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第2話 スーパーロボットで戦いますわ

 スペリオール・ファンタジア

この世界を形成するゲームの名前である。

この作品は、邪神によって生み出された魔獣と聖剣に選ばれた戦士たち、

彼らがロボットを召喚して戦う…

…のではなく、主人公である聖女が戦士達と恋愛をするという

いわゆる乙女ゲームと呼ばれるものである。


 残念ながら、ロボットの戦闘シーンはなく、

ひたすらに主人公と男性キャラとの会話シーンがあるだけのアドベンチャーゲームで、なんなら、メカデザインすらゲーム本編には出てこないのである。


 世界観はかなり作り込まれていたのだが、中身が伴っておらず、当時、クソゲー扱いをされていたと記憶している。

 一応、特典の設定資料集には、キャラ設定だけでなく、世界観の設定、メカデザインなど事細かく載っていて、一部マニアにはウケて、特典付きのみプレミア価格になっている。


 創真がプレイした理由としては、

隠しエンディングにいわゆるハーレムエンドなるものがあり、光里がどうしてもそれが出せないが故に、やらされたのである。

とはいえ、メカデザインは有名な方が担当していたので、設定資料集はニタニタしながら読んでいた。


 隠しエンディングを出すために、何度もやらされたおかげで、さすがにストーリーは記憶していた。

おかげでゼクシア・クロムウェルとして転生した現在、そのストーリーの上に立たされても、避けるべき行動を察することはできる。


 まぁ、ゼクシアの立場と言えば、

主人公を虐める悪役令嬢という立場なもんで、

そもそも主人公を虐めなければどうということはない。他の攻略キャラや主人公に転生するよりは考えることは少ないと思う。


 最終的な自身の末路に関しても、皇子からの婚約を破棄され、よければお家追放、悪ければお家共々滅亡

となるだけなのだ。


 一応、父親には婚約を破棄したい…と毎日のように伝えているのだが、馬に念仏とはまさにこのこと、聞き入れてもらえず終いで学園への入学…

つまり、本編スタートの日を迎えることとなる。


…………………………


 グランシュタイン王国国立学院


グランシュタイン王国の直下にあり、騎士学科、魔法学科、魔道具学科など、様々な学科に分かれて、学問を享受し、将来、王国の騎士や王国専属魔導士、魔道具開発機構などに所属するためのエリートを育てる学校である。


 黄色い歓声の中、2人の青年が歩いている。

赤い髪の男はローランド・フォイエン。

先祖代々、王国騎士団長を務める由緒正しい家庭で育ち、自身も騎士学科への入学している。

声をかけられると爽やかな笑顔で返している。


 もう1人の青い髪の男はセリオン・スティーリア。

王国専属魔導師団長を務める父と、魔道具研究機構に所属する母を持つ、エリート中のエリート。

自身も魔法や魔道具の研究開発を行っている。

2人とも、このゲームのメインキャラで、それぞれが聖剣を手にすることになるのだが、それはまた別の話である。


「セリオン、少しは手を振ってあげたら?」


と、ローランドが話しかける。

「君だって嫌そうじゃないか、ローランド」

と眼鏡をキリッとあげて答える。

この状況があまり好ましくないのだろう、少し苛立っていた。


容姿端麗、成績優秀、お家柄もいい…

ともなれば、世の女性たちは放っては置かないのだろうが…

ローランドはあまりにも素っ気ない態度をする親友に、苦笑いを返すしかなかった。


そんな中…


ドゴォォン!


