違う意味の洗礼だろこれ
「聖水が…蒸発して行く…???」
齢3歳になり、予定通り今日は街の他の子供達と一緒に街で1番大きな教会で洗礼を受けている。やはりエロゲ世界のお陰か、他の街の子も美男美女揃い。生前の自分の顔面偏差値と言ったら、友人には「死後出土したらハニワと土偶の間に展示されるレベル」と言う、どうリアクションすれば良いか分からない評価を下された事がある。さてそんな事より問題なのは、今現在洗礼を受けている俺だが、どうやら俺の頭上に垂らした洗礼用の聖水が蒸発しているようだ。この現象は基本魔族にしか起こらないが、もし俺が魔族ならもがき苦しむはずだ。それに両親も洗礼を済ませており、教会の定期検査を問題無く通過している。
「もしかすると、堕天使様が?」
親父は怯えた顔で教会の奥に駆け出し、コルクで栓をした小さな小瓶を取り出した。うわぁすっごい不安。と言うかなんか黒く無い?あっ冷たっ…
「あああ、やっぱり…この子は堕天使様の使い人…世の中に光を齎すものであり、不条理に抗う反逆者でもある」
えと、それは喜んでいいの?悲しむべきなの?周囲の状況を確認していると、どよどよがやがやしているが、どうやら俺と母親に敵意が向けられる様子はない。むしろ気の毒だとか…これから大変だとか…なんで?
設定資料集には堕天使についてはあまり書かれておらず、主人公やヒロイン達は有名な神様や天使、ミカエルやガブリエルなどなどから加護を受け取ったり力を授かったりする。堕天使、つまりはルシファーの事を指しているのだろうが、ゲーム本編には特に出てこなかったし、設定資料集にも信仰者は第二次宗教戦争で死絶したとしか記載されておらず、具体的な活動やその他加護の効果についてもさっぱり不明…
つまり洗礼は上手くいったけど堕天使ルシファーの使い人である事が発覚した上、なんか周囲の反応的にこれから苦労する羽目になるって事?心配になって母親の方を見てみると、彼女は泣きそうな顔でこちらを見ていた。
帰宅後、自分の母親に教会で起きた事について詳しく聞いてみる事にした。
「ナナシ、今日教会で起きた事は、将来貴方が心から信頼出来る人を見つけるまで、誰にも言っちゃいけないわ」
「なんで?」
「堕天使ルシファー様の使い人。それは無数の人々に光を齎す者であり、苦難を撃ち破る人でもあり、圧政と重圧に歯向かう反逆者でもあるの」
「つまり?」
「つまり貴方は王権の敵であり、支配者達の最大の敵とも言えるわ」
「えぇ…そう言う?」
「そうよ、だから将来絶対公務員にならないで、貴方3日でクビになるわ
「影響がデカ過ぎるだろ」
「光の反逆者とはそう言うことよ」
なるほどね。要するに革命者的な使命が発覚しちゃった訳だ。はぁ〜通りでみんなあんな可哀想な目で俺らの事見てたんだ。まあ要するに高官にはなれないと言う事だね。まあそんなつもり元々無いから別にいいんだけど、将来設計的に最終的には主人公達のいる学園に入ってストーリーの成り行きを見届けた後は流浪の魔法使いとしてこの世界を旅して回るつもりだから、特に定職に着く予定も、成り上がる予定も無いので問題ないな。
母親にはきちんと心から信頼出来る仲間と家族以外には絶対に口外しない事を約束し、翌日の朝、街の人々が自分達に対する態度の変化を確認するためにもいつものように肉と回復薬と石鹸を売りに行った。
「頑張れよ、これ、いつもより多めに渡しとくな」
すげぇみんなに気を遣われるようになった。




