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森の外へ

「……」


 その剣士は、ゆっくりと目を覚ます。


「あ、気が付いた⁉」


 ケイは剣士が目を覚ますとホッとした表情を見せた。


「君が手当してくれたのか……?」


 その剣士は驚いている様子だった。体のケガは完全に消え、痛みもない。それどころか、ボロボロだった服やマント、刃こぼれしていた剣ですら、新品のようにきれいになっていた。


「手当って言うか、そこの泉の水をかけたら治ったって言うか……。不思議だよねー、オレもびっくり」


 ケイは苦笑いしつつ、その剣士の方を見る。サラサラとした銀髪、赤い眼。ケイより年上なのを考慮しても背はずっと高く、剣士のような恰好もそうだが、整った顔立ちからして別の世界の人だと思わせた。


「とりあえず、元気になって良かったよ。オレの名前はケイ、そっちの名前は?」


「俺はシェル。ケイ……だったか。魔物を退治してくれたこと、本当に感謝する」


「え、えへへ。そお?」


 苦笑いから一変、ケイはニヤニヤと笑った。感謝の言葉をかけられて嬉しいやら、少し気恥ずかしいやら。


「ところでここは? 何て名前の森だ?」


「あー。オレもよく分からない。オレもいつの間にかここにいたから」


「いつの間にか?」


「あ……」


 ケイは少し、言葉に詰まる。


「嘘だと思ってもらっていいけどさ、この森に来る前は、別の世界から来た感じ? こう、ここじゃない所って言うかー」


 そして、自分が転生してきたことをあっさりと話した。上手い嘘も思いつかず、別に嘘だと思われた所で大きく困ることもないと思ったからだ。


「……そうか」


 しかもシェルは、少し驚いた表情はしたものの、割とあっさりと受け入れた。


「ええ⁉ 信じちゃうの」


 むしろケイの方が驚いているくらいだ。


「そのぐらいの不可思議なことなら。仮に嘘やからかいだとして、実害はなさそうだ」


「いやまあそうなんだけどさ……。じゃあ逆に、シェルはどうしてここに来たの? 今まで出口なんて見つけられなかったし、その前に急に現れたし」


「俺は、魔法で……」


「魔法⁉ やっぱこの世界ってそういうのがあるの⁉ いやあるか。オレだってビームやバリア出せるし、角の生えたウサギもいるし、火を出す花があるんだもん。ロマンだなー」


 急にケイのテンションが上がる。ビームやバリアも一応魔法だと思っていたが、それ以外のものも目の当たりにできたと喜んでいるのだ。


「じゃあさ、もう一回見せて!」


「俺自身はほぼ魔法の類が使えない。このワープも、魔力を込めた瓶に入っていた力で来た」


 そう言ってシェルは空の瓶を取り出す。何の変哲もない、蓋がコルクの普通の瓶だった。


「ケイ、さっき出口なんて見つけられなかったと言っていたな」


「うん。ずっと探索してるけど、ずっと森」


「そう……か」


 シェルはため息をつく。


「シェルはさ、元いた所に戻りたいの?」


「できれば、な。だが、出口のない森が存在して、そこに来てしまったのなら、仕方ない」


「……よし。こういう時は」


 ケイは立ち上がり、泉の方に近づく。


「女神様、シェルを元いた所に帰れる方法を教えてください」


 そして文字通り、困った時の神頼みをした。すると泉から光が放たれる。


(いや本当に神頼みが通用するとは……)


そして女神が姿を現した。シェルは驚いている様子だが、ケイは嬉しそうな顔をする。女神は変わらず何も言わないが、その右手には薄緑色の勾玉が付いたペンダントがあった。それをケイに手渡しする。ケイがそれを受け取ると、勾玉の部分が光り、その光が線となって、遠くの方に伸びていった。


「この光にそって進めばいい感じ?」


 ケイは女神に尋ねるも返事はなく、また光を放って、消えてしまった。


「他に手がかりもないし、何もしないよりマシでしょ。行こう」


 ケイはシェルの方を振り向いた。そしてペンダントのヒモの部分を強く握りしめる。


「いいのか?」


 シェルは不思議そうに尋ねる。


「もちろん! オレもこの森から出られるなら出てみたいし、それにこの世界には魔法とかがいっぱいあるんでしょ。楽しみ!」


 しかしケイとしては、助けられる手段があるなら助けたいし、自分自身このファンタジーな世界をもっと見てみたいと思っているのだ。


「すまないな。ならその前にこの泉の水を汲んでいこうか。何でも治せる水、あれば心強い」


「確かに。ひょうたんみたいなので汲めるし。ところで、シェルのいた場所の名前って?」


「『レイセ』という町だ」


「よし、じゃあレイセに向けて出発だ!」


 それからケイとシェルはこの森を抜けるための準備を始め、それが終わると、勾玉の放つ光に沿って進んでいった。




ケイが何日もかけて歩いてもあまり景色の変わらない森。しかし勾玉の光に従って歩くと、1時間もしないうちに、今まで見たことのないものが姿を現した。


「ここがこの森の出口かな」


 木や岩で囲まれた、人1人分なら通れそうなほら穴を発見する。光も、その穴の中に吸い込まれていた。ケイが先に中に入ってみるが、少しひんやりとするくらいで、崩れてきたりする様子も見られない。シェルも一緒に突き進み、入り口から離れれば離れるほど、暗さも増していく。そこでケイが光の玉を出し、明かり代わりにした。


「そういえばさ」


 道の途中、ふとケイは口を開いた。


「さっきの死神みたいな、ガイコツみたいな奴、何?」


「魔物だ。ああいうのが大量に現れてな……」


「へー、じゃああんな感じのが、他にもいっぱいいるってこと?」


「そうだな」


(まさに、敵って感じの外見してたし、これからそういうのとも戦えるのかな)


 ケイはその話を聞いて、ウキウキしていた。





 そんな会話をしつつ、2人はほら穴を歩き続けた。ケイは元より疲れを感じにくく、シェルも平気そうな表情をしていたのでそこまで長くはないのだろう、前方に明かりが見えてくる。


「やった出口!」


 ケイは駆け出して、外に出る。シェルもその後を追った。



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