始めのはじめ・能力者とは
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20××年。世界各地で『異能力者』の発現が突如確認された。
それまで何の変哲もなかった人達から、あらゆる技術を圧倒する者が現れたのだ。
異能力者たちは、その能力を使って様々な行動を行った。
ある者は仕事を有益に進める手段として用いたり。
ある者は盗みや殺しに走る蛮行を行ったり。
またある者は、その蛮行を咎めるために闘ったり。
世界のルールが変わってもなお、人間というものは欲望を抑えずに行動する、とても浅ましい種族であることが、再確認された瞬間であった。
著・吾姑蘇我纏西 『How_to_ability』―序文より
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世界で初めて『異能力者』が確認されてから早数十年。
ある時期はその異能を用いての戦争が相次いで、混沌としていた時代もあったそうだがそれも既に昔の話。現在では世界で『能力者を戦争の道具にしてはいけない』というルールが設けられている。
これにより、世界ではいつもの様に銃火器を用いての戦争が主流となっている。
そもそも、なぜ異能力者達は戦場に立たされたのであろうか。政府が異能力者を戦争の道具にするため?それとも、自国の勝利のために自ら志願した?
正確にはそうではない、後者が近いといえば近いが、自ら志願した理由が全く違う。彼らは国のためではなく、あくまで自分のために戦争に加担しようとしたのだ。
混沌としていた時代、突如現れた異能力者を研究するため機関がある恐ろしい発見をした。
なんと、能力を発現してから一定期間経った異能力者(重能力者という)の細胞が、それ以前から変異することが判明したのだ。なぜ変異するのかは数十年経った現在でも解明はされていないが、異能力者は必ず重能力者へと転移するということが世界での常識となった。
異能力者と重能力者を分類させる細胞、世間では能細胞と呼ばれるものだのだが、その細胞にはある特徴が存在した。
それは『一定期間戦わないで生活をしていくと、細胞が徐々に死滅していく』という恐ろしいものであった。
一定期間というのは人それぞれなのだが、長い人では4年に一度、短い人では1日に一度、戦闘を行わなければいけない枷がはめられてしまうのである。そしてその期間というものは、重能力者だけが確認することができるのだそうだ。
現在でも機関では能細胞の研究が行われているが、細胞が死滅するまでの日数や、どこまでが戦いであるかという定義、能細胞が死滅する現象含めて、あらゆることが未だ謎に包まれているのだ。
ここで、先程のなぜに戻る。
なぜ、彼らは戦争に加担したのか。
言うまでもない、能細胞が原因である。彼らは本能で理解していたのだ。自分の中身がごっそり入れ替わっているのを。そして、自らの命の脆さを。
初期に発現した異能力者達は世界の戦地へ赴き、戦争へ介入した。それを訝しんだ研究者たちは原因を探るべく彼らの体の隅から隅まで調べた。そうして能細胞が見つかり、その恐ろしい現象を発見したのである。
能細胞の発見後、世界では能力者を戦争の道具にする動きが高まった。元々利用価値のありそうだった彼らに、軍に配属するための口実が出来上がったからである。
能力者は次々と戦火に身を投じ、生き死にが繰り広げられた。
そこから、能力者の人権を守るための運動が始まり、なんやかんやあったのだがそこは関係ないので割愛させてもらう。
とにかく、色々あった結果『能力者を戦争の道具にしない』というルールが作られたのである。
では、闘うことを制限された彼らはどうなってしまったのか?
この物語は、能力者と非能力者が共存する世界のほんの一部分である。