大きな音が響き渡る。

街の外からのようだ。

ふと、その場にいた人間の視線が音のあった方に向く

そこには城と同じような大きさの巨大な生物の姿があった。


「馬鹿な!魔獣だと!?」

「何千年も前に滅んだんじゃなかったのか!?」


悲鳴と共に人々が逃げ出す。


魔獣とは数千年前、邪神によって生み出された生物である。

姿は多種多様で、

動物や植物、昆虫などの姿を模している。

共通しているのは、城にも匹敵するほどの巨大な生物であることだ。

邪神の消滅以降、その存在は確認されていない。


「みんな、早く逃げるんだ!」

「早く学校の中へ!」


率先して生徒を学校の中へ誘導するローランドとセリオン。

とはいえ、2人には、

いや、ここにいる誰にも、あんなにも巨大な化け物と戦う術はない。

街の方では魔道士隊が魔法で防御壁を作っているが、

それもいつまで持つものか…


「このままじゃ、街にあの怪物が…」

ローランドは意を決して、街の外の方へ走り出した。

「ローランド!?どこへ!?」

「何か出来るわけじゃない、でも黙って見ていられない!」

街の方へ駆けていく親友を見て、

「全く…お人好しだな、君は!」

呆れながらもセリオンはローランドと共に走り出していた。


…………………………


時を同じくして、

紫の髪の少女は学園の外れで

優雅にティータイムを楽しんでいた。

街の外で地響きがなり、魔獣の雄叫びと人々の悲鳴が聞こえる。

「…待ち侘びましたわ、この時を…」


そういうと、少女は立ち上がり、

腰にある短剣を抜いた。

それを天に掲げ、叫んだ。

「GO!!ゼクスカイザー!!」


すると、空に魔法陣のようなものが出現し、

そこから巨人が現れた。

巨人から光が発せられ、叫んだ少女は取り込まれた。

少女、ゼクシア・クロムウェルはコクピットに座り、

目の前の台座に短剣を突き刺す。

巨人の目が、まるで命が宿ったように光り、

ゼクシアは操縦桿を握って叫んだ。

「ゼクス!カイ!ザーー!」

ゼクスカイザーと呼ばれた巨人は、街の外へ向かって行った。


…………………………


ローランドとセリオンが街の境界、

門の前に近づいていくと、

魔獣が防御壁へ突進してくるのが見えた。


「このままじゃ、あの魔獣が街の中に…!」


誰もが諦めていたその時、

黒い物体が魔獣を吹き飛ばした…ように見えた。

その時、目の前に現れたのは、

黒く雄々しく、城が如くそびえ立つ黒鉄の巨人

だった。


起き上がった魔獣は咆哮と共に巨人に突っ込んでいった。

すると巨人は魔獣を両腕で止めて、

「ソニックブースト!ナッコォ!」

の声と共に両腕を飛ばし、

魔獣を捕え、街の外れの森まで弾き出した。

巨人も魔獣を追って森の方へ飛び出して行った。

勇敢に魔獣に立ち向かった黒い巨人の登場に、

その場で見たものは皆、ただただ立ち尽くしていた。


…………………………


「ここなら誰にも迷惑が掛かりませんわね」


街から離れた森に魔獣を押しやり、

ゼクシアは手をポキポキと鳴らす。

おおよそお嬢様の動きではないが…

この胸の高鳴りは止まらない。


「しかし、これが魔獣ですか…

ゲーム内だと見た目の描写が大してなかったとはいえ…

なかなか歪というか…」


1番近いのは…猪…なのか…?

いくつもの生物を掛け合わせたかのように見えるので、なんとも形容し難いが…


なんて考えていると、魔獣が雄叫びを上げる。

考え事をしてる場合じゃない。

街から離したとはいえ、どんなことをしでかすかわかったもんじゃない。


「さぁ、お片付けといきますわよ」


大きな足音を立てて魔獣が近づいてくる。


「まずは、どのくらい武器が使えるか…ですわね…」

というと

「クロムレーザー!!」

と叫び声を上げ、操縦桿のトリガーを引いた。

ゼクスカイザーの額から細いビームが発せられ、魔獣に当たる。


痛いのか熱いのか、魔獣は少したじろいだ。


「よし、お次は…」


すると魔獣は背中から、無数のトゲを撃ち放った。

まるでミサイルのように放たれるそれに、

少しは驚きたじろぐのだろう…が…


「おっと、甘いですわよ!

スプリット!ビーム!!」


両手から細長い光線が無数に放たれ、拡散する。

ゼクスカイザーに向けて放たれたトゲは一気に撃ち落とされた。


トゲの排出には相当なエネルギーを使うのだろう。

魔獣が疲れているように見える。

そのスキを、ゼクシアは見逃さなかった。

「今ですわ!断・罪・剣!」

その叫びと共に、

魔法陣から巨大な剣が現れる。

ゼクスカイザーが剣を取ると、高く飛び上がり、両断せんと構えをとる。


「烈風!!一文字斬りぃ!!」


落下速度を加え、魔獣を一刀両断する。

消えゆく鳴き声と共に、両断された身体がバラバラの方向に倒れる。


コクピットのゼクシアは息を荒げていた。

初めての戦闘での緊張が解けたから…

思ったよりも体力を消耗したから…

魔獣とはいえ、命を奪ったから…

理由はそのどれでもない。

「ふふ…うふふふふ……」

少し落ち着くと、急に笑い出した。


「オーッホッホッホッホッホ!!」


思わず頬に手を当て、大きな声で笑い出した。


心臓がバクバクしている。

高鳴りが抑えられない。

「最っっっ高ですわ!!これが私の!

私だけのスーパーロボット!

ゼクスカイザー!


さぁ、魔獣たち!いくらでもきなさい!

私が全滅させて差し上げますわよ!


オーッホッホッホッホッホ!!」


巨大で、黒くそびえ立つその機体の中で、

ゼクシアはさらに高らかに笑う。

世界中に響き渡るかの如く…

今回も読んでいただき、ありがとうございます。

この作品のコンセプトとしては

「悪役令嬢がスーパーロボットの技名を叫ぶ」

「コクピットの中でオーッホッホッホッホッホと笑う」

をやりたいがために書いていました。


結構、パロディというか、オマージュ多めなのですが

主人公がロボットオタクなら出来るかな…?とか思ったりしています。

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