第21話③ 魔獣を捕まえますわ
「セリオン様!ここは危ないですわ!逃げてください!」
ゼクシアの忠告を聞くことなく、セリオンは息を整えて、大声で叫んだ。
「ゼクシアーーーー!!好きだーーーー!!!」
その場にいる誰もが何が起こったのか理解出来ず、凍りついたように固まった。
「ゼクシア!初めて会った時からずっと好きだった!
好きなんてもんじゃない!愛しているんだ!!心から!」
我に帰ったローランドがツッコミを入れる。
「…いや、は?セリオン??こんな時に何を…」
セリオンは周りの状況に一切反応せずに続ける。
「僕はずっと!この気持ちを知ろうとしなかった!
心にずっと蓋をしていたんだ!
でもわかった!この気持ちは愛なんだって!
ゼクシアを誰よりも愛しているんだって!
この気持ちは誰にも負けない!
もし、僕のこの気持ちを邪魔する奴がいるなら、誰が相手だろうと戦う!
君を守りたい!大好きな君を!愛する君を!
そして君をもっと知りたい!
どんな些細なことでも!!
ゼクシア、好きだーーーーー!!」
ゼクシアからは返事は返ってこなかった。
それもそのはず、ゼクシアは顔を真っ赤にして両手で覆っていた。
仲間の前で堂々と告白をするだけでなく、その後もセリオンが『ゼクシアのここが好き』を大声で話し続けるため、恥ずかしさで言葉が出なくなっていた。
ローランドはあまりの状況に呆気に取られ、言葉を失っていた。
「…今言わなきゃだめなことか?これ」
ライオニールは呆れながらもサフィーロに聞いた。
「さすがにやりすぎかな。婚約者いるのにね」
サフィーロは面白がりながら答えた。
そんな中、セリオンの持つ青の聖剣が光を発した。
セリオンは剣を取り、天に掲げる。
すると魔法陣から魔導士の装束を纏ったような姿の青い機体が現れた。
「これが僕の聖剣神…」
セリオンは覚悟を決めた。聖剣神に乗り込むと、瞳が赤く光る。
マントが背中と腰から伸び、大きな帽子を被ったような姿で宙を浮いている。
右手に持っている杖は先端が鋭く、槍のようにも見える。
その姿は、まさに大魔導師といったところだ。
「いくぞ!僕の聖剣神、ブルーセリオン!」
セリオンの名乗りと共に、周囲に冷気が吹き荒れる。
「…随分と自己主張の強い名前だな…」
「…それ、君が言う?」
ライオニールのツッコミに対しサフィーロが笑った。
だが、そんな呑気なことを言ってる場合ではない。
魔獣が鉄網から脱出してきたのである。
ゼクシアの予想通り、口にハマった岩を溶かしたらしく、その後はじっくりと鉄網を溶かしていったようだ。
魔獣は溶解液をブルーセリオンに撃ち出した。
「!?危ない、セリオン!それに当たると溶けるぞ!」
ローランドが忠告をするが、ブルーセリオンの周囲から放たれる冷気が溶解液を凍らせた。
魔獣は何度も溶解液を飛ばしてくるが、ブルーセリオンに届くことはなかった。
「無駄だ」
魔獣に言葉の意味がわかったのかは定かではないが、溶解液は効かないと判断したのだろう。
ジャンプして攻撃するため、足を思いっきり曲げ、飛びあがろうとした。
だが、魔獣はブルーセリオンのいるところまで飛び上がることはなく、その巨体は地面に叩きつけられてしまう。
よく見ると、魔獣の足先が凍りつき、地面と一体化していた。
「無駄だと言った」
ブルーセリオンは持っていた杖を魔獣に向けた。
すると、魔獣は足元からじわじわと凍りついていく。
抵抗も虚しく、魔獣の全身は完全に凍りついてしまった。
「……はは…すごいね、これは」
サフィーロは思わず感心した。
ブルーセリオンは地上に降り立ち、仲間の方を見る。
「目的は捕獲…だったな。これでいいよな?」
「あ、ああ…そうだね、あとはこれをどこにどうやって運ぼうか、ゼクシア」
ローランドの質問に対し、ゼクシアから返答が返ってこない。
「………ゼクシア?」
ゼクシアは先ほどの告白の衝撃からまだ立ち直っていなかったのである。
真っ赤な顔を両手で押さえながらずっと悶えていた。
なんとか落ち着いたゼクシアが網を出すことで、魔獣の捕獲に成功した。
そしてグレイスと連絡を取り、全員で研究機関に持ち運ぶこととなった。