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モンディーユという山

メインやケイの速さでも、山にたどり着くまで数日かかった。そしてようやくふもとに到着する。モンディーユは遠くから見ても灰色だが、現地に着けば草木があまり生えていない、いわゆるはげ山だった。そして今、4人の目の前にはローブを被った魔物が複数体いた。しかも、氷を飛ばしたり、地面から壁を作ったりと、様々な魔法を操る。すると、メインの背中にいたミューズが歌を歌う。その途端、魔物の動きが鈍くなった。


「シャア!」


 メインは炎を口から吐いて、飛んできた氷を解かす。そしてミューズを乗せたまま、魔物を爪で切り裂いていった。


「うらあ!」


 ゾネスも拳で土の壁を破壊し、そのまま魔物に殴りかかる。


「はい一掃!」


 もちろんケイも、ビームを一気に複数個所に打って、魔物を蹴散らしていく。


(何かいつもより威力が……)


 しかも、ビームの破壊力が増している気がした。





――辺りもだいぶ暗くなってきた頃。ゴロゴロという音が空から聞こえ、次の瞬間雷が落ちてきた。その雷は、この山では数少ない草に当たり、燃やしてしまう。


「オレがバリア張るから、ここら辺で休まない?」


 ケイはそう言って、広範囲にバリアを張る。他の3人もうなずき、今日はここで野宿することになった。


 バリアもあって雷は怖くはないが、ケイは干し肉をかじりながらもあることが気になっていた。


「何で雷は落ちるのに、雨は降らないの?」


 雷は大雨とセットという認識が、ケイにはあるのだ。


「そんなの、雨が降ったら火が起こせないだろうが」


 するとゾネスは「何言ってんだ」と言わんばかりの表情でそう答えた。ここでケイは、シェルから聞いた話を思い出す。


(基本的に、どこにいても火は使えるようになるって言ってたもんな。この山では雷がそうなのか。てかメインも火を吐くし、本当にどこでも火が手に入るんだな)


「そんなに火が起こるのが珍しいのか?」


「いや、オレがいた世界じゃここまで当たり前に自然発生するイメージがなくてさ。こういう外で火おこしする時は、それ用の道具を使うみたいだし。まあ、使ったことないけど」


「は、オレがいた世界?」


 ゾネスはさっきよりもっと意味がわからないと言いたげな表情をする。


「あれ、言ってなかったっけ? オレは異世界から来たんだーって」


 ケイはシェルに言った時と比べて、あっさりと告げた。この世界の人なら案外簡単に受け入れてくれるのかもと思ったのだ。


「なんだそりゃ」


 しかしゾネスはピンとこない様子。


「異世界、ありえない」


 何ならその会話を聞いていたメインにすら、そう言われてしまった。


(でかくてしゃべって変身して火を吐く猫にありえない言われた)


 ファンタジー要素にあふれたメインにまで言われ、ケイはショックを受ける。


「私はそうなのかなって思ってた。ケイ、不思議な感じがするから」


唯一、ミューズは受け入れてくれた。


「元々こんなに火が発生する世界ではなかったけれど、火の神が、他の水・風・土の神と比べて自然界に自分の力がないって騒いだから、今のようになったって言い伝えもあるくらいだもの。もしかしたらどこでも火が手に入ることの方が、不思議なのかもね」


 さらに、ケイの疑問にまで答えてくれる。


「お姫が言うなら、まあ、そうか……」


「ミュウの言うこと、正しい」


 ゾネスとメインも、ミューズの話であればすんなりと受け入れていた。


「あとさ、神様ってやっぱりこの世界では実在するものなんだよな?」


そして、度々出てくる「神」という存在も、ケイは気になっていた。


「当たり前だろ? アタイの故郷じゃ神と一緒に酒盛りすんぞ」


 それに対し、ゾネスはそう答える。


「へえ、身近な存在なんだ」


「まあな。で、そんなうちの神も故郷も危なくなってた時に救ってくれたのが、お姫ってわけ」


「救う? どうやって?」


「歌だよ。お姫の歌は、癒しの力もあるんだ」


 ゾネスの話によればミューズの歌には魔法以上の凄い力があり、時にどんな苦痛も和らげる癒しの力、自分の限界以上の力が出せる強化の力、相手の力を封じ込める封印の力等、色々あるようだ。


「そんなお姫に、アタイは忠誠を誓っているわけだ」


「すごいなー。メインもそんな感じなの?」


 ケイは、ミューズにくっついているメインに声をかける。


「わたし、記憶ある時から、ミュウといた。ミュウ、暖かい、好き」


 メインはそう言って、ミューズに頬ずりをする。


「ありがとうメイン。私もよ」


 ミューズもメインの頭を優しくなでた。


「お、お姫、アタイは⁉」


 すると、ゾネスはズイッとミューズに近づいた。


「もちろんゾネスも大好きよ。とっても頼れる私の大切な人」


「いやー、あはは……」


 そう言われ、ゾネスは照れていた。


「気持ち悪い」


 すると、メインがボソッと吐き出す。


「んだと猫ふぜいが!」


 そしてまた、ケンカになっていた。




次の日も一行は山の頂上を目指す。雷はもう降ってこないが、魔法を使う魔物の数はどんどん増えていった。しかも使ってくる魔法が、仲間同士の回復や速度上昇等、バフのようなものも増えてきている。そんな強化された魔物達に対しても、ゾネスは殴って蹴って、メインは引っかいて火で攻撃して、ケイはビームで攻撃バリアで防御していく。こちらもミューズの歌のおかげで、火力が上がっていた。


