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お前がいてくれるなら

 ケイとミューズは再びモンディーユに戻ってきた。そこでは未来予知通り、ゾネスとメインが待っていた。そして大量に現れる綿。


「その綿は一つ目の魔物が出してる。そいつを見つけて叩いて!」


そう言うケイの表情は険しい。若干怒鳴っているようにも聞こえた。


「は、いきなり何……」


「ゴメン!」


 ゾネスが言い終わる前にケイは謝り、その場から姿を消してしまう。


「何だあの小僧。お姫まで置いて行って……」


「ゾネス、ケイのこと信じてあげて」


 腹を立てるゾネスに対し、ミューズは諭すように言う。


「私も援護するわ。だからお願い」


 ミューズは両手を胸の前で合わせる。


「じゃあ、私、ミュウを守る……」


「メインも、一つ目の魔物探しに協力して。大丈夫、私は信じてる。ゾネスもメインも。それに、ケイも女神も」


「「……?」」


 ゾネスとメインはよく分からないという表情をする。それでもミューズが歌い出すと力がみなぎる気がして、戦闘モードに戻る。心なしか感覚も研ぎ澄まされ、別の何かの気配を感じとれた。


「しゃあねえ、お姫の頼みだやるぞメイン!」


「ミュウのため、やる!」


 ゾネスとメインは、綿に邪魔をされながらも辺りを探す。ミューズも歌いながら、その気配を察知しようとしていた。







――一方、レイセのすぐそばにて。少し時間はさかのぼるが、空が真っ黒な雲に覆われ、魔神が姿を現した。そして大量のモンスターをけしかけてくる。町の結界の効果か、直接町中に姿を現すことはなかったが、それでも町のすぐそばに大勢いる。その場にいた冒険者や兵士はすぐさま外のモンスターを倒しに向かったが、数も多く、そう簡単にはいかなかった。その上、3体の魔物まで現れたのだ。

1体は体長2mくらいの人のような姿形をしていている魔物。両手にはかぎ爪が付けられており、その上すばしっこい。

もう1体は、10mはあろうか巨大で、ヘドロのようにドロドロとした体を有している魔物。そのドロドロした体を触手のように伸ばすことができ、瞬時にそれを鋼のごとく硬化させることもできる。

そして最後の1体は上半身が牛のような見た目をしており、一言で言うならミノタウルスのような魔物。全長はヘドロの魔物と同じくらいの巨体で、大型の斧を持っている。動きは速いとは言い難いが、巨大な分その一歩で一気に詰め寄られてしまう。しかもその斧の威力は岩に当たれば一瞬で真っ二つ、地面に当たっても地割れのようなヒビが入る。むしろ残っていたモンスターの大半は、この斧の魔物の攻撃をくらってやられたようなものだ。モンスターとの戦いで疲弊しきっていた人々が対抗できる相手ではなかった。


「俺が時間稼ぎする。だから無事な者は、負傷者を町に運んで手当てしてくれ」


 そんな中、この場では比較的ダメージの少ないシェルがその場にいた人々にそう言った。そして、3体に対して剣を向ける。

 まずかぎ爪の魔物が四方八方に飛び跳ね、目にも止まらぬ速さでシェルに切りかかってくる。そこでシェルは、左手でマントを外し、前方に振る。するとかぎ爪の魔物の動きを捕えることができた。シェルは右手で強く握りしめた剣で切りかかる。


「ギャアアアア」


 かぎ爪の魔物は悲鳴を上げて倒れる。すぐさまシェルはマントを付けなおした。


(あと2体……)


