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3.2B

 今、文化って言った?

 文化って何時代?

 西暦で言ったら何年なの?


 なにこれ、タイムスリップしたっていう夢?

 なんかかなりリアルな夢なんですけど?

 それともドッキリ?


 それに瓦町ってどこ?

 そんな地名知らない。


 疑問が次々に浮かんで頭の中がパンパンになる。


「今の将軍って……?」

 とりあえず、手掛かりを求めて問う。

徳川(とくがわ)家斉(いえなり)やったかいな?」

 治兵衛さんが玄斎さんを振り返る。


 徳川ってことは江戸時代か。

 確か家斉って一番在任期間が長かった人だけど、西暦だと何年だっけ?

 あと何した人だっけ?

 この時代の有名人って誰がいたっけ?

 高校生の時にあんなに覚えた歴史の知識はとっくに消えていた。


 でもとりあえず、江戸時代なのは分かった。

 初め頃なのか終わり頃なのか全く予想つかないけど、江戸時代なら戦国時代のように身の危険はそんなにないはずだ。

 そうちょっとだけ安堵したんだけど。


「あんた、梅宮()うたか。けったいな頭して、女子(おなご)が足晒して……異国に売られて逃げ出した遊女かなんかか? どないな事情(わけ)があるんか知らんけど、目ぇ覚めて元気なんやったら、ここから出てって貰えるか?」

 玄斎さんが腕組みをしてそう言い放った。

「ちょ、玄兄(げんにぃ)。待てや。こんな夜中に追い出すやなんて」

「今すぐとは言うてへん。日が昇ってからでええ。面倒事に巻き込まれるんは……」

「玄兄、せやかて気の毒や思わへんのか? こないな頭にされてもぉて」

「治兵衛っ。役人に見つかってもぉたら、お前も俺も終わりやで。異人絡みやったらどないなことになるか、想像もつかんわ。最悪死ぬかもしれんのやぞ?」

 そう叱り飛ばしてから、玄斎さんは私に向き直り、

「あんたには悪い思うし、気の毒やとも思うけど、こっちも命は惜しいさかい、分かってな?」

 そう言って部屋を出て行った。

 それに片手を伸ばして引き留めようとした治兵衛さんだったが、伸ばした手を力なく下ろした。

 それから私の方を見て何か言いたそうにしたけど、何も言わずに治兵衛さんも部屋を出て行った。


 一人残された私は暗い部屋で頭を整理することにした。


 本当にここは江戸時代なの?

 タイムスリップなんてあり得る?

 ドラマや漫画じゃあるまいし。


 でも、本当に江戸時代だったら、私これからどうしたらいいの?

 ここ追い出されたら、お金も何もない。

 それにこんな格好じゃ、警察……じゃなくて、役人に捕まって、殺されちゃうの?

 江戸時代ならそこそこ平和かもって思ったけど、裁判とかちゃんとしてくれなさそうだし、すぐ殺されちゃうイメージが強いんだけど。


 あれ? そんなに平和じゃないかも?

 だって、武士がいるってことは刀持って歩き回ってる人がいっぱいいるってことでしょ?


 あれ? 私ここで死んじゃったらどうなるの?

 生まれた日より死んだ日の方が古いって、どうなの?


 頭を整理するどころか余計に混乱した。

 疑問しか浮かばない。

 頭を両手で抱えて、ふと冷静になる。


 服はジャケットにスカートのスーツ。

 ストッキングは少し伝線していた。

 ジャケットの胸ポケットにはペンがある。

 三色ボールペンとシャーペンが一つになったやつだ。

 それと鉛筆があった。

 前に外出先でシャーペンの芯が無くなって慌てたことがある。

 それ以来、なんとなく鉛筆も忍ばせるようになった。

 HBではなく2Bの鉛筆。

 社会人になって新しく揃えた訳じゃなくて、高校時代に愛用していた物の残りだった。

 持っていたのはそれだけ。

 スマホがあれば何か調べられたかもしれないのに。

 あ、ダメか。

 電波がないや。


 ペンだけで江戸時代をどうやって生きろと?


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