第16話 炎の聖剣神、爆進ですわ
「…あれが…ローランド様の聖剣神?」
真紅の騎士の登場と共に、ゼクスカイザーを取り巻いていたツタは炎に包まれ消え去った。
魔獣は口から種子を打ち出した。
しかしローランドの盾がそれを阻む。
盾に当たった種子は、炎に包まれ消滅した。
ローランドはゆっくりと、魔獣の方へと歩み寄っていく。
その威圧に怯えたのか、魔獣はツタを伸ばし攻撃を仕掛ける…
…が、全て剣で切り裂かれ炎と共に消えていく。
ローランドは魔獣の目の前に立った。
「…これで、終わりだ」
ローランドは両手で剣を持つ。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!」
魔力を込めると、剣が炎に包まれる。
「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
炎を纏った剣が、魔獣を一刀両断した。
魔獣は周りにあった壁と共に燃え尽きてしまった。
…………………………
「すごかったですわ!ローランド様!」
ゼクシアが歩み寄る。
「ああ、ありがとう。ゼク…」
ローランドが言い終わる前にはゼクシアの瞳はすでに炎の聖剣神に魅了されていた。
(はぁぁぁぁ!カッコいいですわぁぁ!
元はシンプルデザインの重騎士型ロボットみたいなものだったのに…
細いシルエット!炎のような鎧に剣と盾!
そして何よりこの色!
濃いめの赤だけど、偏光性塗料でしょうか…
見る角度でガラリと色が変わって最高ですわぁぁぁぁ!)
完全にロボットオタクが爆発してしまっていた。
目をキラキラさせているゼクシアを見て、…嬉しそうにしてるからいいか…と、ローランドは頭をかいた。
「ゼクシア、こいつに名前をつけてくれないかな」
ゼクシアは少し戸惑った。
そんなこと言われるとは思っていなかったからである。
確かにゲーム内のローランドが使っていた機体とは完全に別物なので、新たな名前は必要なのだが…
君に決めてほしいんだ、と告げられ少し悩んだ…
「そうですわね…
では、フレイムセイヴァーというのはいかがでしょうか?」
安直に「炎の騎士」という意味で名付けてみた。
それくらいしか思いつかない自分が少し恥ずかしかった。
「フレイムセイヴァー…」
ローランドは改めて、自信の相棒となる聖剣神に目を向けた。
気に入ってもらえただろうか…と、様子を伺っていたが、ローランドはすぐにゼクシアの方へ顔を向けた。
そして跪き、左手を取った。
「ありがとう、ゼクシア。
僕と、フレイムセイヴァーは
永遠に君の剣となり、盾となることをここに誓うよ」
と言うと、ローランドはゼクシアの左手の甲に口付けをした。
前世が男だったとはいえ、さすがの事態に、ゼクシアの顔は夕日のように真っ赤になった。
…………………………
後日、魔獣が出現した森を改めて調査することになった。
しかし、焼け野原と化してしまっていて、当然ながら何一つ成果は得られなかった。
ゼクシアは考えを巡らせた。
(あの魔獣、こちらが森を調べるとなった日に現れた。
タイミングが良すぎますわね。
もし魔獣が人為的に作られたものだとして、あそこに作った者の拠点があったとしたら…
あの魔獣は守護する目的で現れた…?
でも、燃やされる可能性は考えたはず…
…では、あの魔獣はなんのために…)
「…証拠…隠滅?」
あの周辺に拠点があり、それがバレないよう破棄するために…
木の魔獣ならば、燃やせば自然に消滅させられる…
ということは、あの魔獣は単なる囮だった…?
「…いくらなんでも飛躍しすぎですわね…」
ため息をつきながら校舎前の道を歩いていると、
「にゃあ」
と、鳴き声が聞こえる。
声のする方を見ると、猫が枝の上にいた。
「あら、降りられなくなったのかしら」
助けようと、木の下に向かうと、風と共に目の前に誰かが飛び上がり、猫を木の上から抱き上げた。
そして地上に降り、解放する。
翠色の髪と瞳…間違いない…
自身の記憶の中にいた最後の聖剣所有者だと、ゼクシアは理解した。