光の道筋
私の両親が経営する施設「さくら園」。
0~18歳までの親のいない子供たちが入園する施設。
ちょっと有名。
木造りで温かい色の建物。
0歳から5歳までの子たちは大部屋でみんなで生活。
それ以上の子は年齢別に2人部屋で生活している。
食事はみんな一緒。
お風呂は大浴場。
反抗期の子たちを除けばみんな仲良しなの。
社長はお父さん。事務がお母さん。
私は子供たちの世話を手伝ったりもしてる。
あ、勿論他の従業員さんもいるけどね?
私はさくら園で、小中学生くらいの微妙な時期の子供たちの世話もしてる。
そんで、私のさくら園での仕事ぶりが意外と評価されたみたい。
ということで、今日・・・。
何故か、財閥の社長さんが私の真向かいにいます。
ねぇ・・・・どうしてだろ?
何があったんだろ?
すげー怖い。
もー、お父さんもお母さんも冷や汗かいてるよ。
あんなに、にこやかで滅多に笑顔を崩さないお母さんが、かっちんこっちんだよ。
お父さんなんて、もうこの世の終わりみたいな顔してるよ。
・・・・何が起こるんですか。
『・・・あの・・・何ですか?』
私は固まってる両親に代わって仕方なく聞く。
目の前に座ってるおじ様は、ダンディー風で優しそう。
でも、やっぱ立場的に怖く感じてしまう。
「突然で申し訳ありません。実は、あなたに頼みたいことがありまして」
と・・・・・私を見て言った。
『・・・え?私ですか?』
「はい。黒崎彩様・・・あなたに頼みたいことがあります。」
私に頼みたいこと・・・・・。
ってか、私が財閥様の役に立てることかあるっ!?
「・・・うちの娘に出来ることなんてあるんでしょうか?」
立ち直ったお母さんが聞いた。
お父さんも不思議そうに見てる。
「単刀直入に言うと・・・・・・・・うちの息子の世話を頼みたいんです。」
「「・・・はい?」」
ん・・・・?何?世話?息子の?
『・・・どういうことですか?』
「実は、うちには13歳と16歳の息子がいます。」
城崎財閥は結構有名な財閥だし、それは知ってる。
・・・それが?
「・・・しかし、13歳の息子は生まれつき足の筋肉の発達が弱く、自分で歩くことが難しいんです。」
『・・・そうなんですか。』
初めて聞く事実に少しびっくりする。
「そして、16歳の息子は精神的に弱い子でして、小学校を卒業してからほとんど家から出ていないんです。」
・・・そんなことがあるんか。
財閥でお金持ちでも、全てが定まっている訳ではないらしい。
庶民の考えだけど・・・。
『そうですか・・・それで、私に頼みたいことっていうのは・・・』
「はい。うちの息子はそういう子たちですので、世話係をつけているのですが・・・どうも懐いてくれなくて・・・」
ああ・・・なんとなくわかった気がするよ。うん。
『それで、私に世話を頼みたいということですか?』
「理解が早くて助かります。」
『でも・・・』
「あなたは、この施設でたくさんの子供たちをお世話してきたと聞いています。」
いえいえ。私なんてまだまだです。
この前高校卒業したばっかだし。
「もしよろしければ、私の息子たちの専属の世話係になっていただけないでしょうか。」
『二人とも、どう思う?』
私はお母さんとお父さんに聞いてみる。
「・・・う~ん・・・いいんじゃないか?お役に立てるなら行ってこい。」
「うん。私もいいと思うわよ?彩が決めることだけどね?」
うーん・・・私も就職先決まってるわけじゃないしな・・・。
ま、働くとしてもここで働こうと思ってたし・・・。
行ってもいいかなー。
そう思った時、おじ様がまた息子についての話をし出した。
とりあえず大人しく聞くことにしよう。
「13歳の息子は陽斗といいまして、強気な性格で世話をされるのをとても嫌っています。」
『・・・・・・。』
「16歳の息子は暁斗といいます。先ほど言った通り精神的に弱いんですが、結構歪んだ性格なんです。」
『・・・・・・。』
「こんな息子たちですが、どうにか頼めませんかね・・・」
見たところ、おじ様も悪い人じゃなさそう。
むしろ、すごい優しいし、腰が低い人だ。
息子の紹介も、きっと悪いところを隠すことなく言ってくれたんだろう。
『・・・・・・わかりました。引き受けます。』
その子たちに興味もあるしね。
「本当ですか!?それは良かった・・・お母様、お父様・・・娘さをうちの息子の世話係にさせていただいていいですか?」
お父さんとお母さんを見ると、いつもの笑顔に戻っていた。
「もちろんです。よろしくお願いします。」
「娘をよろしくお願いします。」
「こちらこそ・・・娘さんにお世話になります。働くということになりますので、給料はしっかりお支払いします。」
『あ、ありがとうございます・・・・。・・・あの、住み込みですか?』
ここから、城崎様の豪邸までは20キロくらいある。
通えないこともないけど、面倒臭い・・・・かな。
「はい。住み込みのほうが楽だと思うので、そのようにさせていただきます。」
『はい、お願いします。』
そう言って、私たちは立ち上がった。
そのままおじ様・・・城崎雄二さんを玄関まで送る。
明日、迎えに来るらしいから、用意しなきゃ。