(やっぱ戦闘なら、バフもあるといいよなー。戦略の幅が広がるのってロマンだもんな)


 ケイは戦いつつも、そんなことを考えていた。




 さて、そんな山登りと魔物との戦いに明け暮れている中、複数の魔物の中に、ケイが見覚えのある存在がいた。ローブを被ったガイコツ、泉のある森に急に現れた魔物とそっくりだっだ。

 すると、魔物のうち1体が、空に向かって手をかざす。空は一気に分厚い雲に覆われ、辺りは暗くなった。その途端、ガイコツの魔物は持っていた鎌を高速で回していった。


「くっ!」


 前線で戦っていたゾネスはその鎌を右腕にくらう。するとゾネスはその場で倒れこんでしまった。


「ニャア!」


 すかさずメインがゾネスを拾い上げ、そのままガイコツに炎攻撃をしかける。しかし、ガイコツの魔物にはあまりきいていなかった。しかも他の魔物の回復魔法か、その傷すらもすぐに閉じてしまう。


(前に会ったガイコツよりも強い……。もしかして)


 ケイは、あることを思いついた。


「フラッシュ!」


 本当は掛け声の必要はないがそう言い、大きな光の玉を出す。空が雲で覆われ暗くなったとは思えないくらい、周りもよく見えるようになった。すると、心なしか鎌の動きが鈍くなる。その隙にケイはガイコツに対してビームを乱射した。回復する速度よりも早く攻撃し、10発目で完全に倒すことができた。ガイコツを倒せば、後の魔物はそんなに強くない。ケイのビームで事足りていた。


 魔物を撃退した後、ミューズの癒しの歌でゾネスも目を覚ます。


「ん、アタイは一体……」


「相手の魔法のせいかしら、気絶していたのよ。無事で良かった……」

 

ミューズはホッと胸をなでおろす。


「お姫にまで心配かけちまったか、申し訳ねえ。しかもまだ変だ、何か光って飛んでるもんが見える……」


 ゾネスはそう言って、目を細める。フワフワと、まるで蛍のように小さな光が浮遊していた。


「あら、妖精」


 ミューズにも見えていたため、見間違いではないようだ。その「妖精」と呼ばれる小さな生き物は、確かにローズとよく似た羽も生えている。ミューズが手招きすると、妖精はこちらに飛んでくる。そして妖精は、ミューズの耳元で何かささやいた。


「墓地のうわさに出てくる、ガイコツの魔物にそっくり……?」


 ミューズは妖精から聞いた話を通訳する。どうやらローズと違い、あまり大きな声では話せないようだ。


「え、それ、詳しく聞かせてくれない?」


 その内容に、ケイは食いついた。シェルとあのガイコツの魔物が共に森にやって来たのと関係があるように思えたのだ。


「えっと……」


 ミューズは再び、妖精の話に耳を傾ける。その話をまとめるとこうだ。


とある墓地に大量に魔物が現れて、その原因が大きな墓が暴かれていたから。その下には地下に続く階段があり、多くの冒険者や町や村の兵士が討伐に向かった。しかしそこでの魔物はあまりに強く、多くの死傷者が出てしまったと。特にさっきのガイコツの魔物は倒せず、冒険者のうち1人が一緒にその場からいなくなって、事なきを得たと。


(多分その冒険者って、シェルのことだな……。で、多分あのガイコツ、暗い所だとすごく強くなるタイプなんだろうな)


 ケイはそう思い、妖精に問いかける。


「その冒険者がいなくなった後、他の人たちは大丈夫だったの?」


「えっと……、『生存者は皆脱出し、死者も遺体は回収できた』だって」


 ミューズが妖精の言葉を通訳する。その言葉に、ケイは安堵のため息をついた。


(ローズが散々言ってた、人手不足の原因ってそれかあ)


 ケイはそう思ったが、妖精の話によればその墓地での戦い前後にも、魔物やモンスターの大量発生はあったらしい。


「やはり、早く魔神の暴走を止めなければ……」


 ミューズは、とても辛そうな顔をする。


「そうだな。オレも頑張る!」


 それを見かねてか、ケイはミューズに近づき、力強くそう言った。


「ケイ……」


 ミューズはいきなり近づいてきたケイに少し驚く。しかし、嫌そうな表情ではない。


「あ、ごめん……」


 むしろケイの方が、バツが悪そうな顔をした。


「そうだそうだ、お姫にゃアタイが付いてる!」


「魔神、何とかしよう」


 ゾネスとメインもそう言い、一同は再び、山の頂上を目指すことにした。


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