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幕間その11 元悪役令嬢がモテモテだった件

 その日、セリオンはライオニールとサフィーロに詰め寄られていた。

理由はただひとつ、先日の告白の件である。


「さて、どういうつもりかな?セリオン君」


「…どういうつもりもない。僕は自分の心に従ったまでだ」


 ライオニールが思いっきり壁をドンと叩く。


「だとしてもよぉ、抜け駆けはよくねえんじゃねえかなぁ…」


「…抜け駆け?なんだ、君たちもゼクシアが好きだったのか」


「「当然だ!!」」


 ふたりは食い気味で答える。


「俺様よりも強え女だ!俺様の嫁に相応しいのはあいつしかいねえ!」


「彼女は僕の妻としてウィンドシアスに連れていく。これは君たちにも譲れない!」


「…悪いな、君たちよりも彼女を想っている時間が違うんだ。渡すつもりはない!」


 まさに一触即発と言わんばかりに3人はぶつかり合っていた。


「……あのさ…」


 少し離れたところで静観していたローランドが口を開く。

彼はこの争いに関与せず、ミストと一緒に見ていたのである。


「ゼクシアの意思は考えないのかい?一方的に自分の気持ちだけを話してるみたいだけど…」


 3人は今度はローランドの方に向かって歩き出す。

詰め寄られる対象がローランドへと変わった。


「甘えんだよ!ローランド!俺様たちはなぁ、いずれ潰し合わなきゃいけねぇんだよ!」


「そのとおりだ!ゼクシアはたったひとり!

それを分かち合う事なんて出来ないんだからね!」


「ローランド!君だって彼女の幼馴染だろう!?

何も感じないのか!?全く惹かれていないのか!?」


 3人から一気に詰め寄られ、ローランドは回答に困った。


「いや、あのさぁ…気持ちはわかるんだけど…

もっとゼクシアの気持ちを考えようって言ってるだけで…」


「それが甘えって言ってんだよ!」


「ライの言うとおりだ!いいかい? セリオンはすでに告白しているんだよ!?

彼女の気持ちが揺らいでいてもおかしくないじゃないか!」


 ライオニールとサフィーロがさらに詰め寄るが、セリオンは唐突に振り返る。


「…まぁ、いいさ、君は降りるんだろ?ローランド。

ライバルが減ってくれれば僕としては大助かりだ」


「えっ…セリオン…?」


 セリオンの言葉を聞き、ふたりもまた、ローランドから離れる。


「まぁ、言われてみればそうだね」


「だな、腰抜けには用はねえって話だ」


「じゃあね、どうか見守っててくれ、親友」


 3人はその場を去ろうとした。


「……きだよ…」


 ローランドはボソッとつぶやき、3人は足を止めた。


「あ?なんだ?何か言ったか?」


 ライオニールが聞き返したところで、ローランドは大声を上げる。


「僕だって!ゼクシアのことが好きさ!

君たちに負けるわけにはいかない!

ゼクシアは渡さないぞ!!」


 ローランドは想いを全力で吐き出した。

3人はそのあまりの声量と()()()()()()に言葉を失ってしまった。

少し間を置いて、セリオンたちは口を開いた。


「ふっ…さすがはローランドだ。その心意気は素晴らしいよ」


「ああ、見直したぜ…」


「…ただ…タイミングは最悪みたい…だね」


「……え?」


 ローランドが聞き返すとサフィーロは後ろの方を指差す。

恐る恐る振り返ると、そこにはアシュレイドが立っていた。


「…随分と楽しそうだな…」


「で、でで殿下!?い、いつからこちらへ…」


「何やら叫び声が聞こえたから来てみれば…ゼクシアは仮にも私の婚約者なのだが…?」


 ライオニールとサフィーロが後ろでクスクスと笑っていた。


「何がおかしい!?」


「いやぁ、別に…ねぇ、ライ」


「ああ、あんな対応しておいて婚約者を語るのかって…なぁ、セリオン」


「…まぁ、僕ならゼクシアを悲しませることはしないけどね」


 セリオンは眼鏡をクイッとあげニヤッとして言い放った。


「ふん!あんな女のどこがいいのだ…貴様らの気が知れん」


「あ?どういう意味だそりゃあ?」


 ライオニールが聞き返す。


「貴様らは一緒にいて、あの女の性格の悪さを知らんのか?

アイリスを虐める日々もそうだが、昔から私よりも少し勉強や魔法ができるからと言い気になって見下して…」


「ゼクシアから聞いてないのですか?

王妃になるにあたって、貴方を支えるために日々研鑽していた…と、彼女は言っていましたよ」


セリオンが反論する。


「アイリスってやつを虐めてるのだって、ろくな目撃者もいねえらしいじゃねえか。

実際、ゼクシアにはそんなことしてる暇はないしな」


 ライオニールも続く。


「それでもだ!アイリスは私に言ってくれたのだ!

ありのままの貴方でいいと!私はその言葉に救われたんだ!」


「…それ、僕も言われたな…都合のいい言葉だよね。

それを自分が努力しないことへの免罪符にしてない?」


 サフィーロがやれやれという様子で反論する。


「ゼクシアには信念がある。自分のなすべき事をやり遂げる強い意思…

あれこそ、王妃として欲しい人材だと思うけど…」


「あいつは強え女だ。誰かを守るために命をかけて戦える。そんなあいつの強さに俺様は惹かれたんだ

テメェにはわからねぇかもしれねえがな」


「ゼクシアは誰よりも努力家だ。子供の頃から見ているが、魔法も日々研鑽を重ねているし、厳しい王妃教育も乗り越えてきた。

そんな彼女をなぜ婚約者である貴方が認めないのですか?」


 サフィーロに続きライオニール、セリオンも意見をする。


「お、おい…3人とも、これ以上は…」


 ローランドが止めるが、すでにアシュレイドの怒りが頂点に達していた。

第一王子である自分に意見したことだけではない。

ゼクシアの魅力がわからない自分が愚かと言わんばかりの3人の態度に腹が立ったのである。


「貴様らぁ!この俺に無礼を働いてタダで済むと思っているのか!?」


 アシュレイドの叫び声が周囲に響き渡り、人だかりが出来てくる。


「あーあ、キレちまったぜ…どうするよ?サフィ」


「任せて…僕に考えがある…」


 サフィーロは他の3人を集めて作戦を伝える。


「は、はぁ!?何を言ってるんだ!サフィーロ!」


「なるほど!そりゃいい考えだぜ、サフィ!」


「面白い、僕も乗った!」


 ローランドだけは驚いたが、セリオンとライオニールは即座に同意した。


「では、多数決で成立ということで…

殿下、これから我々と勝負しませんか?」


「勝負だと!?」


「ええ、僕たち4人と、ドッジボールをしましょう」

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