第一印象が最悪だからね(笑)
『そうなんだ。んで?何が食べたいの?』
「・・・パスタ。」
『範囲が広いなぁ。何でもいいの?』
「・・・・・・得意なのでいい。」
『了解。』
私は「何食べたいか聞く」という目的を果たしたので出ていこうと、扉に手を掛けた。
すると・・・
「・・・・さっきの、ウザイっての・・・撤回。」
え?あ・・・あぁ・・・最初のね?
『ん?・・・あぁ。どうも。』
「・・・・早く出てけ。」
ちょっと・・・打ち解けた・・・・・・のか?
いや・・・最後の出てけは酷いけど。
性格歪んでるって・・・間違ってるよ。雄二さん。
この子たち、きっと素直じゃないだけだよ。
・・・・口は悪いけど。
きっと、今までの世話係の人たちが悪いんだよ。
だって私からしたら、食べたい料理作ってあげるのは当たり前だし。
ちゃんとプロをつけてあげなきゃ。
・・・私みたいな!
・・・冗談です。
まぁ・・・気長にやるか。