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レインとミロワ

さらに2人が洞窟の奥底まで進むと、そこにはこの場所に似つかわしくないものがあった。


「ボス部屋かな?」


 ケイがそう口ずさむように、目の前にあるのは大きな扉だ。周りは岩だらけなのに、この扉の存在感だけが異質を放っている。


「そうだな」


 シェルもそう言って、魔法の瓶の在庫や、剣の状態を確認する。魔法の瓶は回復用のが1つ、速度上昇のが1つ残っている。剣も刃こぼれ等は見られなかった。

 そして2人がかりで扉を開け、中に入る。2人が中に入ると、壁の所に松明があるのか、炎の明かりがつき、ケイの魔法がなくても辺りがよく見えた。さらにそこから見えるのは、2つの人影……、いや、どちらかというと影そのものだった。人の形をしているが真っ黒で、服を着ている様子も見られない。


「おうおうおう! このレイン様の相手になる奴はどいつだぁ!」


 そのうちの1体、右手にムチ、左手に盾を持っている影はうるさいくらい声を張り上げた。


「2人……」


 もう1体の方は何も持っておらず、声も小さくあまり話そうとしない。


「こいつらがラスボスか」


 ケイはそう言って右手を前に突き出し、シェルも剣を構える。


「よーしミロワ、俺様は剣持ってる奴の相手すっから、お前はえっと……、手ぶらのやつをやれ」


「魔法使い……」


敵の2人――レインとミロワがそのような会話をした後、ミロワと呼ばれる方は、ガラスの壁を作り出す。それも、レインとシェル、ミロワとケイを分断させるように。


「シェル……!」


 ケイが言いかけた瞬間、今度はガラスの破片が大量に飛んでくる。ケイはそれをバリアで防いだ。


(とりあえず、目の前の敵を倒すのが先か……)


 ケイは視線をミロワの方へと向ける。顔のほとんどが見えず、口が動いている時だけ分かるような相手だった。


(シンプルゆえの不気味さってやつか……)


 ケイは緊張感と、ほんの少し、高揚感も覚えていた。




――一方その頃、


「どらあ!」


 レインは持っていたムチを地面に向けて強く叩きつける。すると地面が割れ、レインとシェルはそのまま底の方へと落ちていった。シェルは剣を岩壁に突き刺し、その衝撃で落下速度を落とす。そして底の方が見えてきたら剣を抜き取り、無事に着地した。


「さすがに地面に叩きつけられてお陀仏ってしょぼいオチにはならなかったなあ。良き良き!」


 レインの方も無傷で立っている。落ちた先にも松明があり、真っ黒い姿のレインも目視できた。シェルも、レインに向けて剣を構えなおす。


「いくぜえ……」


 レインは風が切れる音が聞こえるくらい、ムチをすばやくしならせた。






――再び戻って。ケイとミロワのいる場所では、ガラスの破片がそこら中に広がっていた。だがケイはバリアで防いだため切り傷1つ負っていない。また、新しくしたブーツの性能か、ガラスの上を歩いても平気だった。そして、ミロワの攻撃の隙をついて、ビームを放つ。


(あれ?)


 しかし、当たったかと思えばミロワをすり抜けてしまう。しかもミロワは別の場所に移動していた。


 それからも、ミロワのガラス攻撃と、ケイのビームとバリアの応戦は続く。ガラスを飛ばす技一辺倒のミロワと比べれば、ケイの方が攻防両方行えるため優勢のはずだが、ミロワに打った攻撃が通らない。


「今度こそ!」


 ケイは強力なビームをミロワにお見舞いする。しかしそのビームはミロワに当たる前に何かにぶつかり、ケイの方に返ってきた。


「あぶなっ!」


 ケイはスレスレでビームを避ける。


(当たったかと思ったら透けるし、今度は跳ね返ってくるし、何なんだ。ただガラスを飛ばすだけの奴じゃないのは確かだけど……)


 ケイは一歩後ずさりする。その時、ガラスの破片を踏んだ。その破片に目をやれば、自分の姿が映し出されるものと、透明で何もうつさないものの2種類があることに気付く。


(あれか! 鏡で分身作って、反射させる魔法か)


 透けてしまうのは分身の、ビームが返ってくるのは反射の魔法を使っているのではないかとケイは考える。


(……で、どうする?)


 しかし、それが分かったところで、どうすればいいのかまでは思いついていない。そんなことを考えていると、またガラスの破片が飛んでくる。


「あーもうしつこいな!」


 ケイは再びバリアでガラスを防ぐ。


(……あ)


 そしてこの時、あることを思いついた。次の瞬間、ケイは自分のバリアごと、特大のビームで消し去っていく。それはミロワの出すガラスも飲み込み、ミロワ目がけて放たれる。しかしそれすらもミロワは分身を使って、避けてしまう。


「これでどうだ!」


 そして今度は、移動した先にいるミロワに手のひら大のビームを打った。そしてミロワはそのビームを反射させた。反射されたビームは、ケイの方に返っていく。


「へっ」


 そのビームを、ケイはバリアで防いだ……。


「グワッ⁉」


 そう思ったミロワだったが、反射させたはずのビームが、また自分の所に帰ってきたのだ。そして、ミロワのみぞおち部分を貫く。


「いやー、オレのバリアも、そっちのみたく反射できたらなーって考えたら、できちゃったよ」


 ケイはへへっと笑った。作戦が成功したことが嬉しいようだ。


「負け……た」


 ミロワは地面に突っ伏し、みぞおちに空いた穴から、少しずつ砂のように消えていく。


「強力で、変化する、魔力……」


 すると、ミロワは右手を伸ばし、そこから光の玉が現れた。泉の女神からもらった光とよく似ている。


「その魔力を、より強固なものに、する……」


 その光はケイの方へやってくる。ケイも、何となくその光に害はないと感じ、手に取った。光に触れると温かさを感じ、それは消えてしまう。


「力を、授けよう……」


 ミロワはそう言い残し、完全に消えてしまった。今の光が何なのか、ケイにはすぐには分からなかった。


(まず、シェルの方行こうかな……)