 そして今度は斧を持った魔物に狙いを定めようとしたが、いつの間にか周りには無数の触手が発生しており、行く手を阻む。剣で切りかかるも、柔らかい触手に食い込み切断できなかった。そうこうしているうちに、斧を持った魔物が両腕を上げているのが見えてくる。それに気づいたシェルは剣を触手から抜き取り横に避けた。振り下ろされた斧は触手ごと破壊していく。シェルは間一髪避けて直撃はまぬがれたが、衝撃波で飛ばされてしまう。身に着けていたマントがクッション代わりになり地面に叩きつけられることなく立ち上がれたが、飛ばされた先には、倒したはずのかぎ爪の魔物が立っていた。かぎ爪の魔物は正面から襲ってくる。シェルはそれを剣で受け止めて体勢を立て直そうとした。しかし、足元に違和感を覚える。あのヘドロのような魔物の触手が足にからみつき、硬化していた。その場から、一歩も踏み出せそうにない。

 目の前のかぎ爪を持った魔物の攻撃は止まない。ドシンドシンと、斧を持った魔物の足音が聞こえる。ヘドロの魔物の触手のせいで身動きが取れない。


(あの技をするしか……)


 シェルの頭をよぎったのは、自分の命と引き換えに、辺り一面を焼野原に変える剣技。


(もうみんな、避難できたのか? いや、この技自体が町に被害を出す可能性もある。なら……)


他の者は既に町に戻っており、今この場にはシェルと3体の魔物しかいない。しかしヘドロの魔物の触手のせいで周りの様子がよく見えなかった。そしてシェルは、ケイの魔力が込められた瓶を取り出した――はずだった。


 ほんの一瞬、シェルの隣を何かが通りすぎ、瓶を奪っていく。かぎ爪の魔物かとシェルは思ったが、その瓶を奪ったのはもっと小さい存在だった。


「ケイ……⁉」


 そこにいたのは、瓶を右手に持ったケイだった。シェルはケイに声をかけようとする。


「……」


 しかしその前にケイは、左手でシェル目がけてビームを打つ。


「ギャアアアア!」


 いや、正確にはシェルのそばにいたかぎ爪の魔物に向けていた。ケイはかぎ爪の魔物をビームで吹き飛ばすと、再度シェルに近づく。そして何かをシェルに渡し、すぐさま方向を変えた。今度は斧の魔物に手を向け、ビームを放つ。しかし今回はヘドロの魔物の触手に遮られてしまった。それでもケイは連続でビームを打ち続けると、触手を貫通した。だがその間に斧の魔物は逃げてしまう。ケイはヘドロの魔物を睨みつけ、本体の方に特大のビームを打ち続ける。少しずつ体に穴が空いていくが、今度は倒したはずのかぎ爪の魔物に背後からぶつかられ、ビームが中断してしまった。今度はかぎ爪の魔物の方を睨んで――、


「落ち着け!」


 すると、シェルはケイの肩をひっぱり、呼び止めた。さっきケイが渡したのは、泉の水が入ったひょうたんだ。シェルはそれで回復し、足元の硬化した触手も剣で壊したのだ。


「恐らくだがこいつらは1体ずつ倒してもすぐ復活する。3体同時に倒さないといけないんだ。分かるか?」


 シェルの言う通り、かぎ爪の魔物はもちろん、穴が空いていたはずのヘドロの魔物も、元通りになっている。


「……」


 しかしケイは目を伏せ、全く反応しようとしない。


「俺があいつら3体を一か所に誘導する。ケイはビームで奴らを一網打尽にしてくれ」


 ケイがそばにいる以上あの剣技は使えない。そもそも魔力の込めた瓶をケイに取られバリアも出せない今、別の方法をシェルは考える。


「……」


 ケイは変わらず何も話さず、代わりに瓶の蓋を開け、シェルに近づける。するとシェルの体が、その魔法の光で包まれた。


「……」


 ケイは変わらず何も言いはしないが、何となく話は聞いているように感じられた。


「頼むぞ」


 そしてシェルは斧の魔物の所へ駆け寄ろうとした。


(体が軽い)


