アレな話
俺の肩の上でモップが反対の肩にいる小猿に話しかける。
『なぁディーマン。そういや俺のアレ、どうした?』
小猿が首を傾げる。
「はて。アレとは何のことじゃ?」
モップが身振り手振りで説明を始める。
『ほら、アレだアレ。こう、ぶーんってキンキンしてポーンって飛んでいくやつ』
小猿が納得する。
「あーアレか。アレならヨセスタウンのあれじゃ。あれが持っている。名はなんじゃったか……」
『ヨセスタウンと言えば奴だな。あのキラキラした──』
「おーそいつじゃ」
『ん? そういや、アイツ名前なんつったっけ?』
「あれじゃろ? こう口がパクパクしたような感じの」
『そう、そいつだ。そいつが俺のアレを持ってんのか?』
「アレを何に使う気じゃ?」
『ほら、あれだ。東のずっと先に行った場所に例のアレがあるだろ。あれに使うんだ』
「おー例のアレか。アレをあれに使うのか?」
『お。わかってるじゃねぇか、ディーマン。アレをあれに使うんだ』
……。
今までずっと黙していた俺は、ようやく二人の会話に口を挟む。
結局、アレって何?
『……』
「……」
モップと小猿が俺に注目する。
肩の上で二人、不思議そうに顔を見合わせて。
『アレっつったら……アレだよな? なぁディーマン』
「うむ。こうキーンしてポンと飛んでブーンするやつじゃ」
『いや違うぞ、ディーマン。こう、ぶーんってキンキンしてポーンって飛んでいくやつだ』
「じゃから、こうキーンしてポンと飛んでブーンするやつじゃろ?」
『違う、こう、ぶーんってキンキンしてポーンって飛んでいくやつだ』
「じゃから、こうキーンしてポンと飛んでブーンするやつじゃろ?」
俺は割り込むように口を挟んだ。
いや、もうなんでもいいよ。そういう物があるんだなで覚えとくから。