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準備

 ――さて、ケイたちはレイセの入り口までやって来る。


「なあメイン。そんなでかい図体で町に入るわけにゃいかねえよなあ?」


 ゾネスは巨大な猫の姿をしているメインの方を見て、ニヤリと笑った。


「いや……」


 ケイは口を挟もうとする。町の中には獣人もいるし、結界も張ってあるから、逆に言えばどんな姿でも害を及ぼさない存在なら入れるのではないかと。


「ムグ」


 しかし、ゾネスに口を塞がれてしまう。


「……」


 メインは嫌そうな表情をした。次の瞬間、メインの体はシュルシュルと音を立てて小さくなり、おまけに二足歩行になって、姿も人型に変わっていって……。


「プハア! え、すご‼」


 ようやくゾネスの手が口から離れたケイは、驚きの声を上げる。巨大な猫の姿が一変、8歳くらいの少女のような姿に変わったのだ。しかも猫耳としっぽは健在で、町で見た獣人のような外見をしている。


「ブアハハハ! やっぱいいわその姿!」


 ゾネスはそんなメインを見て、大笑いしていた。


「フー‼」


 メインは顔を真っ赤にして怒り、ゾネスに襲い掛かろうとした。しかし体格差のせいで、ゾネスの腕1本で、動きを止められてしまっている。


「人型に変身できるのすごいけど、なんであんな小さい姿に?」


「メインの年が8歳だから……。自分の年齢が、人間のような姿になった時にも反映されるみたい」


 ミューズがこっそり説明してくれる。この光景はよくあることなのか、止めようとはしていなかった。むしろ、ほほ笑んでいるくらい。


(かわいい……)


 そんなミューズを見て、ケイは改めてかわいいと思うのだった。




 ――さて、メインも少女の姿になったところで、4人は町の中に入る。ミューズ、メイン、ゾネスは買い出しに向かい、ケイは宿に向かった。


「おねーさん! もうシェル出てっちゃった⁉」


 ケイは宿屋に入るや否や、すぐ受付の女性に声をかけた。


「ええ。あなた宛てへの伝言もあるわよ」


 受付の女性はメモ用紙を取り出す。


「『先に町長の所へ行ってくる。ケイの荷物はなさそうだから、そのままチェックアウトしていいぞ』だって」


「分かったありがとう!」


 その伝言を聞くとすぐ、ケイは出て行ってしまった。






ケイは再び走って、役所の前まで着く。そのまま事務所の方まで足を運んだ。そこにはグレン、ローズ、シェルで話をしていた。昨日手に入れたムチと盾も、テーブルの上に乗っている。


「このムチと盾の能力、応用できればいいが……」


「でも吸収の能力なんでしょ? アンタが魔法で使ったら、反動でミイラになっちゃうんじゃない?」


 丁度、シェルとローズが昨日のお宝について話しているようだった。


「シェルごめん、何も言わずにいなくなってさ」


 そんな2人に割って入るように、ケイは声をかける。


「ケイか。無事なら構わない」


 シェルは特に驚きもせず、そう答えた。


「うん。あとさ、これから護衛に行ってくる。モンディーユって山に行きたいって人達に頼まれた」


「そうか。気をつけてな」


「うん」


 ケイはコクっとうなずいた。


「そうだ。俺からも1つ頼み事をしてもいいか。これなんだが」


 そう言ってシェルは、空き瓶を取り出す。


「これにケイの魔力を込めてくれないか」


 どうやら、魔力を込められる瓶のようだ。


「それは構わないけど、どうすればいい?」


「蓋を開けて、取っ手口の所に手をかざし、魔力を込めるイメージをすればできるはずだ」


「分かった」


 シェルに言われた通りにケイはやってみた。すると瓶は金色の光で満ちていった。その光が逃げ出さないよう、満タンになったらすぐ蓋をし、シェルに渡す。


「助かる」


 シェルはそれを受け取った。


「何に使うの、それ?」


「ケイの魔力だからな、ケイのビームやバリアのようなものを出すのに使えるだろう」


「そりゃそうか!」


 ケイは笑ってそう答えた。


「ちょっとちょっとアンタ達! アタシとグレンそっちのけでなーにしゃべってんのよ!」


 すると、ローズが口を開いた。急に会話を遮断されて、怒り心頭の様子。


「町長は最初からしゃべってない気が……」


「うっさいわね小さいこと気にしない! あと本当にモンスターや魔物には気を付けなさいよ。あいつらわけわかんないから。本当にあいつらのせいで人手不足よ! 前だって、大人数で退治しにいって、どのくらいの兵士や冒険者が……」