 ケイの魔法の効果だろうか、電光石火のごとく駆け寄って間合いを詰める。


「アブソープション!」


 さらに力を溜める必要もなく、魔力を帯びた剣で斧の魔物を切りつける。この技は、レインのムチと同じく相手の力を奪うものだ。


「グアアアア!」


 すると斧の魔物はうめき声をあげる。シェルが何回も切りつけ、ヘドロの魔物の方に誘導し、最後はヘドロの魔物目がけて倒れてしまう。そしてシェルの剣は、青白く光り出していた。


(これなら……)


 そしてその剣で、ヘドロの魔物に襲い掛かる。相手は2本の触手を自身の体の前に伸ばし、それを大きな壁として広げる。


「リリース!」


だがシェルはそのまま壁につっこみ、剣で突きをする。すると剣はその壁に突き刺さり、青白い光が放出された。今度は得た力を自分の力にする技だ。


「グオオオオ!」


 ヘドロの魔物は、その攻撃で苦しそうにする。触手も強度を失い、溶けて消えてしまった。


(ムチの能力をこうも簡単に模倣できるとは。ケイの魔力のおかげか。詠唱もなく、使った時の反動もない)


 シェル自身も、自分の一連の動きに驚いていた。すると、頭上から鈍い音が聞こえた。残りのかぎ爪の魔物が襲い掛かろうとしていたのだ。しかし、薄い透明な壁――ケイのバリアで簡単にはじかれてしまっている。そしてシェルが剣をふるうと同時にバリアは消え、


「ワールウィンド!」


竜巻を使って、かぎ爪の魔物をヘドロの魔物がいる所まで吹っ飛ばした。


「今だ‼」


 シェルが叫ぶと、ケイは高く飛び上がり3体目掛けて両手からビームを放つ。そのビームはケイの手から離れると、魔物達以上の大きさになった。


「「「ギャアアアア‼」」」


3体は断末魔をあげ、少しずつ砂になって消えていく。そのうちヘドロの魔物がシェルの方に触手を伸ばした。せめて道連れにしようと思ったのだろう。しかし一瞬で、レーザー光線のように細い光で、切り落されてしまった。ケイが大型ビームのほんの一部を、別の方向に放出させていたのだ。その時のケイの目つきは、今までしたことのないくらい、冷たく鋭いものだった。




 そして3体の魔物は、跡形もなく消えてしまう。シェルを覆っていた魔力の光も消え、ケイのビームも止まった。


「やったなケイ、いつの間に強化魔法まで……」


 シェルはケイの方に駆け寄る。







「……う」


 するとケイは、目に大粒の涙を溜めていた。


「怖かった……」


 ケイは涙をこらえながら言う。


(怖い?)


 今まで様々なモンスターや魔物の戦ってきたのに今更何を、とシェルは思った。


「怖かった、怖かったんだから……」


 しかし、声を震わせて話しているケイを見て指摘することはできず、


「大丈夫だ。だから泣くなって……」


 別の言葉をかけた。


「そうだよ泣いてる場合じゃないんだよ!」


 すると突然、ケイは大声で叫びだした。そしてポーチに入れていた、泉の水が入ったひょうたん4つをシェルに押し付けた。


「それで町の人達の手当して!」


「わ、分かったが、急にどうした……」


 ケイのいきなりの変化に、シェルは若干ついていけていない。


「本当は5本で丁度だったんだけど、うまく節約しながら使って、いい⁉」


 おまけに会話が成立していない。


「……ハア、分かった。詳しいことは後で聞く」


 ただこの反応にも理由があるのだろうと考え、シェルはうなずいた。


「絶対に、後で、ね……」


 ケイもうつむきながら言い、自身のワープ魔法で移動しようとする。


「……あ」


 だが、その前に何か思い出したような表情をした。


「シェル、少し知恵を貸してほしいんだけど……」


(今度は何なんだ一体)


 シェルはそう思いつつ、ケイの言葉に耳を傾ける。






――「魔法は、今まで見たりやったりしたことならある程度はできると思う」


「そうか、それなら――」


 シェルは何かをケイに伝える。ケイもうなずきながら聞いていた。



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