 とりあえず、隣にあるガラスの壁を破壊することから、始めてみることにした。







 ――こちらはシェルとレインのいる場所。


「ウラウラウラァ!」


 レインの使うムチはリーチこそ長いが動きは単調で、避けられないものではなかった。シェルは避けつつ、レインの様子を伺う。


「ちょこまかとおっ!」


 そしてムチを大きくしならせた瞬間、シェルは一気に詰め寄り剣をふるう。


「いでえ‼」


 レインの腹部を切りにかかったが致命傷には至らず、2回目では盾で防がれてしまう。その瞬間、シェルは力が抜けるような感覚に陥った。


「あぶねぇ……」


レインの持っていた盾が少し光る。そしてシェルが動けない隙に後方へジャンプ、再度シェルにムチを仕掛ける。体が思うように動かないシェルは、その攻撃を左肩にくらってしまう。するとさらに意識が遠のいていった。


「くっ……」


 完全に気絶するすんでで、持っていた回復魔法入りの小瓶を使い、立ち上がる。


(あのムチと盾、相手の力を奪うものか)


 ムチは避け、盾にも攻撃を当てず本体にのみ切りかかる必要がある敵。厄介な相手だとシェルは思った。


「まだやんのかこらあ!」


 しかもいつの間にか、レインの腹部の傷はふさがっていた。


「おらあ‼」


さらにムチはさっきより俊敏に動いている。地面に当たった時の衝撃も大きくなっていた。どうやらただ力を抜き取るだけでなく、盾は回復に、ムチは自分の力に変えることもできる様子。


(どうすれば、確実に仕留められる……?)


 シェルはムチを避けつつ、勝つ手段を模索していた。残っている魔法の瓶は、高速移動のみ。一気に間合いを詰めるのは二番煎じ、防がれる可能性も高い。そうなると、使えるのは剣を用いた魔法……。


「邪なる大地の神よ、汝の毒牙は万物をけがすであろう。ポリューション」


 シェルは剣に力をこめ、構えを戻す。何か覚悟が決まったような表情をしていた。


「無駄無駄ぁ!」


 レインはさらに速くなったムチをしならせる。するとシェルはマントを取り、それでムチをからめとった。


「おおっと」


 レインはムチを引っ張られ、体勢を崩す。その隙にシェルはマントから手を離した。そしてドレインとの間を詰めて剣をふるう。


「バーカ、無駄なんだよ!」


レインは真正面からの攻撃に盾で迎え撃った。それでもシェルはそのまま、剣に力をこめて盾を攻撃する。


「ぐっ……」


そして力のほとんどを奪われ、シェルはその場にひざまずいた。


「勝った!」


レインは勝利を確信した。はずだった。


「……あ、れ……」


しかしレインも、動けなくなる。体がしびれ、視界も歪む。次の瞬間、レインの目の前からシェルが消える。シェルはレインの背後に立ち、横に一刀両断した。


「ぐあああああああ!!」


 レインはうめき声をあげ、糸が切れたように倒れる。


「お前、何を、した……」


 残りわずかの力で、シェルに問う。


「剣に毒を込めた。背後に回れたのは、この魔法だ」


 シェルは蓋を開けている小瓶を見せる。最後にとっておいた高速移動魔法だ。


「へえ。でも、毒の方は、自前の、やつか?」


「ああ……」


 「ポリューション」剣に触れた者に猛毒を食らわせる魔法だ。発動までの溜めの時間は短いが、反動は大きい。


「くっ……」


シェルも倒れこむ。顔色も青いと通り越して紫色になっていた。


「反動……か。馬鹿だな。自分も死ぬつもりか」


「それも悪くない……が」


 シェルは残りの力を振り絞ってレインの盾を取り、レインの傷口に盾を触れさせる。すると盾は光り、それと同時にシェルの顔色も戻っていった。


「……ギャハハハハ! お前面白いな。負けだ負けぇ‼」


 最期にレインは大声で笑い声をあげ、地面に溶けていった。そして残ったのは、ムチと盾。


(勝ったか……)


 シェルはホッと、胸をなでおろした。




――「シェール―!」


 すると、上空から人の声が聞こえた。小さなバリアを足場にしながら、ケイが下りてきたのだ。


「よっと」


 ケイは無事地面に着地すると、すぐさまシェルの元へ向かう。


「あ、そのムチと盾、敵の?」


 そして足元にあったムチと盾に目をむけた。


「ああ。ケイの方は、何か出てきたか?」


「ううん。なんか変な光が出てきたけど、ものは何も出てこなかった。町長が言ってたお宝って、これのことかな?」


「恐らく。まず、持って帰って報告だ」


 シェルはそう言ってムチと盾を拾う。触ってみても、力を奪われるような感覚はなかった。

そしてワープ魔法の小瓶を開け、ケイと2人でこの場を後にするのだった。



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