第20話 セリオンの悩みですわ
セリオンは悩んでいた。
ライオニール、ローランド、サフィーロ
皆、自由に聖剣神を操ることが出来るようになっている中、自分だけがまだ召喚することが出来ないでいる。
せっかく手元に聖剣があり、自分のものになった上で研究する時間もある。
それなのになぜ、自分には使うことが出来ないのか…
しかも、それだけじゃない。
言葉で言い表せないモヤモヤした気持ちが心をがんじがらめにしているような…
そういう時に限って、なぜかゼクシアの顔が浮かんだ…
この気持ちの答えを、セリオンは見出せずにいた。
……セリオン様…
気のせいか、ゼクシアの声が聞こえたような気がした。
(透き通った心地いい声…心が洗われるようだ…)
「セリオン様!」
自分を呼ぶ声に驚き、声がした方を向くとゼクシアがいた。
「セリオン様、何度もお呼びしたんですが、大丈夫ですか?どこかお身体の調子が悪いのですか?」
ゼクシアはセリオンの額を触り、熱を測ろうとしてきた。
セリオンの顔は真っ赤になった。
「だ、大丈夫!少し考えごとをしていただけだから」
「そうですか…?まぁ、熱はないようですけど…
最近、ずっと聖剣の研究をしていらっしゃいますものね。
少しお疲れなんでしょう…
そうだ!これからご一緒にお茶でもいかがでしょうか?
甘いものは脳のエネルギーになりますから」
「い、いや、僕は…」
セリオンはなぜか自分の意思と反して断ろうとする。
「あら、そうでしたか…
ぜひセリオン様にご相談したいことがありましたのに…」
「いや!行こう!」
その言葉を聞いて一転、セリオンは食い気味になってゼクシアの誘いに応じた。
…………………………
「…魔獣の捕獲?」
「はい、お義母様…つまり王妃様に頼まれまして…」
ゼクシアとセリオンは人気の少ない学園内の庭園で話をしていた。
紅茶を淹れ終わり、ゼクシアも椅子に座る。
「なぜグレイス王妃がそのようなことを?」
セリオンは今し方淹れてもらった紅茶を片手に質問した。
「実は…魔獣の生体調査をするにあたって、お義母様が主導のもと、精鋭を集めて研究チームを作ることになったそうなのです。
以前、行われていた森の調査が叶わなくなってしまったので、魔獣そのものを捕獲して、生体調査をしようということになったらしいのです。
でも…どのようにすればいいのものかと思いまして…」
主な出現場所だった森は、ローランドのフレイムセイヴァーによって焼け野原となり、なんの痕跡も発見できず、調査は断念された。
しかも前回の魔獣は森周辺から出現したものではない。
こうなった以上、魔獣を直接捕獲して研究した方が早いという結果になったらしい。
「他のみんなには相談しなかったのかい?」
「それが…ライオニール様からは
『関係ねぇ、ぶっ飛ばしゃいい!』
と言われ、
サフィーロ様からは
『ごめん、何も思いつかないや』
と言って逃げられて、
ローランド様からは、
『セリオンに相談してみたら?』
と言われてしまいました」
セリオンはあまりにも無責任すぎる仲間たちに言葉を失った。
(なぜ…こんなにも無責任な彼らにはゼクシアを助ける力があって、僕には…)
セリオンはさらに悔しい気持ちでいっぱいになる。
それと同時に胸をズキッとした感覚が襲う。
(なんだ?この感じは…?)
「それで、セリオン様…何かいい案はありませんでしょうか…?」
セリオンは顔を伏せて黙っていた。
(なにか答えないといけない…ゼクシアのために…
でもなぜだ…?胸の痛みがおさまらない…)
セリオンは依然として、黙って下を向いたままだった。
「…セリオン様?どうしましたか?」
「…すまない…僕では力になれそうにない」
セリオンは立ち去ろうとする。
「お待ちください、セリオン様」
ゼクシアが手を掛けたが振り払われてしまう。
そのままセリオンは重い足取りで去って行ってしまった。