第15話 炎の聖剣神、爆誕ですわ
ゼクシアとローランドは森の探索に来ていた。
魔獣の出現地帯がこの森を中心になっていること、
魔獣の死骸が見つからないこと、それを調べるため、騎士団や魔導士団から精鋭が集められ、調査団が結成され、そこに参加することとなったのである。
ちなみに、セリオンは聖剣の研究のために自室へ。
ライオニールは学園内で剣術の修行している。
…というより、ゼクシアが調査に出ている間に留守を任されている。
「こうして一緒に森に入ったりするのは久しいね」
ローランドはゼクシアの活発な幼少期を思い出していた。
3人でよく近くの森へ遊びに行ったものだ。
「こうやって歩いていると、あの日から変わっていないところもあって嬉しいよ」
「あら、私だってあれから成長したのですのよ」
胸を張ってローランドの前に立つゼクシアを前に、ローランドは一瞬、目のやり場に困った。
「はは、そうだね」
「さぁ!張り切って調査いたしますわよ!ローランド様」
やってやる!というゼクシアの気合いと共に2人は森の奥へと進んで行った。
とは言ったものの、魔獣の足跡はあれど、死骸はおろか、身体から離れた部位すらも見つからない。
調査はかなり難航していた。
ローランドが少し休憩しようと提案した時、近くで悲鳴が聞こえる。
「ギャアァァァァァ!!!」
悲鳴のした方を見に行くと、巨大なツタが屈強な騎士たちを絡め取っていた。
ローランドは剣で、ゼクシアは魔法でツタを刈った。
「早く逃げてください!」
ゼクシアに促され、騎士たちは森の外へと逃げていった。
「ローランド様、何かおかしいですわ」
「ああ、あのツタ、普通じゃない。」
2人は背中合わせに立ち、周囲の警戒をする。
すると、再び巨大なツタが現れ、2人を分断した。
その隙をつかれ、ローランドが捕まる。
「ぐっ!しまった!」
「ローランド様!」
ゼクシアはすぐさま、魔力を込め詠唱を始める。
「ウィンドスラッシュ!」
ゼクシアの手から風の刃が飛び出し、ツタを切り裂く。
「助かったよ、ゼクシア!
こういう時、君がいてくれると心強い」
「それはこちらもですわ。
ローランド様なら安心して背中を預けられますもの」
ゼクシアの背中の方に伸びたツタを、今度はローランドの剣が切り裂く。
「どこかに発生源があるはずだ…それを見つけないと…」
周囲を警戒し、発生源がどこか考えていたところに地面が揺れるのを感じる。
「!?森の奥に何かいますわ!?」
ゼクシアに言われた方を見ると、森の奥から巨大な木のようなものが現れた。
ツタが絡み合って腕のような形に形成されており、木目がまるで口や目に見えるようだった。
「…!まさか!木の姿をした魔獣なのか!?」
たしかに、木の魔獣については文献にもあったし、ゲーム内にも描写はあった。
(本当に出てくるものなのですね…
と、感心してる場合じゃないですわ!)
「ローランド様、あなたも森の外へ!
ここは私がなんとかしますわ!」
ゼクシアはゼクスカイザーを召喚した。
すると魔獣はツタを操り、四方に壁を生成し出した。
「…なっ!?これは!?
僕たちを逃がさないつもりか!?」
「ローランド様、ひとまずこちらへ!」
ゼクシアはローランドをゼクスカイザーの中に招き入れた。
壁はゼクスカイザーよりも高く立っているが、天井はなく、空が見える。
「すっかり囲まれてしまいましたわね…」
「今、通信が入ったよ。
幸いにも調査隊は森の外に脱出したらしい」
「ということは、この中は私たちだけというわけですわね。
では、思いっきりいきますわよ!
ヴァリアブルランサー!!」
ゼクスカイザーは両刃剣を出した。
魔獣はツタを操ってゼクスカイザーに襲いかかってくる。
ヴァリアブルランサーでツタを切りさいていくのだが、無限に発生するツタを切るのに苦戦していた。
「くっ!本体まで届かない…!
切っても切ってもキリがありませんわ!」
苦戦しているうちに、ツタが足に、さらに、背後から両腕にと絡んできた。
絡まれた時の衝撃でランサーを落としてしまう。
「くっ…!ならば…!ゼクスブラス…」
叫びきる前に胸部をツタが巻き付いた。
全身が巻き付かれてしまい、あらゆる武器が封殺されてしまったのである。
(的確にこちらの武装を封じてきてますわ…
まさか、こちらの動きを読んでる…?)
ツタの締め付ける力がどんどん強くなっていく。
ミシミシと音がする。ゼクスカイザーを押しつぶすだけの力があるようだった。
(…ここまでは押しつぶされるのを待つだけですわ…
ならば…)
ゼクシアはコクピットを解放した。
「…ローランド様…どうかお逃げください…
ここは私が…」
最後まで言い切る前にローランドが外に飛び出し、
剣をツタに突き立てた。
「ローランド様!?何を!?」
「僕はもう逃げない!大切な人を守りたいと、
そのために騎士になりたいと願った!
今ここで逃げるわけにはいかないんだ!!」
木の魔獣から花が咲き、口のように開いた。
そこから弾丸のように種子を飛ばしてくる。
「ローランド様!!!」
ゼクシアは叫ぶが、ローランドは逃げることなく立ち向かおうとする。
すると、腰に据えられた聖剣が輝き出し、炎の壁が目の前に現れた。
「…力を貸してくれるのか…」
ローランドは聖剣を抜き、強く願った。
大切な人を守れる力…
その願いに応え、巨人が現れた。
ローランドが願った力…
悪しきを切り裂く刃、愛するものを守る盾、
炎の中から現れたのは、真紅の鎧を纏った騎士の姿だった。