第14話 ライオニール様が仲間になりましたわ
牛の魔獣との戦闘後、学園長室にて。
ローランドとセリオンに聖剣の所有権が正式に渡ったことが伝えられた。
それに伴い、聖剣の所有者となるべく、契約を行うこととなった。
といっても、大それた魔術的なことではなく、聖剣についてる宝玉に所有者となる人間の血を1滴垂らすだけである。
2人は聖剣に自身の血を捧げた。
「これで我々も、聖剣神を扱うことができるのですね」
ローランドはマーレインに尋ねる。
「たしかに、所有者とはなったけど、すぐ扱えるかどうか…
その辺はどうなのですか?ゼクシアさん」
「そうですわね、何かしらの条件があるかと思うのですが、そこまでは…」
召喚に関しては、当人の強い意志が引き金となる。
だが、そのことに関しては文献に記載はない。
ゼクシアも自然にできてしまっていたため、よくわかっていないのである。
「では、ゼクシアさんとライオニールさんは
初めて聖剣神を召喚出来た時の前後に何か思い当たることはあるか思い出せますか?」
ゼクシアとライオニールは記憶を遡る。
「そうですわね…強い力が欲しいとか、
頑丈な肉体が欲しいとか願った…かもしれません」
これに関しては、もちろん嘘である。
聖剣神は自身の創造した姿となるため、ある程度のイメージをすれば、その通りの姿となるのだ。
(理想のスーパーロボットを創造しました、
なんて言ってもポカンとされるだけですしね)
「俺様は獅子のように強くなりてぇ!って願ったぜ」
「なるほど…聖剣神が創造した姿になるというのも、あながち間違いではなさそうですね。
その辺は当人次第…ということになりそうですね。
おふたりの方から気になったことはありますか?」
ローランドとセリオンは少し考えた。
「それでいうとゼクシア、ひとつ聞いてもいいかな」
「なんでしょう?セリオン様」
「その…攻撃する時は君のように叫ばなければならないのだろうか…」
セリオンは恥ずかしそうに質問をした。
(叫ぶのはスーパーロボットのロマンだから…とか言っても伝わらないですものね…ここは…)
「いえ、私の場合、その方がイメージがしやすいというだけですわ。
聖剣神は創造した姿になり、魔力で動くものです。
だから、魔力を込めればいいだけですわ」
「魔力ってことは、魔法が使えるのか?
俺様のライオサンダーも火を吹いたり出来るってことか?」
ライオニールが嬉しそうに尋ねる。
「なんでも出来るわけではございません。
聖剣には属性がありますの。
ローランド様のは炎、セリオン様のは氷、ライオニール様のは雷ですわ。
その属性に対応した攻撃は可能となります」
「ならばゼクシア、君のゼクスカイザーはなんの属性なんだ?」
ローランドが質問をする。
「私のは皆様の持つ聖剣の試作品のようなものらしいのです。
邪神に対抗するために、聖剣神は作られた…と文献にはありました。
最終的に作られる白の聖剣とそれに連なる4本の聖剣…
それを作る前に生み出されたのがこの聖剣で、
属性の付与はされていないようなのです」
「だが、腕を飛ばしたり武器を出したりは出来ていたじゃねぇか」
ライオニールが口をはさむ。
「逆に言えば、それが出来る行動の限界だったのです。
私も魔法が使えるかは試しましたが、何ひとつとして発動しませんでしたの。
私自身は使えますのに、ほら」
ゼクシアの指先から小さな竜巻が発生する。
ゼクシアは王妃教育の一環として魔法を勉強していたが、その前からかなりの魔法を使えるとのことで、グレイスも驚き、教育にかなり熱を入れていた。
そのためか、令嬢とは思えないほど多彩な魔法が使えるようになっていた。
魔法の技術なら、セリオンと並ぶほどの実力者である。
(魔法が使えるって思ったら嬉しくて、授業外で色々試してたら沢山できるようになったんですのよね)
だが、ゼクスカイザーで試しても先ほどのような風すら出せず、ほとほと困り果てていたのは事実である。
(一応、「他の聖剣神と合体ができる」と、作る時に考えてはいましたが、なんとかなってよかったですわ)
「いずれにしても、次に魔獣が出た時にも
今はゼクシアさんとライオニールさんに頼るしかありませんわね」
と、マーレインがお願いをした。
「言っておくが、ゼクシアのことが気に入ったから力を貸すだけで、こいつらと仲間になったわけじゃあねぇからな」
ライオニールがローランドとセリオンを指差し言った。
ローランドが少し笑って返す。
「それでもいいさ、僕たちもゼクシアの力になりたいからここにいる…
戦う理由は同じだ」
ちっ…とライオニールは舌打ちしそっぽを向いた。
とりあえず、今日のところは解散ということになった。