奴隷とか良くないと思うんですよ、僕は買いますけど
「奴隷を買いに来た。頑丈で戦える奴だ」
「お初にお目にかかります。光の反逆者様」
店の最奥に行き、赤く重厚なカーテンを開けると、金で派手に装飾された部屋の中央の椅子に、美人なエルフとダークエルフを侍らせた仕立ての良い服装を着た中年の男性が座っていた。そしてその名前で呼ばれたのは初めてだ。
「ナナシだ。ナナシでいい」
「噂通り、6歳とは思えない」
「失敬な」
「息を吐くように輩を燃やし、私の門番にも臆する事無いその度胸。私のような店に来ていただいて光栄です」
その言葉と同時に男の後ろのカーテンからぞろぞろと首輪を付けられた自分と同じくらいの男女がぞろぞろと出てきた。
「子供か…」
「お気に召しませんか?」
「いや、そういう訳じゃ無いが…」
「お気に召さないようですね…他に何か要求は」
「そうだな、絶対に自分を裏切らない奴が良い」
「隷属魔法で…」
「心からだ」
「…なるほど、でしたら…」
「出来ればお前のような奴が良い」
「…?それはどう言う?」
「惚けるなよ?」
予想通り、目の前の男は何かしらのスキルを使って店の中を埋め尽くしたようだ。
「魔封じか」
「その通りです、初めて…ですか…人間にバレたのは」
侍らせていたエルフ達も、並んでいた奴隷候補達も奥に戻っていたようだ。
「さて、他に誰もいなくなったし、話を続けたい。俺は魔族の奴隷が欲しい。半魔でも良いし、純血でも構わない」
「…私達を突き出すつもりは無いと?」
「客だぞ俺…」
「失敬…貴方の反応は他の人間がすべき反応とは違ったので…」
「それで、いる?」
「魔族は団結します。純血を売るわけがありませんが、半魔なら問題ありません」
「いいのか?」
「純血至上主義が魔族ですから、半魔族は魔族内でも蔑まれています」
「そうなんだ」
設定資料集にも書いてあったが、驚いた顔をしておく。貴族も魔族も似たような物だな。
「アレを…」
男の側にいる従業員が部屋の奥に行くと、中から自分と同じくらいの、両角が折れた少女が出てきた。
「マリア・カレンティ。吸血魔族が人間に産ませた娘だ。いくつかの先天的な病気を抱えているが、こうして3年間死なずにここにいる」
「どんな病気だ?」
「簡単に言うと、目が見えない、耳が聞こえない」
「生活に不自由は?」
「魔族には周囲のマナを感知する魔法がある。特にマリアのマナロケーションは異様な程だ」
「ああ、あ?」
マリアと呼ばれた彼女が掠れた声を出している。
「どうやら君の溢れ出るマナを感知したようだ…少し…怯えている?」
「そうなのか?」
彼女の方を見ると、何やら水音も聞こえていた。
「失礼、彼女を」
「ああ、暫くここで待つよ」
まだ魔封じは解除してくれないようだ。数分後、先程とは違い、綺麗な服に着替えたマリアが出てきた。
「それで、いくら払えばいい?」
「ありがとうございます。お金は結構…ただし貴方の実力を試したい」
先程の門番と同じくらいかそれ以上に強そうな男が出てきた。
「解除」
強そうな男がそう言うと、人間の格好から一瞬で悪魔の姿に返信した。大きな山羊角に2mを超える筋肉質な体格、むしろ某ゲームのデーモンのような見た目だ。
「戦えと?」
「その通りです」
「ノックダウン」
デーモンらしき悪魔が動くより、先にそいつの下顎を全力でぶん殴る。
「ん…あっ…」
流石デーモン族、数秒意識を保ったようだが、直ぐにばたりと地面に倒れた。
「失礼しました。君の実力を試したかった。半魔とはいえ、魔族を連れ回すのはそれ相応の覚悟と実力が必要ですから。ではこちらへ、奴隷契約をします」
それと同時に魔封じの結界らしきものも消えたようだ。ふむ、魔封じ中でも演算が止まらなかったな…これは何かあるかも知れない。寮に戻ったら研究するか。
「血を一滴、彼女の胸元の隷属紋章に垂らしてください。針はこちら…」
「ん」
自らの指を躊躇いなく噛み、数滴マリアの胸元に垂らす。
「…ありがとうございます。以上で契約終了です」
「ありがとう、ではまた」
「こちら私の名刺になります。次回のご来店ではこちらを門番にお見せください。またのご来店、お待ちしております」
マリアの手を引いて、俺は店を出た。彼女にも飛行魔法を使い、そのまま寮へと飛んでいく。
「あー、ああ…」
初めて空を飛ぶのか、少し怯えているようだ。彼女は躊躇いなく抱きついてくる。
「なんでこんなに懐いてるんやろ…」
奴隷契約したとはいえ、こんなに躊躇いもなく他人の腹に抱き着けるものなのか…?まあいいや
20分後、再び寮の部屋の前に戻ってきたのでドアノブを軽く握ると、ドアに認証魔法の魔法陣が出現したので、魔法陣を軽く見つめると、ガチャリと扉が開いた。顔面認証とかハイテクだな本当に。