「ローズ、そろそろ俺も話していいか?」


 ようやくグレンが口を開いた。


「ごめんごめん。さあグレンの話よ、聞きなさい!」


「ケイ、昨日はお疲れさん。調査と宝の報酬がこれだ。装備品の代金は引いてある」


 グレンは10センチくらいの棒、この世界の通貨である「ペン」を5枚置いた。


「これでいくらくらい?」


 ケイはペンを手に取る。透き通っていて、ガラスを触った時のように少しひんやりしていた。


「50000ペンだ」


(じゃあ、5万円か。安いのか高いのか、よく分からないや)


 ケイは早速、ドラゴンが刺繍されたポーチにペンを入れる。


「それで、携帯食でも買うといいさ。モンディーユへ行くなら、食料は現地調達するより持って行った方がいい」


「うん、分かった」


「ところでケイ、1つ確認なんだが」


 グレンはフウと息をつく。


「お前の方からは、宝が見つかってないんだよな?」


「あ……」


 そう言われ、ケイは思い出した。確かにものは出なかったが、変な光が出たこと。そしてその影響か、透明になれる魔法が使えたこと。もしかしたらこの光も、宝だったのではないかということ。


「えっと、謎の光がさ、現れてさ、オレがさ、触ったらさ、消えちゃってさ、もしかしたらさ、それがさ、お宝だったのかなー、なんてさ……」


 ケイの目は泳いでいる。


「何で文節読みになってんだ。それで、何か変化はあったか?」


「え、ええっと……。何か、別の魔法も使えるようになった……」


 ケイは冷や汗もかいてきた。もしかしたら、すごい力を勝手に取ってしまったのではないかと焦っているようだ。


「それなら、ケイが手に入れて良かったんじゃないか? 魔法は誰でも使えるものではないし、魔力強化ならなおさらだ」


 すると、シェルがそう言った。


「そもそも実態がないのだから、持って帰りようがない。そうですよね町長」


「ハア、ま、魔物退治したのと、無事に帰ってきたわけだしな。あと嘘つかなかっただけマシと思うか。もういいぞ、ケイ」


 グレンも、納得してくれたようだ。


(あー、良かった……)


 ケイは胸をなでおろす。


「シェルもサンキュ。じゃ!」


ケイはそう言い残して、役所を後にした。


「なんつーか、お前ら仲いいな」


 グレンはケイがいなくなった後、ボソッとそう呟いた。






 ――役所を出た後、ケイは露店を見て回る。


(携帯食だから、日持ちがして、軽いものがいいんだろうけど、どれがいいんだろ……)


 見たことのある食べ物も、見たことのない食べ物も混在していて、余計に何を買えばいいのか、分からなくなっていた。


「おい小僧、用事は済んだのか?」


 すると、ミューズ、ゾネス、メインの3人と合流する。ゾネスの両手には荷物がたくさんあった。


「うん。そっちもすごい荷物」


「まあな……っと!」


 ゾネスはこちらに来る途中、荷物のバランスを崩し落としそうになる。


「危ない!」


 ケイがとっさにそう言うと、その荷物は地面に落ちず、フワフワと空中に浮いていた。


「あ……できちゃった」


 ものを浮かせる魔法があったらいいのになーと思っていたケイだが、いざ実際にできると、少し戸惑ってしまった。


「ほー、これなら荷物持ちも楽に……」


 ゾネスも感心していたが、浮遊はすぐに終わってしまい、またゾネスが抱えることに。どうやら姿を消す魔法と同じく、長時間の使用はまだできないようだった。




 さて、ケイも3人からの助言を受け、干し肉や直方体のビスケットのようなものを購入し、ポーチに詰める。ポーチの大きさはケイの手のひらより少し大きいくらいだが、中に入っているものの大きさも量も、その何倍もありそうだった。そして全ての準備が整ったところで、再度町の外に出る。メインも少女の姿から猫の姿に戻った。


「よし、行くぜい!」


 荷物をリュックに詰めたゾネスはそれを背負い、メインの背中に乗る。ミューズも同じように乗っかった。


「いいなー。オレも乗ってみてもいい?」


 前回イノシシでは失敗し、ワシにも乗れなかったケイは、その光景をうらやましそうに見る。


「少しだけなら……」


 すると、メインがそう言った。


「あ、やっぱしゃべれるんだ! さすがファンタジー世界の猫」


 ケイは嬉しそうにしつつ、メインの背中に乗る。


「うわーふわっふわ!」


 白い毛並みは実際触ってみると、とても触り心地が良かった。


「無理、やっぱり重い」


 しかしメインの負担も大きいようだ。


「降りろ……ゾネス」


「なんでアタイが!」


「一番重い」


「しょーがねえだろ荷物もってんだから」


「荷物関係ない」


「まあまあ、オレが下りるからさ」


 また2人の言い争いが始まりそうだったので、ケイが進んで降りる。そして一行はようやく出発する。メインはミューズとゾネスが振り落とされない速度ではあるものの、それでもライオンを彷彿させるような速さでかけていく。ケイも同じくらいの速さで並走していった。新しく使えるようになった魔法と違い、こちらは以前から使えるものだったためか、いくらでもその速度で走れていた。


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