第5話『幻惑と爆炎』
戦場の熱気と冷気が交錯する中、その一角だけ空気が柔らかく揺らめいていた。
霧のように漂う蝶の群れ。その中心に立つのは、紫の衣をまとった一人の魔王――ヴェルミリオン。
対するは、ブレイズレッド。
腕をぶんぶんと振り回し、苛立ちを露わにする。
ブレイズレッド:
「なんだよコラ、ちょこまか動きやがって!出てこいよ、コソコソ隠れてんじゃねーぞ!」
ヴェルミリオン:
「怖いの?それとも、自分が何と戦ってるのか、わからないのかな?」
ブレイズレッド:
「は?ふざけんな!」
ヴェルミリオンは笑う。その声は甘く、どこか哀しげでもあった。
ヴェルミリオン:
「君ってさ、“悪”を見つけたら、燃やせば済むって思ってるでしょ?単純でいいね。ちょっと羨ましいかも。」
ブレイズレッドは叫びながら火球を放つ。
ブレイズレッド:
「うるせーんだよ!燃えろォッ!!!」
だが、火球は蝶の幻影に吸い込まれるようにして霧散した。
ヴェルミリオン:
「ねぇ、燃やしても消えないものがあるって、知らないの?」
幻影の蝶がブレイズレッドを包み込む。
視界が揺れる。
過去の記憶か、妄想か――ブレイズの心が揺さぶられる。
だが。
ブレイズレッド:
「……知らねぇよ!俺は正義だ、そんなもん、どうでもいいッ!!」
叫びとともに爆炎が炸裂し、幻を焼き払う。
ヴェルミリオン:
「うん、やっぱり君には“正義”は似合わない。……可哀想に。」
二人の距離が一気に縮まる。
美しき毒と、暴走する焔。
交差する刃の先に、何が待つのか――
(第6話へ続く)