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千年後の勇者召喚で再会した初恋の少女、だが本当に世界を救ったのは俺だった  作者: 暁牡丹


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第6話 揺れる魂

### 第六話 揺れる魂


 水晶の光は、しばらく収まらなかった。


 部屋の中が白く染まり、まるで昼間の太陽が目の前で輝いているような眩しさだった。


「ちょ、ちょっと待ってください……!」


 神官が慌てて声を上げる。


「一度、手を離してください!」


「え、あ、はいっ」


 唯愛が慌てて手を引いた。


 すると、水晶の光はゆっくりと弱まり、やがて透明な輝きへと戻っていく。


 だが――


 部屋の空気は、完全に変わっていた。


「……なに今の」


 風間彩葉がぽかんと口を開ける。


「光りすぎじゃない?」


「いや、それより」


 相沢恒一が神官を見た。


「その反応、普通じゃないですよね」


 神官の額にははっきりと汗が浮かんでいた。


「い、いえ……その……」


 言葉を濁す。


 明らかに動揺している。


 神官は何度も水晶を覗き込んだ。


 そこに浮かび上がる文字を見て、さらに顔色を変える。


「……信じられない」


 小さく呟いた。


「こんな反応……初めて見ました」


「え?」


 唯愛が不安そうに聞く。


「わ、私……何か変なんですか?」


「い、いえ」


 神官は慌てて首を振る。


「異常という意味ではありません。むしろその逆です」


「逆?」


 神官はゆっくり息を吐いた。


「非常に強い加護です」


 そして水晶を指差す。


「**太陽の加護**」


 その言葉に、勇者たちが一斉に顔を見合わせた。


「太陽って……」


「なんかすごそう」


「ゲームだと最上位スキルっぽいな」


 東堂が笑う。


「永久野、主人公じゃん」


「いやいや!」


 唯愛は慌てて手を振る。


「そんなのじゃないよ!」


 だが。


 神官は真剣な顔で続けた。


「太陽は、この世界において特別な象徴です」


 声を少し低くする。


「王権。神性。生命」


「そして――」


 一瞬言葉を止める。


「最も強い魔力の象徴」


 部屋が静まり返る。


 唯愛はただ戸惑っていた。


「……私、そんなの分からないです」


 小さく言う。


「普通の高校生です」


「……」


 神官は何か言いかけて、やめた。


 もう一度水晶を見る。


 そこに浮かんでいるもう一つの文字。


 


 **魂の共鳴**


 


 それは彼も見たことがない表示だった。


 


 ◇


 


 


 その頃。


 


 高天原城。


 


 玉座の間。


 


 タマモは、ゆっくりと目を開いた。


 


「……強い」


 


 胸の奥が、はっきりと震えていた。


 


 遠く。


 


 城の別棟。


 


 能力測定の場から、強い魔力の波動が届いている。


 


 太陽のような。


 


 暖かく、力強い魔力。


 


「やはり」


 


 タマモの指輪が、微かに光る。


 


 銀の指輪。


 


 内側に刻まれた文字。


 


 **タマモ**


 **トバネ**


 


「反応しておる」


 


 間違いない。


 


 魂が呼び合っている。


 


「トバネ……」


 


 名前を呟く。


 


 胸が苦しい。


 


 嬉しいはずなのに。


 


 なぜか怖かった。


 


「もし」


 


 もし彼女が思い出したら。


 


 千年前のことを。


 


 あの日のことを。


 


 最後の瞬間を。


 


 


 記憶が、ふいに蘇る。


 


 


 炎。


 


 崩れた大地。


 


 砕けた魔王の城。


 


 


 そして。


 


 


 自分の前に立った少女。


 


 


 ――タマモ。


 


 


 その声は、かすれていた。


 


 血に濡れた唇が、小さく動く。


 


 


 ――ごめんね、タマモ。


 


 


 弱々しい声。


 


 


 ――守られるのは、私の方だったのに。


 


 


 タマモは叫んだ。


 


「喋るな!」


 


「今治す!」


 


 震える手で魔法を発動する。


 


 何度も。


 


 何度も。


 


 だが。


 


 少女は、ゆっくり首を振った。


 


 


 ――ありがとう。


 


 


 その言葉と共に。


 


 


 トバネの手から、力が抜けた。


 


 


 ◇


 


 


 タマモは目を閉じた。


 


「……」


 


 千年前の記憶。


 


 今でも、はっきりと覚えている。


 


 忘れたことなど、一度もない。


 


「妾は……」


 


 小さく呟く。


 


「また同じことを繰り返すのかのう」


 


 


 ◇


 


 


 別棟の部屋。


 


 能力測定は続いていた。


 


 だが、先ほどの出来事のせいで空気が少し変わっている。


 


「……なあ」


 東堂が小声で言う。


「永久野、やっぱすごくね?」


「分かんないよ……」


 唯愛は苦笑する。


「私、魔法とか分からないし」


「でもさ」


 彩葉が笑う。


「光り方、完全に主人公だったよ」


「やめてよそれ」


 唯愛は少し困ったように笑った。


 だが。


 胸の奥の違和感は、まだ消えていなかった。


 


 あの女王。


 


 九尾王タマモ。


 


 顔は見えなかった。


 


 幻術の向こうで、姿はぼやけていた。


 


 それなのに。


 


「……なんでだろ」


 


 小さく呟く。


 


 心臓の奥が、まだ温かい。


 


 


 まるで。


 


 


 **誰かに再会したような気がしていた。**


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