幕間その6 サフィーロの決意
「…あんな風に言われたことはなかったなぁ…」
サフィーロはゼクシアと名乗った少女の言葉を考えていた。
数日前、アイリスとかいう少女からは、
あなたの自由にしていい、あなたらしく生きればいい
と言われた。
そこからは度々、授業をサボって寝ていたりしていた。
しかし、心の中にぽっかりと穴が空いたような気がしてならなかった。
「ミスト…僕にできると思うかい?
ウィンドシアス国王の…父上のように国を治めることが…」
ミストはサフィーロと同じ目線に立ち答えた。
「出来ますよ、サフィーロ様なら…
私はずっと信じております。
孤児だった頃に、貴方に拾われたあの日からずっと…
あの女性の言う通り、もしあなたが辛い時は、私が力になります。
いえ、私だけではありません。
みんな、力を貸してくれますよ」
「…そうか…ありがとう、ミスト」
ミストの肩を借り、サフィーロは立ち上がった。
「あのゼクシアという方は、自らの翼で羽ばたいていますね」
「…そうだね、僕も彼女のようになってみせる。
もう、逃げないよ」
2人は学園の方に戻って行った。
………………………
一方、アイリスはサフィーロを探していた。
以前、たまたま見つけて声をかけたが、それ以降、全く見つけることができなくなったのである。
「もう!自由奔放すぎるでしょ、あの人!」
ライオニールは失敗してもまだチャンスはある。
そう思って探していると、従者と共に歩いてくるのを見つけた。
「サフィーロ様!探しましたよ!」
「…えっと…君は…」
「アイリスです!以前お話ししたことがあるかと…」
「ああ、そうだったね、アイリスさ…」
サフィーロが話を続けようとするが、ミストが遮った。
「また、サフィーロ様をたぶらかすおつもりですか?」
(何よ、この従者、邪魔だわ…)
アイリスはミストを退けようと強くあたる。
「貴女には話していません。私はサフィーロ様に用があるの。
向こうに行ってくださる?」
するとサフィーロが口を開いた。
「彼女は僕の家族だ。それを邪険に扱おうというのかい?
失礼じゃないかな?」
「サフィーロ様、違いますわ、
この女に立場をわからせてあげようと…」
サフィーロは怒りをあらわにした。
「今言っただろ?彼女は僕の家族だ!
彼女だけじゃない!ウィンドシアスの民たちも、僕にとっては家族同然だ!
何が立場をわからせるだ!?」
アイリスはびっくりして黙ってしまった。
さらに詰め寄ろうとしたその時、ミストが何かに気づく。
「!?サフィーロ様!あれを!」
城下町のはずれの方に巨大な物体が見える。
鳥のようなものと、巨人のようなものと…
「あれは…噂に聞いてた魔獣か…」
「ええ、魔獣と何かが戦っているようです」
サフィーロは自分の腰に据えられた聖剣を抜き、決意を固め、指を切って血を聖剣に垂らした。
「サフィーロ様!?」
「ミスト、僕は逃げないと言ったよね。
僕は君を守るために戦う。
民を、家族を守るために命を賭ける。
それが僕の…僕にとっての王だ!」
サフィーロは聖剣を天にかざした。
「来い!聖剣神!
民を導く風の翼!
ウィンドファルコン!!」
聖剣が輝き、翠色の隼が降臨した。
サフィーロは乗り込むと、ウィンドファルコンは戦場へと飛び立った。