第4話『氷と数式』
激戦の余波が地を揺らす中、戦場の一角ではもう一つの衝突が始まっていた。
冷気が走る。氷結の刃が大地を裂き、空間を凍らせる。
ネビュロスが静かに歩を進める。
その目は、戦意ではなく“観察”の色を帯びていた。
ネビュロス:
「あなたの“正義”は、どれほどの再現性があるのか。見せてもらおうか。」
対するは、セイジレッド。
術式を展開しながら、感情のない声で応じる。
セイジレッド:
「魔力波形、計測完了。分析値、危険度C。戦闘開始を推奨する。」
ネビュロス:
「ふむ……人の心を数値で判断するとは。やはり、あなた方は“正義”ではなく、“管理”を求めているだけだな。」
セイジレッド:
「秩序とは、統制により成立する。個体差は排除対象であり、例外は誤差でしかない。」
氷と魔術式がぶつかり、戦場に理と冷気が乱反射する。
ネビュロスの氷壁がせり上がる中、セイジレッドの符号がそれを打ち消す。
演算と直感。
ネビュロス:
「面白い。だがあなたは、“異常”を恐れているだけだ。私たちはその“異常”の中にこそ可能性を見出す。」
セイジレッド:
「正義に余白は不要。完璧な図式こそが、理想である。」
ぶつかり合う、冷たき論理と氷の哲学。
戦いは、まだ終わらない。
(第5話へ続く)