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第22話 研究施設に来ましたわ

 ゼクシアたちは魔獣の研究施設を訪れていた。

捕獲した魔獣の研究結果がようやく出たとのことで、グレイスから連絡を受けたからである。


「いらっしゃい、ゼクシアちゃん、みんな」


 入り口でグレイスが出迎えてくれた。

ゼクシア以外の5人は膝をつく。


「お義母様、お出迎えいただきありがとうございます」


「いいのよ、可愛いゼクシアちゃんが来てくれたんだもの」


 グレイスはゼクシアを抱きしめ頬擦りをする。

全員が戸惑っていることにグレイスは気づき、咳払いをする。


「ごめんなさい。さぁ、案内するわ」


 グレイスを先頭に研究施設の中へ進んでいく。


「結構しっかりした建物だよな、ここ」


 ライオニールは建物の中を見ながら感心していた。

一度、魔獣を運ぶためには来ているのだが、入り口で魔獣の受け渡しをした後、会議室で軽くお茶を出され、グレイスと軽く話をした程度で、施設の奥…特に研究室までは踏み入っていないのである。


「研究チームが出来て間もないから大した施設じゃねえと思ってたが…」


「ここは本来、魔獣の研究じゃなくて、対魔獣用の魔道具開発をするための施設だ。

魔獣の出現が確認されてから、国王陛下の号令で早急に作ったのさ」


 目の前からひとりの女性が現れ、ライオニールの疑問に答える。

青色の長い髪を後ろで縛り、白衣を纏ってポケットに手を突っ込んでいる。


「久しく帰れなくてすまないな、セリオン」


「お久しぶりです、母さん」


 ふたりは軽く挨拶を交わす。

彼女の名は、アクア・スティーリア、セリオンの母である。

魔道具研究機構に所属し、数々の魔道具の開発に携わっている。

この世界の生活インフラが整っているのは彼女のおかげと言っても過言ではなく、冷蔵庫やコンロ、扇風機などは全てが彼女とグレイスが作ったものである。

もしかして、転生者なんじゃないか?と思い、ゼクシアが昔、どうして作ったのか聞いたところ、


「料理とかにいちいち魔法を使うのがバカらしいから」


と言われた。

これが本音かどうかは知らないが、実際魔法を使うことが出来ない家庭にも、これらが普及しているので、彼女の功績は計り知れない。


「セリオン様のお母様、ご無沙汰しております」


 ゼクシアも軽く挨拶をする。


「ゼクシアか、それにローランドも、ずいぶんと立派になったものだ」


 アクアは研究に没頭してることが多く、家にもあまりいないらしい。

ゼクシアやローランドはともかく、セリオンすら会うのは久しい。

セリオンも、仕事場がここになっているのは知らなかった。


「いつからここにいたんですか?」


「魔獣が出てきてすぐだ。

対策するのに武器とかを作らなきゃならんと、王宮で議題に上がったらしくてな。

グレイスに声をかけられたんだ」


 グレイスを呼び捨てにするアクアに疑問を抱き、全員が顔を合わせる。


「何だ、グレイス、話してないのか?私たちは学生の時、同級生だったんだ。

グレイスと私とロゼリアの3人で、よく魔法や魔道具の研究をしていたよ」


「お母様も…ですか?」


 ゼクシアが思わず反応した。

ロゼリアはゼクシアの母の名であった。


「ああ。だが、グレイスもロゼリアも、魔法を使うことに関しては私より優秀だったな」


「アクアだって、魔道具作りの天才じゃないの。

学生の時からなんでも作ってたわね。

コンロに扇風機、冷蔵庫にストーブ…

名前も全部貴女がつけて…」


「グレイスやロゼリアが手伝ってくれたおかげだ。

ひとりでは出来なかったさ」


 ふたりは当時に戻ったかのように雑談を始めたが、

ゼクシアたちが放置されていることに気づき、グレイスは軽く咳払いをする。


「…待たせちゃってごめんなさいね。奥に行きましょう」


 グレイスとアクアを先頭に、魔獣の研究室に入っていった。

…………………………

 研究室には研究員が2〜3名いたが、ひときわ目立つ水色の髪の女性がいた。


「……姉さん?」


「えっ…!セ、セリオン…なんでここに?」


 姐さんと呼ばれた女性は セリオンを見て驚いた。


「あの、彼女は…?」


 サフィーロが質問すると、アクアが答えてくれた。


「彼女はネーヴ。私の娘だ。

普段は町医者をしているのだが、生物学にも精通していることもあって呼んだんだ」


 ネーヴはセリオンの4つ上の姉である。

回復魔法や薬を作るのが得意で、今は城下町の魔法医師としてすでに独立し、小さな病院を開いていた。

こと生物の調査に関してはグレイスもアクアも知識が乏しいため、ネーヴに協力を依頼したとのことだった。


「ネーヴ、わかったことをみんなに話してくれ」


 ネーヴは頷くと、目の前にあったケースやらボトルやらを中央の作業台に持っていった。

そこには魔獣の皮膚の一部や謎の液体、そして…


「…蛙?あの…これはいったい…?」


 ただの蛙の死骸がケースに入っていたのが逆にひときわ目立ち、ゼクシアは思わず疑問を口に出していた。

ネーヴが話を進める。


「そうですね、まずは経緯から…

セリオンが魔獣を凍らせて持ち帰ってきてくれたおかげで、身体の一部を溶かすことで皮膚片と体液を採取出来たのですが、暴れられても困るので、ある程度採取した後に始末したのです。

そうしたら、この有様で…」


「この有様…というのはどういうことですの?」


 ゼクシアの質問に対し、ネーヴはもじもじしながら答える。


「あの…信じられないかもしれないのですが…

魔獣がただの蛙になってしまったのです…」

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