第9話『空を貫く拳』
空へと駆け上がる紅の炎。
グリムはネビュロスの転送術式によって、統合陣のコアへと放たれた。
彼の身体を包む魔力は暴風のごとく渦巻き、
空中に展開された数百もの封印式を、力任せに叩き割っていく。
グリム:
「どれだけ綺麗事並べようがなァッ……!
オレは、焼く。あんたらの偽善も、正義のフリした支配も!全部、焼き尽くしたるわッ!!」
その咆哮は、ユナイトレッドにも届いていた。
ユナイトレッド:
「不確定因子、接近中。迎撃を行う。」
彼は手を掲げ、統合陣の一部を再構築。
その中から現れたのは、純白の巨大な聖騎士――“ジャスティス・アーク”。
統合魔法によって生み出された、ユナイトの分身とも呼べる戦闘体。
グリムは空中で踏み切り、拳を突き出す。
グリム:
「正義が神やったら……魔族は誇りやッ!!
オレらの存在そのものを否定すんのは、絶対に許さへんでェェェッ!!!」
巨大な拳が、光の鎧に直撃する。
炸裂音が空を揺らし、世界が一瞬、黙り込む。
だが、“ジャスティス・アーク”は崩れなかった。
ユナイトレッド:
「信仰なき正義に、力はない。
だが、誇りだけの“悪”にも……理はない。」
両者の衝突は、新たなフェーズへと移行していく。
今、空で繰り広げられるのは――
“神と魔族”、それぞれが掲げた信念の闘争だった。
(第10話へ続く)