どっちが召使だよ全く(満更でもない顔)
「とりあえず飯にするか、何食べる?」
「あーあ」
そうだった。喋れないし耳も聞こえないんだった。手話が分からないので、とりあえず治療出来ないか試してみる事にした。
「再生」
木魔法上級魔法である再生魔法。失われた臓器が再生するこの魔法をマリアに使ってみると、どうやら聴力が戻ったようだ。
「マリア?」
「あ!ああ!」
「マリア聞こえる?」
「う!」
「目は見える?」
「うー…」
彼女は瞼を開けてみるが、眼球があるのにも関わらず瞳孔が無い。再生魔法はもともと無かったものは再生出来ないので、視力の方は本当に生まれついての欠損のようだ。
「まあ聞こえるようになっただけマシだ。まずはご飯だ」
「あうう?」
「ご飯」
「ううん」
「ご飯」
「うはん」
「そそ、食べ物食べるぞ」
「う!」
自分の収納空間から鍋や油、自作の調味料などを取り出して、キッチンに並べていく。あの店でどんな飯を食わされていたか分からないが、いきなりヘビーな食事を食べても胃が辛いだろう。子供が好きそうなハチミツだらけのフレンチトーストでも作るか。
「ほい、これがフォーク、こっちがナイフ」
「うぉーく?あいふ?」
「そそ、だいぶ話せるようになってきたな…これも魔族特有の学習能力か?」
ゲーム本編でも10ターンまでに倒さないとそれまでに使用した魔法全てを学習して数倍の威力で使ってくる魔族ボスとかもいたな…おーこわ。最終的には瞬殺したけど。
「うーー!!うあ!うあ!」
まだ上手にフォークとナイフが使えないようで、ナイフを刺したり、フォークが飛んで行ったりしたが、どうにか口に運ぶ事は出来たようで、ふわふわのパンにあまあまのハチミツが美味しくて随分と年相応な笑みを浮かべていた。
「美味しい?」
「うあ!」
「そかそか、もう1枚食べる?」
「あう!」
最終的に彼女は8枚程食べ終えた後、うとうととし始めたので、清潔魔法で彼女の全身(歯も含む)を綺麗にした後、ひとまずは召使用の部屋に寝かせた。
「これが育児?…いや同い年だよな…???」
そう怪訝に思いつつも、自分の分のフレンチトーストを食べ終え、マリアに似合う服装を選びに服屋に行く事にした。
「おひさー」
「ナナシ様!お待ちしておりました!先月の春コーデ、王都の方でも大人気でしたよ。侯爵夫人様も大喜びで…」
「ありがとう、お金は」
「はいこちらに」
街で1番大きな服屋にやってきたナナシ。早速オーナーからデザイン代と材料代を貰い、自分の用事を告げた。
「親戚の娘と一緒に学校に行く事になったから、彼女向けの服装を見繕って欲しい」
「街のあの魔法学校ですか?」
「そうそう」
「卒業までご一緒?」
「そそ」
「外見は?」
「背丈は俺と同じくらいで、少し痩せ気味、金髪に結構美少女だと思う」
「分かりました。少々お待ちください」
オーナーは店長だけでなく、その他の従業員3人も呼んで店中倉庫中からマリアのために服を探しに行ったようだ。その間の暇なので俺は待合スペースで座ってる事にした。
「春一番の紅茶です」
「あっ、ありがとうございます」
10分後、オーナー含む4人はハンガーに掛かった大量の服を持ってきた。
「ナナシ様、どうぞ、お好きな物を持っていってください。念のためですが、下着類もありますので」
「では遠慮なく全部貰っても?」
「勿論です!毎シーズン物凄い稼がせて貰っているので!ナナシ様のナナシ様のご家族もご親戚様も、いるでも店にお越しください!これ、特注の会員証です。何かありましたら、私の系列店にいつでもお越しください。既に私から話はつけておりますので」
「え?そんなに儲かってるのか?」
「王都の南に今月133号店が開店しました」
「多過ぎるだろ…」
「これもナナシ様のお陰です」
「次に狙ってるのは?」
「王家御用達の…ブランドですね」
「あー、…ええと…」
設定資料集を必死に思い出す。確か第二王子の王妃と第四王女が…
「ピンク色のドレス…それからローズマリーの香水…第二王子の王妃と第四王女が薔薇好きで、特にピンク色に免疫がない。最近は東方の桜に目が行きがちだけど、まだまだピンクローズも捨てたものじゃないよ」
「そうなんですね!ありがとうございますナナシ様!すぐに取り掛かります」
「香水の方は…」
「いつものようにコラボで」
「オッケ、取れるよ、トップ」
「頑張ります!」
服を全て収納し、近くのスーパーで野菜や果物を買い込み、親父の知り合いの狩人がやってる肉屋で肉を買い込み、再び寮に戻る事にした。本当はスーパーマーケットも馬車用の駐車場も先程のブランド服屋も全て王都にしかないような規模の商店だが、ナナシが各所に大量の香水や洋服デザイン、石鹸に食事のレシピなどなど、更には造船に貿易、更には魔物狩りや鉱石の新しい使い道などなど、辺境と言う地域的なデメリットにも負けず、色々な方法を使って一財産を築き上げた。勿論基本的にアイデア代や売り上げの数割などあまりに経営には携わらず、あくまで裏方として内密に、だが。
「そもそもこんな子供が発案者とか言っても誰も信じてくれないしな」
寮へ戻る道を飛行魔法で飛びながらナナシはそう1人呟いた。




