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第17話① 風の王子様ですわ

 ゼクシアは目の前の青年に目を奪われていた。


(まさかこんなところで会うことになるとは…)


「ねぇ、君…」


「は、はい…なんでしょうか…」


「この辺りに隠れ場所みたいなところないかな?

人通りがなくて見つかりづらいサボれ…

ゴホン…静かな場所っていうか…」


「……はい?」


 いきなり現れた少年に変なことを聞かれ、どう答えていいものか困っていたところに女性の声が聞こえる。


「サフィーロ様!!」


「…やば…逃げなきゃ…またね!」


 サフィーロと呼ばれた少年はその場を立ち去っていき、背の高い女性が彼を追いかけていった。


「…ほんと、風のような方でしたわね…

…さて、どういたしましょうか…」

…………………………

 サフィーロ・ゼフィロス

緑の聖剣の持ち主で自由奔放な性格。

授業は寝てるかサボっているかで、女性の従者であるミストから常に逃げているのが目撃されている。

彼は隣国であるウィンドシアス王国の貴族の息子…

ということで編入している。

 本名は、サフィーロ・ウィンドシアス

ウィンドシアス王国の第一王子である。

グランシュタインとは友好国であり、今回の留学が決まったとのことである。

 もちろん、これらを全て知っているのは前世の記憶のあるゼクシアだけである。

学園長であるマーレインはサフィーロの身元は知っていても、聖剣を持っていることまでは知らない。

緑の聖剣はグランシュタインとウィンドシアスの友好の証として譲渡された…とは歴史書には書いてあるので、読んでいれば別なのだが…

ゼクシアには前世の記憶がある。

ということは、彼を味方にするイベントをゼクシアがこなせばいい…ということなのだが…


(正直、難しいんですのよねぇ…こればっかりは…)


 ローランドとセリオンは幼馴染だったから、ある程度親睦は深められた。

ライオニールは性格が単純だったから、イベントが改変されても結果的になんとかなった。

だが、気まぐれなサフィーロはそうはいかない。

選択肢を間違えると味方になってはくれない。

実際、ゲーム内のハーレムエンドを目指す際も、1番攻略が難しかったのは彼である。

彼のサボり癖と自由奔放な性格のせいか、どこにいるのか特定できず、出現込みでイベントの発生がランダムだったせいで、

出ないままエンディングを迎えることもあった。


(あれ、結構問題になったんでしたわね…

パッケージにいるのに出ないとか詐欺じゃないかって。

攻略サイトやSNSでもまともな情報がなくて、結局、制作会社にクレームの嵐だったとか…)


 幸いなことは、どこにいるのかに関しては検討がつくので、少なくとも会えないなんてことはない。

実際、そんなことを考えながら辿り着いたのは彼の1番のお気に入りの場所…

学園内にいくつかある庭のひとつで、中央に大きな木がある。

授業中であるこの時間は誰も来ない。


(やはり…ここでしたか…)


 まぁ、ここにいる可能性が1番高いから来ただけの話なのだが…

とりあえず…どうするかは別として話をしに行こうと思い近づいた。

サフィーロは横になっていたが、足音で気づき、体を起こしてこちらを見た。


「あ!さっきの!

ごめんね、いきなり話しかけた上に、逃げちゃったりして」


「いえ、大丈夫ですわ」


「でも君、こんな時間にこんなところにいていいの?

授業中じゃなかったっけ?今」


「それは貴方も同じでしょう?」


「僕はいいの、サボってるから」


 サフィーロは堂々とした態度で再び横になった。


「あの…貴方は…」


「ああ、僕はサフィーロ」


「…サフィーロ様、なぜ真面目に授業をお受けにならないのですか?

従者の方も探していらしましたよ?」


サフィーロは空を指差した。


「僕はね、あの鳥になりたいんだよ。

自由に自分の翼でどこまでも遠くにこの空を飛んでいく、あの鳥にね

僕はいわゆる、鳥籠の中の鳥…

あんなふうに自由に飛ぶことなんて出来ない…

誰にも縛られたくない

自由に空を飛び回る幸せを味わいたいのさ」


(なんともまぁ、あいかわらずベタなセリフを…)


 彼を味方にする場合は、同調するのがセオリーだった。

主人公…というか、アイリスが全面的に彼の発言を肯定し、味方をするのである。

そう、それが正しい選択だ…

頭の中では当然理解している。

だが今、頭で理解したこととは全く違うことをゼクシアは発言することとなった。


「…自由は幸せとは限りませんわ」

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